あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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急に離されて尻もちをついたままクレメントは激しく咳き込んだ。その様子を尻目に見ながら、アリアナは戯けた調子でケイビスに尋ねた。

「変わった方がよろしいでしょうか」

流石に冷静になったケイビスが苦笑しながら答える。

「大丈夫です。それよりもあなたがこいつに触れる方が嫌です」
「ふふふ、そんなケイビス様」
「それよりもこいつが何をしでかすか分からないからと言って、侍女達を全て下がらせたのは流石に…私の身にもなってください。部屋に入るまで生きた心地がしませんでした」
「あら、ベスにはすぐにケイビス様をお呼びするように伝えましたもの。それに私の大切な侍女達を傷つけられてはたまりません」
「それはそうですが…」

困ったように眉尻を下げたケイビスにアリアナは苦笑しながら答えた。

「招き入れてしまったのは私の落ち度です。私も結婚式に浮かれてしまっていたみたいですわ。いくら声音が似ているとはいえ、クレメント様のお声をケイビス様のお声と聞き違えてしまうなんて」
「そういうことでしたか。」

同じように苦笑するケイビスに、アリアナは一度美しく微笑むと表情を改めた。

「それで、クレメント様はいかがいたしましょう?」

自分の処遇が話し合われることにクレメントが怯えの表情を見せる。

「私が決めてよろしいのですか?」

問われたケイビスが驚いたように答える。

「もちろんですわ。ケイビス様の他にどなたにその権限がおありでしょうか」
「アリアナ様がお決めになりたいかと…」
「まあ。そうですわね。それなら私のお願いを一つお聞き頂けますか」
「ええ」
「二度と私と顔を合わさずに済むようにして頂けるのでしたら、その他の処遇については口出し致しません」
「ケイビス、アリアナ様、申し訳なかった。これからはケイビスに提示されていたように辺境の子爵として暮らしていく。ケイビスが私のために爵位を買い取ってくれたのを無駄にするわけには行かないだろう?すまない。ほんの冗談のつもりだったんだ。こんな大事になるなんて思わなくて…」
「黙れ」

一喝したケイビスにクレメントは慌てて口を閉じる。
それを気にした様子もなくアリアナはのんびりした口調でケイビスに尋ねた。

「あら、子爵位を買われましたの?」
「ええ。アリアナ様が公爵家で暮らしてくださるのに、こいつが屋敷内をうろついていてはご不快かと思い…適当な地位で納得させようと思っていましたが、兄は想像以上に愚かだったようです」
「まあ、お気遣いありがとうございます。私はそれで構いませんが」
「ああ、私もそれで構わない!」

助け船とばかりにアリアナの言葉に便乗したクレメントをケイビスは冷たく一瞥して告げた。

「いや、子爵位の譲渡はなしだ。お前はユーズル侯爵家に養子に入ってもらう」





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