木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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最終章 木こりと騎士は……

第552話 大事な家族だから

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「リアンに……」
「カルミア」


 リュシアンとティアーヌに倒されたはずの2人が現れ、困惑しつつもフリージア達は警戒する。

 そんな中、眉を顰めたラピスがカトレアに小声で話しかける。


「なぁ、この2人もまさか……」
「多分、あの女と同じように記憶が混濁して、一時的に正気に戻っているのかもしれないわね」


 (そうじゃなきゃ、出会った瞬間に召喚された魔物に襲われているか、大したことがない風属性魔法が放たれているわ)

 戦いの時に感じた敵意が今の2人から全く感じないカトレアは、ラピスに向けていた視線をそっと前に戻す。

 すると、ダリアの隣に立ったリアンとカルミアが揃って頭を下げる。


「インベック家の今までの行いを思えば、『なんて身勝手な』と思っているかもしれない!    もちろん、今までの行いに対しての償いなら、全てが終わった後に家族全員で必ず行うと、次期当主としてこの場で約束する!    だから頼む、あのクソ親父を止めるために俺たち家族を行かせて欲しい!」
「あれでも一応、私たちにとって大事な家族なの!    だから今だけは……この瞬間だけは、私たちの頼みを聞き届けて欲しいの!」


 本来、領民の生活を預かっている貴族が、他の貴族に対して頭を下げることは『他貴族に屈した』という意味に捉えられるため、簡単には頭を下げることは出来ない。

 ましてや、王国を影から支えている貴族なら尚のこと。

 だが2人は、フリージア達に何の躊躇いもなく頭を下げた。

 この7年で、自分たちが王国に多大な混乱を齎したことを自覚している。

 それでも、この国を混乱に陥れた元凶であるノルベルトを止めたい。

 大事な家族だから。

 そんな2人の潔い態度を見たダリアは、2人を真似るように倒れたまま深々と頭を下げる。


「お願い! パパのところに連れて行って!」


 改竄魔法の影響下にいた頃のダリアは、宰相家令嬢の立場を利用し、気に入らない人間を容赦無く虐げたり、見目麗しい男性達と昼夜問わず激しい遊びをしたりと、本能の赴くままに振る舞っていた。

 しかし、本来のダリアは気に入った男性には媚びを売り、気に入らない人には嫌味を言うが、貴族として誇りを持っているため、決して本能の赴くままに振る舞わなかったし、誰かに頭を下げるなんて決してしなかった。

 すると、フリージアがリュシアンに向かって頭を下げる。


「リュシアン兄様、私からもお願いします」
「フリージア!?」


 (この中で1番、インベック家に対して思うところがあるはずなのに!)

 木こりとして民を守っていたフリージアを1番近くで見ていたからこそ、『インベック家の願いを聞き届けて欲しい』とリュシアンに対して頭を下げるフリージアに驚きが隠せないメスト。

 そんな彼を他所に、頭を上げたフリージアがリュシアンに懇願する。


「この方々もまた、ノルベルトの被害者です。ならば、何か一言、文句でも何でも言う権利があるかと」
「だが、こいつらが結託して俺たちに襲う可能性が……」
「それなら、ダリアと同じように拘束魔法で縛った状態で連れて行けばいいだけの話です」


 (そもそも、疲労困憊で敵意が全く見えない人達が私たちに危害を加えるとは到底思えないけど)


「どうでしょうか?」
「そうだな、本当は連れて行きたくないが……」


 深々と頭を下げ続けるダリア達に目をやったリュシアンは、ゆっくりと目を閉じると思案を巡らせる。

 (本来なら絶対連れて行けない。何を仕出かすか分からないから。だが……)

 ほんの少しの時間、考え込んだリュシアンは静かに目を見開くとフリージアの方を見て苦笑する。


「分かった、フリージアのお人好しに免じて、こいつらを連れて行こう」
「ありがとうございます、兄様!」
「「「ありがとうございます!」」」


 顔を上げて喜びを分かち合ったダリア達が再び頭を下げる。

 そんな彼女達に険しい顔をしたリュシアンが条件をつける。


「ただし、連れていく前にリアンとインベック伯爵夫人を拘束魔法で縛らせてもらう。さっきも言ったが、突然敵意を向けられても困るからな」


 すると、頭を上げたリアンが真剣な表情で深く頷く。


「分かった。母さんもそれで良いよな?」
「えぇ、構わないわ」


 2人から了承を得たリュシアンは、ロスペルに拘束魔法で2人を縛るように指示を出す。

 その時、縛られたままのダリアが突然、ラピスに媚びた目を向ける。


「それじゃあ、ラピス様!   伯爵令嬢である私をかついで……」
「そんなことさせるわけがないでしょ! この淫乱令嬢!」
「キャッ!」


 ラピスに粉をかけようとしたダリアを目ざとく見つけたカトレアは、風属性の中級魔法でダリアの体を宙に浮かす。


「あんたね! もう少し優しくしなさいよ!」
「うるさいわね! 今のあんたにはこれくらいが丁度いいのよ!」
「何ですって!!」


 学生時代に出会ってから……いや、それよりも前から会えば何かと口喧嘩をしていたダリアとカトレア。

 そんな2人を傍で見ていたラピスは、久しぶりの口喧嘩に思わず笑みを零すと、すぐさま笑みを潜めて慣れたように2人の仲裁に入る。

 そして、リアンとカルミアの体をロスペルの拘束魔法で縛った後、フリージア達はダリア達を連れてレクシャ達のもとに向かった。

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