木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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最終章 木こりと騎士は……

第543話 ノルベルト・インベック①

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 ※ノルベルト視点です。



 俺の生まれた家は、かつてペトロート王国で代々宰相を務めていた由緒正しき家だった。

 だが、約300年前、当時宰相だった先代当主が調子に乗り、改竄魔法で有力貴族達を自らの駒にして帝国に対して戦争を仕掛けた。

 だが、大陸で圧倒的な武力を持つ帝国相手に、小国でしかない王国が勝てるはずもなく、先代当主率いる王国軍は帝国軍に対して見事なほどに惨敗した。

 その結果、先代当主は戦争を起こした首謀者として、国王や駒にした有力貴族達と共に斬首された。

 そして、建国時から王国を支えている我がインベック家は、王国と帝国の間で交わされた取引により、公爵位から伯爵位へ降格させられ、宰相の地位を帝国から来た分家に奪われた。

 こうして、国王の右腕である『宰相』という貴族としてこれ以上ない誉れ高い地位で王国を支えきたインベック家は、『帝国の死神』に何もかも奪われたことで、王国監視下で『王国の影』として一族から生まれる闇魔法使い達全員で裏から王国を支えるという不遇な立場になってしまったのだ。


「約300年が経ち、社交界で我が家が腫物扱いされることは無くなった。だが、忘れてはならない。我が家がかつて、この国に多大な損害を与えてしまったことを」


 これは、現インベック伯爵である親父が、協会での魔法判定で幼い俺に闇魔法である改竄魔法が使えると判明した時から、事あるごとに言っていた言葉だ。

 それはもう耳にタコが出来るくらいに聞かされていた。

 それも、険しい顔をしながら。

 恐らく、親父は俺が約300年前に戦争を起こした先代と同じ魔法が使えることを危惧して、俺に言い聞かせていたのだろう。

 けれど、俺は親父から大昔に起こした先代の過ちについての話を聞くたびに思った。


『俺が先代と同じ過ちをするはずがない』と。


 なにせ、約300年前に戦争を引き起こした先代は、一般的な貴族に比べて魔力量が少なかったらしい。

 そのため、改竄魔法で傀儡に出来たのは有力貴族だったとのこと。

 これは、屋敷の図書館にある先代の日記に書かれていたことだが……要は、魔力が少なかったせいで、先代は『改竄魔法』という素晴らしい魔法を使いこなせなかった。

 だったら、一族の中で一番魔力量が多い俺は使いこなせるはず。

 そして、こうも思った。


『改竄魔法が使えるの俺が周囲から避けられるのも、宰相を務めていたインベック家が陰の仕事をすることになったのも、全て先代のせいだ』と。


 俺が改竄魔法を使えるのは、家族の中での秘密とされ、外部には漏れないよう親父が徹底的に緘口令を敷いた。

 だが、どこかのバカが漏らしたのだろう。

 俺が改竄魔法を使えることが瞬く間に社交界で広まり、インベック家の評判も相まってか、俺が学園に通っている間、事あるごとにクラスメイトからバカにされたり、蔑みや憐れみの目を向けらたりした。


「お前、改竄魔法が使えるんだってな!」
「それも、あの闇魔法使い達ばかり輩出しているインベック家の跡取り息子なんだろ!」
「気味悪い。落ちぶれた伯爵家の闇魔法使いなんて、あっちに行け!」
「そうだそうだ! この国から出て行け!!」


 学園の奴らからバカにされる度に、俺は『どいつもこいつもバカばかりだ』と内心嘲笑っていた。

 魔法は神から与えられる贈り物である。

 人間如きが人智を超えた力を意図的に選べるわけがない。

 それに、俺だってお前ら凡人のような属性魔法が使える。

 土属性の魔法だが。

 とはいえ、魔法の才能がろくになかった先代が改竄魔法を使ったせいで、宰相を務めていたインベック家は陰の仕事をする羽目になり、俺は改竄魔法が使えると言うだけで周囲に疎まれる。

 それもこれも全部、先代のせいだ。

 だから俺は考えた。

 『改竄魔法を使って世界征服をしよう』と。

 魔力量の多い俺が改竄魔法を使えば、この世界の人間全員を俺の駒にすることが出来る。

 そうなれば、俺は神にも等しい存在として、周りの人間達から認められる!

 誰も俺を蔑んだ目で見ることもないし、聞く堪えない罵声を浴びせられることもない!


「となると手始めにやることは……先代のせいで奪われたものを取り返し、この国を支配することだな」


 学園卒業を目前に控えたある日、俺は世界征服の足掛けとして、現宰相である『帝国の死神』から全てを取り返し、この国を手中に収めることを決めた。
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