木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第499話 俺と彼女の出会い⑤

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 ※メスト視点です。




 サザランス公爵家の屋敷でお茶会をした日から、俺は少女……フリージアのもとを訪れるようになった。

 というのも、妹とお茶をしたと知ったリュシアンが、面白半分で俺を『鍛錬』という名目でよく屋敷に招くようになったからである。

 最初はリュシアンの悪戯心に、ロスペルとフリージアが怒ってくれたらしい。

 当の本人は快活に笑って全く反省しなかったみたいだが。

 けれど、そのお陰で俺はフリージアと話したり鍛錬したりして彼女のことが知ることが出来て、少しずつではあるが彼女との距離を縮められた。

 くるくると表情を変える彼女に対する俺の想いも、日に日に大きくなっていった。

 それは、いつものようにリュシアンとの手合わせを終え、それを遠くからに見ていたフリージアと目が合うだけで俺の心はかき乱されていく程に。

 これが、世間でいう『恋』というものなのだろう。


「ごきげんよう、フリージア嬢」
「ご、ごきげんよう……メスト様」


 出会った頃は家名で呼び合っていた俺たちも、いつの間にか名前で呼び合うようになった。

 これも、彼女に会う機会が増えたお陰だ。

 そして、最近になって俺は、もう1人の友人と一緒に屋敷に来るようになった。


「フリージア嬢、今日はシトリンも一緒に来ているんだ」
「こんにちは、サザランス公爵令嬢」
「これは、ジャクロット伯爵令息様。ようこそお越しくださいました」


 リュシアンから『婚約者がいなく、言い寄ってくる女性を丁寧に、しかし冷たくあしらう親友《メスト》が、自分の妹のことを好きになってしまった』ということを聞いたシトリンがここ最近、俺についてきて屋敷へ遊びに行くようになった。

 全く、どいつもこいつもどうしてこうなのだろう。

 そんな事情などこと知る由もないだろうフリージアは、完璧なカーテシーでシトリンを屋敷に迎える。

 何だかムカついてきた。

 シトリンに頭を下げるフリージアを見て、無性に腹が立った俺は、シトリンが持参した木剣を強奪した。


「メスト?」
「フリージア嬢、早速であるがお手合わせを願う」
「え、別に構いませんが……その、ジャクロット伯爵令息様のものじゃなくても、屋敷から自分用の木剣を持ってきますけど?」
「時間が勿体ないからこれで大丈夫だ。あっ、でもその前にこいつに消毒させる」
「プッ、アハハハハッ!!」


 威圧するようにシトリンを睨みつけると、それを見たシトリンが突然、腹を抱えて笑いだした。


「ジャクロット伯爵令息様!?」
「アハハハハッ!……いや~、大丈夫だよ。まさか親友から嫉妬される日が来るなんて思わなくてさ、面白すぎて笑っちゃった」
「…………」


 大方、この友人には俺が彼女に対してどう思っているのか手に取るように分かるのだろう。
 本当に、ムカつくやつだ。

 不貞腐れてそっぽ向いた俺を見て、再び噴き出したシトリンは、一頻り笑うと困り顔でオロオロしているフリージアに視線を移す。


「そうだね、時間が勿体ないから消毒した僕の木剣を使ってよ。僕の方は、2人の鍛錬を見ることにするから」
「よ、よろしいのですか?」
「うん、大丈夫だよ」


 そう言って、シトリンは持ってきた魔道具で木剣を消毒すると、そのままフリージアに渡した。


「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます、ジャグロット伯爵子息様! ではメスト様、よろしくお願いします!」
「あぁ、よろしく頼む」


 心底嬉しそうに笑うフリージアを見て、俺もつられて笑った。

 いつもの場所で木剣を構えると、心の中で静かに決意した。

 ――そろそろ、フリージアに婚約を申し込まないとな。

 その後、屋敷で仕事をしていたリュシアンが庭に出て、俺たちの鍛錬を見ていたシトリンと何かを話していたが、鍛錬に集中しすぎてよく聞こえなかった。

 だが、この会話を断片的に聞こえたらしいフリージアが予想外の行動を起こすとは思いも寄らなかった。
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