木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第1章 木こりと騎士は再会する

第48話 任せるなんて出来ない

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『報告です。魔物の群れ周辺に、馬と一緒にいる平民がいます』


 (魔物の群れの近くに平民?)

 いち早く群れの後を追っていた部下から、通信魔法が付与された魔道具で報告を受けたグレアは思わず眉を顰める。

 (どうしてここに平民が? そもそも、平民が馬に乗れるはずなんて……)
 
 その時、数時間前にメストとシトリンがリアスタ村で会った件の人物のことを思い出した。

 (確か、粗相の悪い騎士達の幾多の愚行をレイピア1本で止めた例の平民が、リアスタ村の住人だったと聞きましたが……もしかして!)

 部下の見つけた平民が、メストとシトリンがあった平民であり、団長のフェビルから口止めされている平民だと思い至ったグレアは、すぐさま部下に指示を飛ばす。


「その平民は、私の方で保護します。なので、皆さんは魔物討伐に死力を尽くしてください。騎士団の名に懸けてこれ以上、一匹たりとも村へ近づけさせてはいけません!」
『ハッ!』


 部下からの通信が切れたのを確認したグレアは、すぐさま魔道具に魔力を流し込むと今度は後ろにいる騎士達へ指示を飛ばした。


「群れの後を追っていた部隊からの報告で、残りの魔物の群れが発見しました。目算からして、魔物を見つけた場所から村までそう遠くはありません。ですので皆さん、絶対に魔物達を全滅させます!!」
「「「「「ハッ!!!!!!」」」」


 背中から聞こえてきた頼もしい返事にグレアが小さく笑みを零すと、前方から爆発音と騎士達の勇ましい声が聞こえ、その近くでレイピアを構えながら唖然としている木こりの格好をした平民と馬を見つけた。


「あの方ですね」


 (見た感じでは、貴族か騎士しか持っていないレイピアや馬がいること以外、至って普通の平民に見えますが……)

 木こりとは思えない細身の平民に、『この平民が本当に騎士を返り討ちにしたのか?』と俄かに信じ難いグレアだったが、一先ず後方にいる部下達へ再び命令を飛ばす。


「前方に平民らしき人物を見つけました。そちらは私が対応しますので、あなた達は魔物の討伐に専念してください!」
「「「「「「ハッ!!!!!!」」」」」」


 命令を受けた騎士達が、次々とグレアを追い抜いて走って去り、既に魔物討伐をしていた騎士達に加勢する形で魔法を放って得物を振る。
 そんな部下達の背中を見届けたグレアは、強化魔法を解くと立ち尽くしている人物に声をかける。


「そこの君、一体何をやっているのですか? 見ての通り、ここは危ないですから今すぐ離れて下さい」


 銀縁の眼鏡を軽く上げたグレアが険しい顔で逃げるよう促す。
 すると、グレアの顔を見た木こりが驚いたように一瞬目を開くと、すぐさま無表情に戻してゆっくりとレイピアを降ろす。


「あなた様は……つい最近、村近くの駐屯地で訓練している騎士様でしょうか?」


 (『無表情で騎士に対して一切怯えない』……どうやらこの平民が、アルジムやリースタを止めた平民で間違いなさそうですね)

 以前、フェビルと共に目を通した報告書の一文を思い出したグレアは、再び眼鏡を上げると小さく頷いた。


「そうです。ですから、ここは私たち騎士団に任せて下さい」
「『騎士団に任せて』ですか」
「えぇ、そうです」
「それでしたら……嫌です」
「えっ?」


 怪訝な表情をするグレアに、木こりは下ろしていたレイピアを構えると視線を魔物の群れに移す。


「あなた達騎士団は、ここ数年、私たち平民を奴隷のように甚振ったり不条理に搾取したりするだけで、騎士らしいことを何もしてこなかったではありませんか」
「それは前の騎士団長時代の話です。今の騎士団長は……」
「関係ありません」


 きっぱり言い切った木こりは、足元に透明な魔力を纏わせる。

 
「私たち平民にとって、騎士は騎士です」
「っ!」

 
 言葉を失うグレアを一瞥し、木こりは纏わせていた魔力を上に向けて弾け飛ばすと体を宙に浮かせる。

 (だから私は、剣を振るうのよ)

 宙に浮かせた木こりは、すぐさま体勢を変えて再び足元に魔力を纏わせると、今度は地上に向かって弾け飛ばし、剣と魔法が飛び交う集団のど真ん中へ一直線に飛び込む。
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