あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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突然の言葉にアリアナもクレメントもきょとんとした表情のまま、ケイビスを見つめた。

「ユーズル侯爵って、ジッド殿の…」
「そうです。あちらに先日打診を受けまして…一度はお断りしたのですが」

アリアナが不思議に思い質問を重ねようとした瞬間、クレメントが叫んだ。

「なんだ、辺境の子爵より好待遇じゃないか!もちろん行くぞ!ユーズル侯爵の身内となれば再び賭場にも出入り可能になる!ジッドとも遊び回れるしな。こんなところ二度と戻ってなど来るものか!」

クレメントのその様子をみてケイビスは溜め息を一つ吐いた。

「その言葉忘れるなよ。今日、ユーズル侯爵もいらっしゃっている。養子の件について話し合いできる場所は用意しておく。あとは自分で話をつけてこい」

呆れた様子で告げるケイビスを気にする素振りも見せず、クレメントは意気揚々と部屋から出ていった。

「あの、ケイビス様?」

アリアナが不思議そうに尋ねる。

「なんでしょう?」
「公爵家からの放逐のように子爵位を与えられることに代わって侯爵家の養子入とは大分好待遇ですわよね?もちろん私はクレメント様と顔を合わせることがないのであれば何でも構いませんが…高位貴族同士で顔を合わせることもありますよね?」

毎日顔を合わせることに比べたら問題ではないと思いつつも、ケイビスが敢えて子爵位ではなく養子入を選んだことに疑問を感じずにはいられず、アリアナは尋ねた。

「はは。普通はそこを一番に聞くはずなんですが…兄はあの通りですからね」
「では、養子入りには何か裏がおありなのでしょうか」
「その前に、ユーズル侯爵についてどの程度ご存知ですか?」
「詳しいことはあまり…ジッド様と数回言葉を交わしたことがある程度です。」
「ああ、ジッドですか。兄と仲が良いですからね」
「みたいですわね。クレメント様のご本心を知るきっかけになったのもお二人の会話でしたし。」
「ご不快なことを…申し訳ありません」
「ケイビス様のせいではありませんわ。ですが、家業でもあまりユーズル侯爵様とは関係がございませんでしたので、それ以外のことは…」
「あそこの領地は少々特殊なのです」
「と仰いますと?」
「農業によって成り立っている領地なのですが、実質的に力を持っているのは3つの豪農だと言われています。」
「まあ…」
「彼らの協力なしでは、ユーズル侯爵家はすぐに没落してもおかしくありません」
「それはまた…ですが、それとクレメント様の養子入とどのような関係が?」
「そんな土地柄ですから、侯爵家と豪農達との間には代々続く取り決めがあるそうです」
「もしかして、子ども同士の婚姻ですか?」

恐る恐る尋ねたアリアナにケイビスは頷いた。

「ええ。仰るとおりです」
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