木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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最終章 木こりと騎士は……

第549話 ノルベルト・インベック⑦

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 ※ノルベルト視点です。



「これはこれは、ようやく来ましたか。レクシャ・サザランス」
「っ!? ノルベルト・インベック!」


 一緒に来た御者と共に王城から出てきた俺を悔し気に見つめるのは、ペトロート王国現宰相……いや、約300年前に王国に来た帝国の悪魔の子孫だった。

 ギャハハハハッ! まさか、こんなにも早く取り返す機会が巡ってくるとはな!

 常に朗らかな顔で国の政を取り仕切っている奴の殺気立つ姿を見て、今までに味わったことのない多幸感で胸がいっぱいになる。


「貴様、こんなことをしてただで済むと思っているのか!」


 帝国の悪魔が何かをほざいているが、王族をコマにした今の俺にはただの負け惜しみにしか聞こえない。


「ギャハハハッ! 私の駒にあっさりと捕まった愚民に言われても、何の説得力もありませんね!」
「っ!!」


 何も言えず口を閉ざす悪魔、実に滑稽だ!!

 一頻り笑うと悪魔が周囲を確認していたので、笑わせてくれたお礼に俺が慈悲を与えてやった。


「安心してください。そこにいる御者も、遅かれ早かれ私の傀儡になります」
「っ!」


 驚いて俺の方を見る悪魔。

 安心しろ、そこの御者はとことん使い潰した後に、お前がいるあの世に送ってやるからよ!

 俺からの慈悲に言葉を失う悪魔にそっと顔を寄せる。


「さて、あなたにお願いがあります」
「何だ?」


 周囲を威圧するような殺気を放つ悪魔に、俺はお願いをする。


「私に、宰相の座を明け渡してください」
「っ!? そんなこと、出来るわけ……」
「まっ、あなたが間髪入れずに断るのは分かっていたので」


 そう、こいつが俺のお願いをすんなり聞いてくれるわけがない。
 だから……


「取引をしましょう」
「取引だと?」
「そう、取引です」


 それも、お互いにとって利になる。


「あなたが宰相の座を明け渡せば、家族には一切手を出しません」
「っ!?」
「ただし、あなたが明け渡さなければ……」


 悪魔を脅すように自分の親指を立てると、そのまま自分の首の前で横一線を引いた。


「家族もろとも公開処刑をした上で、サザランス公爵家を『ペトロート王国の最大の汚点』として没落させましょう」
「っ!!!!」


 その瞬間、殺気立っていた悪魔の表情が一気に青ざめる。

 あぁ、愉快だ!! 実に愉快だ!!!


「ギャハハハハハッ! そうだよ! あんたのそういう絶望した顔が見たかったんだよ!」
「っ!! ノルベルト、貴様ぁ!!!!」
「おっと」
「グハッ!!」
「マーティス!」


 悪魔が愚かにも俺に歯向かおうとしたので、躾を兼ねて駒に御者の手に剣を突き立てるように命じる。

 すると、駒に剣を突き立てられた御者は、醜く叫び声を上げ、それを聞いた悪魔が必死な表情で御者を見る。

 悪魔が身内に優しいのは知っていた。特に、家族に対してはとことん甘い。

 だから、取引の対価にした。奴の最も大切なものを。


「だ、大丈夫です! 旦那様、私のことは構わず……」
「おやおや、こんなことを言っても良いのですかねぇ?」
「ギャ――!!」
「マーティス!!」


 悪魔のために忠義を尽そうとする御者が不愉快だったので、駒を操って御者に突き立てた剣で御者の手を抉る。

 再び聞く耐えない絶叫を上げた御者だっだが、涙を流しつつも耐えている。

 あぁ、実に不愉快だ。今すぐに俺の駒にしたい。

 だが、痛みに耐えている御者を横でただ黙って見ている悪魔の悲痛な表情は、俺の嗤いのツボに見事に嵌ってしまった。


「ギャハハハハハッ!! 良いね! 良いですねぇ! あなたのそんな余裕の無い顔! それを国民の前で見せたいものだ!」
「くっ!!」
「あ~、御者如きでそんな表情をしているんだ。これが家族だったら、一体あなたはどんな顔をしてくれるですかねぇ!!」
「貴様――――!!!」


 あ~あ、家族が御者と同じ目に遭った時のことを想像した悪魔が、御者を助けようと必死にもがいている。

 無効化魔法しか使えない奴が、重い鉄で作られた特注の枷から逃れられるはずがないのに。

 さて、そろそろ飽きてきたので、さっさと取引を終わらせよう。

 今日はやることが山積みだからな。こいつから全てを取り返した後は、ならず者達に悪魔達を殺してもらい、そしとこの国に俺の魔法をかけないといけないから。

 笑みを潜めた俺は、悪魔に向かって命令を下す。


「さぁ、お前が最も愛する家族があの御者のような酷い目に遭いたくなければ、さっさと宰相の座を返せ……この簒奪者」


 そうして俺は、悪魔から全てを奪い返し、悪魔達を一人残らず絶やしにした後、この国に俺の改竄魔法をかけると、世界征服のために着々と準備を進めた。

 もう俺の邪魔をする者はいない。これで、俺の念願が叶う!

 ……コロッセオで消したはずの悪魔と対峙する時までは。
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