97 / 102
96
しおりを挟む
突然の言葉にアリアナもクレメントもきょとんとした表情のまま、ケイビスを見つめた。
「ユーズル侯爵って、ジッド殿の…」
「そうです。あちらに先日打診を受けまして…一度はお断りしたのですが」
アリアナが不思議に思い質問を重ねようとした瞬間、クレメントが叫んだ。
「なんだ、辺境の子爵より好待遇じゃないか!もちろん行くぞ!ユーズル侯爵の身内となれば再び賭場にも出入り可能になる!ジッドとも遊び回れるしな。こんなところ二度と戻ってなど来るものか!」
クレメントのその様子をみてケイビスは溜め息を一つ吐いた。
「その言葉忘れるなよ。今日、ユーズル侯爵もいらっしゃっている。養子の件について話し合いできる場所は用意しておく。あとは自分で話をつけてこい」
呆れた様子で告げるケイビスを気にする素振りも見せず、クレメントは意気揚々と部屋から出ていった。
「あの、ケイビス様?」
アリアナが不思議そうに尋ねる。
「なんでしょう?」
「公爵家からの放逐のように子爵位を与えられることに代わって侯爵家の養子入とは大分好待遇ですわよね?もちろん私はクレメント様と顔を合わせることがないのであれば何でも構いませんが…高位貴族同士で顔を合わせることもありますよね?」
毎日顔を合わせることに比べたら問題ではないと思いつつも、ケイビスが敢えて子爵位ではなく養子入を選んだことに疑問を感じずにはいられず、アリアナは尋ねた。
「はは。普通はそこを一番に聞くはずなんですが…兄はあの通りですからね」
「では、養子入りには何か裏がおありなのでしょうか」
「その前に、ユーズル侯爵についてどの程度ご存知ですか?」
「詳しいことはあまり…ジッド様と数回言葉を交わしたことがある程度です。」
「ああ、ジッドですか。兄と仲が良いですからね」
「みたいですわね。クレメント様のご本心を知るきっかけになったのもお二人の会話でしたし。」
「ご不快なことを…申し訳ありません」
「ケイビス様のせいではありませんわ。ですが、家業でもあまりユーズル侯爵様とは関係がございませんでしたので、それ以外のことは…」
「あそこの領地は少々特殊なのです」
「と仰いますと?」
「農業によって成り立っている領地なのですが、実質的に力を持っているのは3つの豪農だと言われています。」
「まあ…」
「彼らの協力なしでは、ユーズル侯爵家はすぐに没落してもおかしくありません」
「それはまた…ですが、それとクレメント様の養子入とどのような関係が?」
「そんな土地柄ですから、侯爵家と豪農達との間には代々続く取り決めがあるそうです」
「もしかして、子ども同士の婚姻ですか?」
恐る恐る尋ねたアリアナにケイビスは頷いた。
「ええ。仰るとおりです」
「ユーズル侯爵って、ジッド殿の…」
「そうです。あちらに先日打診を受けまして…一度はお断りしたのですが」
アリアナが不思議に思い質問を重ねようとした瞬間、クレメントが叫んだ。
「なんだ、辺境の子爵より好待遇じゃないか!もちろん行くぞ!ユーズル侯爵の身内となれば再び賭場にも出入り可能になる!ジッドとも遊び回れるしな。こんなところ二度と戻ってなど来るものか!」
クレメントのその様子をみてケイビスは溜め息を一つ吐いた。
「その言葉忘れるなよ。今日、ユーズル侯爵もいらっしゃっている。養子の件について話し合いできる場所は用意しておく。あとは自分で話をつけてこい」
呆れた様子で告げるケイビスを気にする素振りも見せず、クレメントは意気揚々と部屋から出ていった。
「あの、ケイビス様?」
アリアナが不思議そうに尋ねる。
「なんでしょう?」
「公爵家からの放逐のように子爵位を与えられることに代わって侯爵家の養子入とは大分好待遇ですわよね?もちろん私はクレメント様と顔を合わせることがないのであれば何でも構いませんが…高位貴族同士で顔を合わせることもありますよね?」
毎日顔を合わせることに比べたら問題ではないと思いつつも、ケイビスが敢えて子爵位ではなく養子入を選んだことに疑問を感じずにはいられず、アリアナは尋ねた。
「はは。普通はそこを一番に聞くはずなんですが…兄はあの通りですからね」
「では、養子入りには何か裏がおありなのでしょうか」
「その前に、ユーズル侯爵についてどの程度ご存知ですか?」
「詳しいことはあまり…ジッド様と数回言葉を交わしたことがある程度です。」
「ああ、ジッドですか。兄と仲が良いですからね」
「みたいですわね。クレメント様のご本心を知るきっかけになったのもお二人の会話でしたし。」
「ご不快なことを…申し訳ありません」
「ケイビス様のせいではありませんわ。ですが、家業でもあまりユーズル侯爵様とは関係がございませんでしたので、それ以外のことは…」
