暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

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第1章 精霊と一人の少女

第5話 4本の剣と模擬戦

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「それじゃあ、着いてきなさい」

「うん」

 魔法習得から少しして、恐らくもういい頃だと言われ、モースに工房へと案内されていく。

「私の全身全霊をもって打った最高の4本だ。最高の性能を保証しよう」

「うん! すっごく期待してる!」

 そうして案内された先、そこは小さな小屋であった。

「準備はいいな」

 モースの呼び掛けに私は頷く。
 そして小屋の戸は開かれる。

「……!」

「どうだ、私の傑作は」

 そこにあったのは2本の刀と2本の短剣であった。
 桃色に淡く輝く1本の刀。
 純黒に光の1本筋が映える1本の刀。
 純黒とは対極の、純白に光る1本の短剣。
 血が混ざったような、紅黒い1本の短剣。

「……綺麗」

「そうだろう? 込めた魔術は同じだが、それぞれの人格……いや刀格とでも言うべきだろうか。ひとつひとつにそれが宿っているのがわかる」

「私には勿体ない美しさだよ……。この子たちに名前はあるの?」

「いや、名前はまだつけていない。というよりルミツに名前をつけてもらおうと思ってな。剣もその方が喜ぶ」

「そっか……!」

 どの剣も私には似合わないほどの輝きを持っている。色や濃淡は違えど、それぞれの美しさに私は打ちのめされていた。
 この子たちに似合う名前を私は付けられるのだろうか?

「……ちょっと、振ってみてもいい?」

「もちろんだ」

 私は桃色の刀を手に取り、軽く素振りをする。

「……うん、ちょうど手に馴染む」

 桃色の刀は不思議と私の手にピッタリと収まった。

 そして私は黒の刀も手に取る。

「すごい、ずっと昔からこれを使ってたみたいだ……!」

 私は武器にこだわるタイプじゃなかったけど、これは手放せそうにはないなぁ……!


 フィオッ、ヒュンヒュヒュヒュッ、ビュッ


「うん、いい感じ!」

「それは良かった。それにしてもその素振り、ひとつひとつに全くの無駄が見られないな」

「そう?」

 そして私は刀を置き、短剣2本を手に取る。純白の短剣と紅黒の短剣を。

「……あぁ、いい。良いなぁ、これ」

 手首の動きだけで短剣を細かく振る。私の思う短剣は見栄えの悪い、矮小で姑息な武器であった。
 でも今はそんな事無くて、私の扱う武器の中で1番輝いてる。そんな気がした。

「すごいよモース! 全部気に入ったよ!」

「そうか。そいつは良かった」

 どれも丁度私の手に合っていて、使い心地が抜群だった。

「名前ももう決まっちゃった!」

「そいつは早いな。どんな名前だ?」

 私はそれぞれの武器を手に取った瞬間、それぞれの名前が思い浮かんでいた。


「桃色の刀は『凛穏リオン』、漆黒の刀は『亜翠アズ』、純白の短剣は『白妙楔しろたえくさび』、そして紅黒の短剣は『虞美人ぐびじん』。どう? かっこいいでしょ!」


 手に取った時それぞれに感じた不思議な感覚。あれは刀が自分自身の名前を発していたとするなら、この名前が正しい。そんな気がした。

「ほう、なかなかいいセンスをしているじゃないか」

「へっへっへ。そうでしょー」

 私はグッとドヤ顔をする。

 そしてモースはそれぞれの刀剣を鞘に収め、私に渡してくれる。

「ほら、こいつを持ってけ」

「ありがと」

 私は懐に短剣をしまい、左右の腰に刀を差す。

「これで準備はバッチリだ」

「あぁ。それでいつ出発するのだ?」

「うーん、今日出発しようと思ってたけど、どうしようかなぁ」

 せっかくならもう少しこの森に居たいという気持ちもあるし……。

「明日の早朝出発にするかな」

「うむ、それで良いだろう」

 そして私は今夜まで、この森に滞在することを決めたのだった。




「わー! すごいかっこいいよルミツ!」

「主様とてもお似合いです!」

「えへへ、ありがと」

 私はシルフたちのもとに戻り、早速魔法の研究をしようと息巻いていた。色んな魔法が使えたら楽しそう、その想いだけで私は研究に励むつもりだった。

「それにしてもルミツちゃんの武器、いっぱいあって独特ねぇ~」

「確かに、その武器でどうやって戦うんですか?」

「どうって言われてもなぁ……。普通だよ? どっちかと言うとテクニシャン系だけど」

「へぇ、見てみたいなー!」

「主様の剣を1度喰らっただけでもわかりますよ……。僕はこの人に勝てないんだなって。まじで実力差感じるよ、あれ」

「へぇ? そんな風に思うなんて珍しーね、サラマンダー?」

「シルフもやってみたら分かるっての。あれは全部技術だ。血が滲むどころじゃない。血肉に覆われ、心臓をも捧げているかのような化け物が見えた。主様が化け物って訳じゃないけど」

