木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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最終章 木こりと騎士は……

第534話 嗤うノルベルト

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「ここまでだ、ノルベルト! お前だって分かっているはずだ! 魔力の尽きたお前に、出来ることなどもう無いことを!」


 ロスペルの本気の魔法により古の魔法陣が破壊され、ノルベルトの改竄魔法によって操られていた傀儡達が糸が切れたように倒れている中、ディロイスに剣を突きつけられたノルベルトが不敵に笑う。


「『出来ることなどもう無いか』……フフッ」
「何が可笑しい?」


 喉元に剣を突きつけられたノルベルトがゆっくりと顔を上げる。

 そこには、先程の絶望した様子は一切なく、むしろ、勝ちを確信したような余裕の表情をしていた。


「いや、お前達の頭は本当にお花畑だなと思っただけだ」
「は?」
「どういうことだ?」


 ディロイスだけでなく、レクシャまでも不快そうに眉を顰める。

 それを見たノルベルトは愉悦の笑みを浮かべる。


「この国の宰相家であり、魔法陣の管理をしているインベック家が、いざという時に備えての魔法陣を用意していないと思っているのか?」
「っ!? まさか!!」


 (が、本当だったというのか!?)

 ノルベルトを見て愕然とするレクシャ。

 そんな彼が見れてノルベルトは満足そうに笑う。


「ギャハハハッ! さすが、『帝国の死神』だな! 死の匂いを嗅ぐのは得意みたいだな!」
「貴様!    公爵様を侮辱するではない!」


 レクシャをバカにされ、怒りを覚えたディロイスが喉元奥深くに剣を突きさす。

 そんな中、愕然とした表情のままノルベルトを見つめるレクシャに、顔を顰めた国王が話しかける。


「レクシャ、奴の言っている『予備の魔法陣』とはどういうことだ?     我が国にある魔法陣は、古の魔法陣だけじゃなかったのか?」


 フリージア達が黙って話を聞いている中、静かで、けれど有無を言わせない緊張感のある声で問われたレクシャは、眉間の皺を寄せて少しだけ黙り込んだ末、観念したように話し始める。


「これは先代から聞いた話なのですが、インベック家が魔法陣の管理者に名乗り上げた際、貴族達の間で『もしかしたら、古の魔法陣を独自に研究し、自分たちだけの魔法陣を作り出し、再びこの国を乗っ取るかもしれない』という噂があったらしいのです」
「そんな噂が流れていたのか?」
「はい。ですが、前伯爵の優しく聡明なお人柄と貴族として優秀な手腕に、貴族達の間で徐々にその噂が消えました」


 すると、驚いた表情をしたロスペルがすかさず口を挟む。


「古の魔法陣には今の魔法論理では説明がつかない緻密かつ複雑な魔法構成が何重にも施されてる。だから、例え時間をかけたとしても1貴族が……それも、あまり魔法に精通していない貴族が、古の魔法陣を研究し、独自に魔法陣を作り出すなんて無理だ!」


 古の魔法陣の研究は当時、宮廷魔法師団副団長だったロスペルを中心に行われていた。

 だからこそ、家の地下深くに眠っていた魔法陣を研究する難しさも、そこから魔法陣を生み出すことの大変さも誰よりも知っていた。

 そして、かつての宰相家であるインベック家が、魔法よりも権力が大好きで、魔法に精通していないことは、貴族の間では有名だった。


「だからこそ、魔法陣の管理をインベック家に任せたのだが……」


 (例え、約300年前に厄災を引き起こしたいわく付きの家だったとしても、魔法に興味が無ければ、魔法陣を利用するなんてバカな真似はしないと)


「何より、前伯爵様たっての願いだったから」


『歴代インベック伯爵の中で、1番話が通じる』で有名だったノルベルトの父にあたる前インベック伯爵の人の良さと誠実さに、レクシャの父である前サザランス公爵は管理を任せることを決めた。

 すると、ノルベルトがニヤリと嗤う。


「だが、実際は作られ……いや、俺が作った!   神の魔法である改竄魔法で操った傀儡達によってな!」
「「「「「っ!!!!」」」」」
「……つまり、貴様が独断で作ったと?」
「あぁ、そうだ!    親父もバカだよな!   せっかく強力な武器を手に入れたんだから、使わなきゃ勿体ないだろうに!」
「っ!」


 ノルベルトの言葉に、フリージア達が言葉を失う中、険しい顔をしたレクシャが得物を握り締める。


「この愚か者が」


 (国の暗部を担うインベック家が『魔法陣の管理』という大役を引き受けるのに、どれだけの時間をかけたのか、どれだけの苦労を強いたか分からないのか?)


「フン!     なんとでも言え。負け犬の遠吠えにしか聞こえんから」
「貴様……!」


 顔を顰めるレクシャに対し、小さく鼻を鳴らしたノルベルトは空に向かって手を伸ばす。

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