木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第500話 俺と彼女の出会い⑥

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 ※メスト視点です



 ――そして、その時はある日突然訪れた。


「メスト様、こちらです!」
「お、おい!    待てよ!」


 フリージアと出会って3年の月日が経ち、俺たちの距離は更に縮まり、8歳になったフリージアは、益々宰相家の令嬢として更に磨きがかかった。

 同時に、『王国の盾』としての自覚が生まれたのか、お転婆ぶりに拍車がかかり、騎士相手でも悪さをすれば持っていた護身用の得物で対峙していた。

 本当、相変わらず規格外な貴族令嬢だ。そんな彼女だから、俺は好きになったんだが。

 そして、彼女が暴走する度に、俺が率先して彼女を宥めるようになり、いつしか俺の隣にフリージアがいることが当たり前になっていた。

 そんなある日、俺はフリージアに誘われて、シトリンやリュシアンやロスペル、そして、王家主催の茶会で仲良くなったらしいカトレアやラピスと共に転移魔法でサザランス公爵領を訪れた。

 そして、公爵家の別荘の庭で、リュシアンやロスペルがカトレアやラピスの相手をしていると、突然フリージアが俺の手を取って、すぐ近くの森に意気揚々と入っていった。


「フリージア、護衛も連れず森に入ったら迷子になってしまうのではないか?」
「大丈夫です! 私にとってこの森は庭のようなものなので!」
「そ、そうなのか……?」


 本当に大丈夫なのだろうか?

 自信ありげなフリージアを見て不安に駆られていた時、鬱蒼としていた森が突然開け、フリージアの足が止まった。


「メスト様、見てください!」
「っ! これは!」


 急に視界が開け、思わず目を閉じていた俺は、ゆっくりと目を開く。

 そこには澄み渡る青空の下、雪のような真っ白な小さな花々が、地面を覆いつくように咲き誇っていた。


「フフン♪ この場所、私のお気に入りの場所で、いつかメスト様を連れて来たいと思っていたのです!」
「そう、なのだな」


 他の誰でもなく、俺をこの場所に連れてきたかったのか。

 屈託のなく笑うフリージアの言葉に、心が掻き乱された俺は、頬に熱を覚えながら優しく微笑む。

 そして、フリージアに手を引かれて、花畑の真ん中に彼女と一緒に座る。

 すると、心地良い風に乗ってきた花の甘い香りが鼻腔を擽り、思わず目を閉じた。


「良い場所だな。だが、本当に俺で良かったのか? 婚約者でも何でもない俺で」


 すると、いつも溌溂としているフリージアが、恥ずかしそうにもじもじすると、か細いで何かを呟く。


「……になりたいんです!」
「えっ?」


 フリージアの言葉が上手く聞き取れなかった俺は、目を開けて横を見た時、顔を上げたフリージアが手合わせの時のような真剣な表情で立ち上がり、はっきりと言葉にした。


「私、メスト様のお嫁さんになりたいんです!」
「っ!!」
「だから、メスト様をこの場所に連れてきて、想いを伝えたかったのです! あと少しでメスト様と会えなくなってしまうから!」


 真剣な彼女の表情を見て、俺は彼女がこの場所に俺を連れてきてプロポーズしたのか理解出来た。

 1ヶ月後、俺は騎士学校に入学する。
 そして、その学校は全寮制であるため、休日でもない限り、学校の外に出ることは許されない。
 そのことをつい先日、フリージアに伝えていたのだ。

 だからこそ、入学前に彼女に婚約を申し出るつもりだったのだが。

 彼女の宝石のような淡い緑色の瞳に宿る、揺るがない意思の強さとほんの少しの不安。

 それを見た俺は、小さく笑みを零すと彼女の小さな手を取り、静かに片膝をつくと顔を上げた。


「ならば、俺が騎士になったら、真っ先にフリージアを迎えに行こう」
「っ!」


 最近覚えた騎士のような礼で騎士らしい誓いを立てると、顔を真っ赤にしたフリージアが恥ずかしそうに俯いた。

 本当、可愛いな。

 澄み渡る青空の下、俺たちは純白の花々に囲まれながら将来を誓った。

 その後、2人で手を繋ぎながら屋敷に戻ると、屋敷で待っていたフリージアのご家族と友人達からものすごく怒られた。

 けれど、フリージアが『メスト様にプロポーズをした!』と報告した時、みんながなぜか『やっとか』と胸をなでおろして喜んでくれた。

 シトリンに至っては『やっぱりフリージア嬢は面白いね』と笑って祝福してくれた。

 まぁ、そうだろうな。

 なにせ、令嬢から令息にプロポーズをするというのは、この国ではとても珍しいことなのだから。

 サザランス公爵家の皆様は『フリージアならそれくらいはしそうだな』と苦笑していたが。

 そして、俺が騎士学校に入学する直前、両家の間で正式に私とメスト様の婚約が認められた。

 それからというもの、俺はの貴重な休日を使い、フリージアとの愛を順調に深めていった。

 だから、信じていた。

 フリージアが18歳で成人になったタイミングで、騎士になった俺が彼女を迎えに行き、彼女と結婚して幸せな未来が築けると。

 ……ノルベルトが俺を含めた国民全員の記憶を都合の良いように改竄し、俺の記憶からフリージアの存在を奪うまでは。
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