「へーえ?」

 シルフはイタズラの笑みを浮かべ、こっちを見てくる。

「ねー! その武器試してみたいと思わない?」

「確かにちょっと試し斬りでもしてみたいなぁ」

「じゃあさ、私と模擬戦しよ!」

「えっ、シルフと?」

「……なんかちょっと舐めてない? 私のこと」

「まぁ、ねぇ?」

「その身長じゃ怖いもんも怖くなくなるわ」

「シルフちゃんちっちゃいからね~」

「うがーっ! うるさいうるさい! こう見えて私、四大精霊の中で1番強いんだから!」

「えっ、そうなの!?」

 私はサラマンダーとウンディーネのほうを見る。

「確かに私よりは強いかもね~。でも正直……」

「うん、モースの方が強いよな」

「いやいやいや! 私の魔法の威力でモースなんかひとっ飛びでしょ!」

「いやー、確かにシルフの魔法の威力ってすごいけど、なんかそれだけって言うか……」

「モースは駆け引きが上手よね~」

「そうそう! モースは一定のリズムを時々崩してくるんだけど、そこからモースに流れを持ってかれちゃう感じ!」

「手数も威力もシルフの方が強いけど、数値で表せない部分がモースの強みよね~」

「いやいや! それでも私が勝つよ! ねぇモース………ってあれ?」

「モースは今工房にいるよ。なんでかは知らないけど」

「ふーん。まぁモースの事だしやましい事は無いでしょ。それよりも!」

「わっ」

 唐突に私の至近距離に近づくシルフ。

「模擬戦、しよ! いいでしょ~?」

「……まぁいいけど」

「よーし! 見てなよサラマンダー!」

「ちっ、はいはい」

 そしてシルフは私から距離をとる。
 シルフは魔力を纏い始める。

「ルールはシンプル。先に降参した方が負け。それ以外は特に制限は無し! それじゃあ」

 シルフは杖を取り出し、目の色を変える。

「スタート!」


 ……まずは様子見だ。

「様子見なんてしてる暇あるのかな……!」


 風魔法かぜまほう風塵旋風シルフィストーム


 竜巻が私に襲いかかる。

 私はそれを躱したが、竜巻はそのまま私を追尾してくる。

「……!」

「ほらほら、これだけじゃないよ!」


 風魔法『風磨貫槍ガストスピアー


 風の槍が大量に飛んでくる。かなりサイズがあるので避けるのが難しいというのに、それが何十発も撃たれる。

「ほらほら、避けるだけじゃ私には勝てないよー!」


 風魔法『風魔の鉄槌ウィンドハンマー


 ガギィン!!
 私は刀で風のハンマーを受け止める。

「掛かったね!」

 動きの止まった私の後ろからシルフが素早く近づく。


 風魔法『風騎士の剣ソードオブナイト


「シルフ!?」

「最高火力魔法をここで使うの!?」

「どりゃぁぁぁぁぁあ!」

 巨大な剣を持ったシルフは私に切りかかる。

 私はそれを二本の刀で受け止めるが、残っていた風のハンマーによって殴られる。

「うわぁっ!!」

 私は数十メートル先まで飛ばされる。

「……くっ」

 私は跪き、下に俯く。

「流石にソードオブナイトもハンマーも片手じゃ受けられないよね! もう終わりかな!」


 風魔法『風磨貫槍ガストスピアー


 風の槍が私に襲いかかる。

「……」

 私はそれを上手く弾き、舞わせた砂塵に身を隠す。

「それで時間を取るつもりかな? 残念だけど追い討ちさせてもらうよ!」

 剣とハンマーを携えて砂塵の中にやってくるシルフ。

「…見つけた」

 人影を見つけたシルフはそこに斬りかかる。

 ガギィン!!

「終わりだよ、ルミツ」

 斬りかかる方向とは逆の方向からハンマーが襲いかかってくる。




 ガギィン!!




「!?」

 砂塵が薄くなり、ルミツの姿がハッキリとシルフの目に映る。そこにはそれぞれ1本の刀で剣とハンマーを受け止めているルミツが存在していた。

 ――嘘でしょ!?

 ルミツは、この一瞬の動揺を見逃さなかった。

 刀を2本とも手放し、シルフの後ろに回り込む。

 懐から虞美人を取り出し、斬りかかる。

「さ、させない!」

 シルフは魔力球を私の右手にぶつけ、私は武器を落とす。
 私はその反動で体制を崩す。

「その手じゃ切りかかれないでしょ……! 終わりだよ……!」

 そのままシルフは私に切りかかろうとするが、



「……!!」

 刹那の間、シルフは感じた。おぞましい気配を。



「……チェックメイト」

 シルフの目前には、短剣の刃先が突きつけられていた。
 ルミツの靴の踵に仕込まれていた純白の短剣に。

「うぇ……」

「降参……でしょ?」

「こ、降参……です……」
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