「あそこの領地は少々特殊なのです」
「と仰いますと?」
「農業によって成り立っている領地なのですが、実質的に力を持っているのは3つの豪農だと言われています。」
「まあ…」
「彼らの協力なしでは、ユーズル侯爵家はすぐに没落してもおかしくありません」
「それはまた…ですが、それとクレメント様の養子入とどのような関係が?」
「そんな土地柄ですから、侯爵家と豪農達との間には代々続く取り決めがあるそうです」
「もしかして、子ども同士の婚姻ですか?」
恐る恐る尋ねたアリアナにケイビスは頷いた。
「ええ。仰るとおりです」
6
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました
ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、
ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。
理由はただ一つ――
「平民出身の聖女と婚約するため」。
だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。
シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。
ただ静かに席を立っただけ。
それだけで――
王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、
王国最大の商会は資金提供を打ち切り、
王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。
一方シャウラは、何もしていない。
復讐もしない。断罪もしない。
平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。
そして王国は、
“王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、
聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。
誰かを裁くことなく、
誰かを蹴落とすことなく、
ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。
これは、
婚約破棄から始まる――
静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。
「私は何もしていませんわ」
それが、最強の勝利だった。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
私の婚約者と駆け落ちした妹の代わりに死神卿へ嫁ぎます
あねもね
恋愛
本日、パストゥール辺境伯に嫁ぐはずの双子の妹が、結婚式を放り出して私の婚約者と駆け落ちした。だから私が代わりに冷酷無慈悲な死神卿と噂されるアレクシス・パストゥール様に嫁ぎましょう。――妹が連れ戻されるその時まで!
※一日複数話、投稿することがあります。
※2022年2月13日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?
satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。
結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
姉のものを欲しがる性悪な妹に、墓穴を掘らせてみることにした
柚木ゆず
恋愛
僕の婚約者であるロゼの家族は、困った人ばかりだった。
異母妹のアメリはロゼの物を欲しがって平然と奪い取り、継母ベルは実子だけを甘やかす。父親であるトムはベルに夢中で、そのためアメリの味方ばかりする。
――そんな人達でも、家族ですので――。
それでもロゼは我慢していたのだけれど、その日、アメリ達は一線を越えてしまった。
「マエル様を欲しくなったの。お姉様の婚約者を頂戴」
「邪魔をすれば、ここにあるユリのアクセサリーを壊すわよ?」
アメリとベルは自分達の都合でこの婚約を解消させようとして、ロゼが拒否をしたら亡き母の形見を使って脅迫を始めたらしいのだ。
僕に迷惑をかけようとしたことと、形見を取り上げられたこと。それによってロゼはついに怒り、僕が我慢している理由もなくなった。
だからこれから、君達にこれまでのお礼をすることにしたんだ。アメリ、ベル、そしてトム。どうぞお楽しみに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる