暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

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第2章 海を目指して

第8話 モーニングルーティン

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 夜。私たちはテントを貼り、簡易的な拠点を設立した。前世と違い人工的な明かりがほとんどないこの世界では、星々が美しく輝く。

「綺麗……」

「主の世界にも星はあっただろう?」

「流石にね。でも人間の作り出した光によって、場所によっては全く見えなくなっちゃったんだよ。技術の開発が、この景色を隠してしまった」

「……ふむ、そう考えると今のこの景色もいずれ消え去る時が来るのかもしれないな」

「まぁ、そうならないといいけど」

 そんなセンチメンタルな話をしている時であった。その空の中、一滴の星雫が垂れた。

「あっ」

「美しいものだ。この世界では今流れたあのような星に願い事をすると叶うと言われている。実際に叶うかは知らないがな」

「ふふっ、なんだか不思議だな」

「不思議?」

「私の世界でもこうやって流れ星が流れるんだ。そして願い事を3回言うと叶えられる。そんなおとぎ話が、私の世界にもあるの。表裏の世界で同じように伝わってるだなんて、不思議だけど素敵だよね」

「……ああ」

 空には満天の星が広がっている。前世では感じられなかった想いを、今ここで経験している。
 なんか、嬉しいな。

「モース! そろそろ寝よ~! もう疲れたー!」

「む、そうだな。それでは明日に備えて今日は眠るとしよう」

「うん」

 こうして私は自分のテントに入り、体を休めるのであった。





 ◇◇◇

「ん……、おはよぉ……」

 次の日。テントを開けると、太陽の光が寝起きの目を焼いた。涼しい風が心地よい。

「おはようございます、主様!」

「おはよ、サラマンダー」

 辺りを見渡すとサラマンダー以外の影が見えない。

「他のみんなはどこに行ったの?」

「あいつらは全員朝のルーティンに行きましたよ」

「ルーティン?」

「はい。シルフは風を感じに、ウンディーネは水浴び、モースは軽い運動をいつもやってるんですよ。魔法の質とかっていうよりも、気分の問題なんです」

「ふーん。サラマンダーは何かルーティンは無いの?」

「僕は喉の手入れですかね。歌を歌うのがメインで、ボイストレーニングだったり、喉に良い飲み物を作ったりしてますかね」

「歌うの!? なんで!?」

「喉の調子がいいと僕の得意技の山椒竜の息吹サラマンダーブレスがなんだか良い感じになるんですよね」

「えーっ、サラマンダーの歌聞いてみたい!」

「いやいや、そんな人様に見せられたものじゃないんですけど…」

「いいじゃんいいじゃん!」

「……仕方ないですね。ちょっとだけですよ」

「やった」

 サラマンダーは軽く咳き込み、「あ、あー」と喉慣らしをする。

「……ふぅ、いきますよ」

「うん!」

 そうしてサラマンダーは歌い始めた。歌と言うよりもahを音程に乗せている。こういうのをフェイクっていうんだっけ。
 とても透き通った、綺麗な歌声だ。

「Ah────────……」

「いいねぇ……」

 その後もフェイクは続き、数分経った頃サラマンダーは1曲を歌いきった。

「……どうでした?」

「すっごい良かった! ホントに綺麗で、なんて言うのかな……! 不思議と眠たくなるような心地良さだった! すごいね、サラマンダー!」

「……ありがとうございます」

「あーっ、照れちゃったぁ」

「こんなに正面から褒められ慣れてないっていうか……」

「えへへ、すごい良かったよ! また聞かせてね!」

「はい、もちろんです!」

 皆が帰ってくる間、私たちはそんな会話をしていた。そろそろ十数分は経っただろう。
 だが、モースたちは誰一人として帰ってくる気配は無かった。

「遅いね」

「まぁあいつらはどいつも集中したらやり続けちゃうタイプですから。あと小一時間は覚悟した方がいいかもしれませんね」

「小一時間か……。まぁ焦る必要も無いし、ゆっくり待とっか」

 確かに全員自分のやりたいことに熱中しそうなタイプだ。それも時間を忘れる程の。
  私もなにかルーティンでも作ろうか、そんなことを考えている時であった。

「……あの、主様」

「……どうしたの?」

 神妙な面持ちでこちらに話しかけるサラマンダー。

「僕の勘違いの可能性もあるんですけど、それでもほとんど間違いなく、僕たちは何者かに狙われてる気がするんです」

「……」

「僕たちのどれでもない魔力を時々感じるんです。何かが籠った、おぞましい魔力を」

「そっか」

 私は上手く言葉を綴ることができなかった。ただ強がるように、余裕のように見せかけた一言を呟くので精一杯であった。

「僕の魔力感知は四大精霊の中でも自称できるほどにずば抜けて高いです。だからこそ言えるんですよ。主様を狙う何者かが存在することに」

「……」








 ◇◇◇

 私が起きてから2時間後、モースとウンディーネは少し前に帰ってきたのだが、未だにシルフは帰ってこなかった。
 だが、空遠くに見える影が少しずつ近づいてきた。

「あっ、やっと戻ってきた」

「ごめんごめーん。待たせた?」

「ううん、全然待ってないよ」

「主様は2時間くらい前から起きてたけどね」

「めっちゃ待ってるじゃん! ごめんね!?」

「いいよいいよ、大丈夫だって」

 シルフが戻ってきた。これで全員が一応揃った。

「今日の風はそこそこ強かったなー。急に天気変わっちゃうかも?」

「ふむ。では今日のうちに最寄りの村にたどり着くとしよう。少し速めに歩けば夕暮れ前には間に合うだろう」

「うん、それが良いと思う!」

 こうして私たちは次の村へと出発するのだった。
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