婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135

文字の大きさ
2 / 24

01.トリックア…し、召喚?!

しおりを挟む



01.トリックア…し、召喚?!





 午前11時40分。
 大学のキャンパス内は色んな仮装をした生徒で盛り上がっている。
 ただ猫耳をつけただけの仮装や頭にお面をつけただけの簡易な生徒が居る中、完璧な衣装で学内を練り歩く生徒が矢張り多い。
 イベントが大好きなこの大学は、ハロウィンのイベントにも勿論寛容で仮装したまま授業を受けてもなにも言われない。寧ろバッチコイ! であり、教授達も仮装をしている。
 近くの商店街もハロウィンイベントをしていて、歩行者天国もあり大学からそのままの仮装で遊びに行っても今日はお咎めがない。
 終始お祭りモードで開いた時間に僕、春波 湯江(はるなみ ゆえ)はサークル顧問である多門(たもん)教授の下に訪れた。多門教授は異色の履歴を持っている人物で、海外で特殊メイクアートを習い国内、国外共に名声を得ているとんでもない人物だ。
 映研である我がサークルで時たま腕を振るってくれるが、いつ見ても鮮やかな出来に感嘆する。魔法がなくったって、この世界は輝いている。
 大学生になって二年目の僕は多門教授に特殊メイクを振舞ってもらうのも二回目だ。去年は初めてということもあって、大人しく魔女っ子(これを推したのは学友)だった。特殊メイクというよりは、普通に詐欺メイクというものをしてもらいどこからどう見ても女の子という出来栄えになった。
 浮かれた学内で詐欺メイクの僕は目立ったようで、あちこちから声をかけられ辟易したので今年はガツンと特殊メイクを施してもらうべく色々と持参した。

「春波君は、ゾンビがいいのかい? 去年の魔女っ子も壮絶な人気だったし、今年は妖精とかいいかなぁって思っていたんだが」

「その衣装は仕舞ってください。僕は今年、ゾンビになるつもりなんで、緑でお願いします」

 多門教授の私物にゾンビのマスクがあった筈。それはハロウィン当日貸し出しされていて、その醜悪なマスクを使う生徒はいなかった。
 ハロウィンはお祭り騒ぎでナンパをするチャンスであって、あまり弄りすぎるものはパスされている。
 僕はそれを借りるつもりで来ていたし、衣装もばっちりだ。
 教授は僕に着せる予定だったのかぴらぴらした虹色のティンカーベルのような透明な羽のついたその衣装をがっかりとした様子で片付けた。今年還暦という多門教授だが、意外に可愛いものが大好きで、僕にそれを着せたがるのが難点だ。
 大学に来る前にシャンプーで落せる染色剤で髪も緑に染めたし、ボロの服もネットでコスプレ衣装として用意した。さぁ、ゾンビになる準備はばっちりだと多門教授に声高に告げた。

「周りがドン引くくらいの仕上げにしてしまうよー」

「寧ろ、それでお願いします」

 上はボロい黄ばんだ色みのシャツと、下は茶色いカーゴズボン。腕は出さない方が良かったかなと思ったが、完ぺき主義の多門教授は手もばっちり同じ皮膚色で作ってくれた。
 目の前の僕がどんどんと違和感のないゾンビの顔になっていくのをワクワクしながら見ていると「出来たよ」の声でこれが完成なのだと感嘆した。
 多門教授は偶にその技術を買われ映画の特殊メイク係りに抜擢される程の腕前だ。今回は一時間とメイクを施した本人から言わせれば入り口に過ぎない軽いものらしいが、実際にこれが自分だと思うと感慨深いものがある。
 緑の髪に、醜い顔の自分。
 肌も緑色で、シャツから覗く首や腕もちゃんと緑色だ。
 でこぼことした顔は異形の言葉がピッタリ来るほどで、灰色の自分の瞳が異様にマッチしている。

「ああっ多門教授っこれはすごいです! 新たな自分を見つけました!」

「その容貌で自分にうっとりとする様はさすがと言うか、君らしいよね」

 テンションがどんどん上がる僕に多門教授は「これを片付けてくるね」とメイク道具を指差し部屋を出て行った。
 マスクはちょっと蒸れるが気候も穏やかになったからあと数時間は行けるだろうと顔にそっと指を当てた瞬間、ブォンと何かの機会が起動するような音が聞こえた。

「え?」

 何の音かと振り向いて、自分の足元が光っていることに気がついた。
 足元には光る円陣が徐々に描かれ始めた。

「なに…?!」

 慌てて円の外に出ようとするが円は僕を点にするように付いて回る。
 逃げられないと悟った瞬間、僕はその円陣が魔法陣であることに気付いた。
 これはあの日、僕の人生が変わったあの日の、魔法陣に酷似していた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! ルティとトトの動画を作りました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 本編、両親にごあいさつ編、完結しました! おまけのお話を、時々更新しています。 本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...