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第1章 木こりと騎士は再会する
第60話 勝敗と異変
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「何、これ?」
陽光が差し込む森に心地良い風が吹く中、メストと同じシンプルで動きやすい服に身を包んでいる審判役のシトリンは、木こりと騎士の一進一退の激しい攻防を啞然した表情のまま目で追っていた。
(魔物討伐と同じくらい本気のメストの隙の無い剣裁きもすごいけど、それを紙一重で躱し続けている木こり君もすごい)
額に汗を滲ませながら鬼気迫る表情で剣を振るメストと、珍しく苦しい表情をしながら躱し続ける木こり。
「この勝負、どちらが勝ったも……」
(今日のことを忘れられないね)
息を呑んで状況を見守っていたシトリン。
そして、勝敗は一瞬にしてついた。
◇◇◇◇◇
「フッ! ハッ!!」
「クッ!」
手合わせを再開したメストの更なる剣戟に、表情を歪ませた木こりは彼から距離を取ろうと思案を巡らせる。
(さすが近衛騎士。長い時間、剣を振り続けているはずなのに剣裁きが落ちる気配ない。むしろ、更に鋭くなっている気がする。けど、そろそろ決着をつけないと私の体力が……あ、あの場所なら!)
鬱蒼としている森の中で、特に樹木が生い茂る場所を見つけた木こりは、彼をその場所まで引き込もうと攻撃を躱しつつ誘導しようとした。
だが……
「よそ見をするな!」
「っ!」
木こりの視線に気づいたメストは、月を突く鋭い一撃で木こりの行く手を阻み、更に隙を与えない攻撃を仕掛ける。
(失敗した。でも、距離を取らないと体力が……)
「ハアッ!!」
体力の限界を感じた木こりが降参するようにレイピアの鞘に手をかけたその時、メストが大ぶりに剣を振るい一瞬だけ隙が出来た。
(これを躱せば一気に彼から距離を取ることが出来る上に彼をあの場所に引き込めるわ)
散歩を日課にしているステインに比べ、森の知識があまりない木こり。
それでも、木々が生い茂る場所にメストを引き込めば、木を盾にして攻撃を躱しつつ体力を回復すること出来るだけでなく、メストにとって木々は障害物になるからメストの体力を削ることも出来ると確信した。
ほぼゼロ距離で攻撃を躱していた木こりは、彼をあの場所へ引き込むためにメストの大振りの攻撃を躱して一気に距離を取ろうとした。
その瞬間、メストの口角が少しだけ上がった。
(フッ、かかったな)
攻撃を躱されたメストが浮かべた不敵な笑みに、木こりは今の大振りの攻撃がフェイントであると察して大きく見開く。
(マズイ!! このままじゃ……!!)
「ハアアッ!!」
メストのフェイントからの強烈な一撃に、大きく体をのけ反らせて体勢を崩した木こりはレイピアの柄に手をかける。
カキン!!!
「「ハァ、ハァ、ハァ……」」
木々のざわめきと鳥たちのさえずりが響く穏やかな森の中、息を切らした2人は自分の持っている得物に目を向けた。
「どうやら、俺の勝ちだな」
「そう、みたいですね」
片膝をついて僅かに眉を顰める木こりと、心底嬉しそうな顔で木こりを見下ろすメスト。
相対する2人の視線の先には、振り下ろされたメストの両手剣を受け止める木こりのレイピアがあった。
◇◇◇◇◇
「そ、そこまで! 勝者、メスト!」
2人の激闘に見惚れていたシトリンから名前を呼ばれ、笑みを深めたメストはゆっくりと剣を収めて再び木こりを見ると、思わず息を呑んだ。
「っ!?」
そこには、片膝ついたままでレイピアを降ろした木こりが心底悔しそうな表情をしていた。
(こんな表情をする彼、初めて見た)
今まで無表情の木こりしか見たことがなかったメストは、初めて見た木こりの人間らしい表情を見て安堵する。
すると、メストの頭に懐かしい記憶が蘇った。
『メスト様! 次は絶対勝ちますからね!!』
(この記憶は確か、幼い頃にダリアと……いや、ダリアは黒髪に茶色の瞳で、記憶の中の少女は銀髪に淡い緑色の瞳だからダリアではない。だとしたら、俺に木刀の切っ先を向ける勝気な笑みの少女は一体……)
メストが記憶の中の少女を思い出そうした時、突然、激しい頭痛に襲われた。
「ウッ!!!!」
「メスト!」
「あっ!!」
頭をかち割るような頭痛に、咄嗟に額を抑えたメストは木こりから少しだけ離れるとその場に蹲る。
(メスト様!!)
彼の異変を目の当たりにした木こりは、慌ててレイピアを鞘に収めるとメストの前にしゃがみ込んだ。
(メスト様!! メスト様!!)
顔を真っ青にした木こりがメストの顔を見ようとした瞬間、彼の体がゆっくりと木こりの方に傾いた。
陽光が差し込む森に心地良い風が吹く中、メストと同じシンプルで動きやすい服に身を包んでいる審判役のシトリンは、木こりと騎士の一進一退の激しい攻防を啞然した表情のまま目で追っていた。
(魔物討伐と同じくらい本気のメストの隙の無い剣裁きもすごいけど、それを紙一重で躱し続けている木こり君もすごい)
額に汗を滲ませながら鬼気迫る表情で剣を振るメストと、珍しく苦しい表情をしながら躱し続ける木こり。
「この勝負、どちらが勝ったも……」
(今日のことを忘れられないね)
息を呑んで状況を見守っていたシトリン。
そして、勝敗は一瞬にしてついた。
◇◇◇◇◇
「フッ! ハッ!!」
「クッ!」
手合わせを再開したメストの更なる剣戟に、表情を歪ませた木こりは彼から距離を取ろうと思案を巡らせる。
(さすが近衛騎士。長い時間、剣を振り続けているはずなのに剣裁きが落ちる気配ない。むしろ、更に鋭くなっている気がする。けど、そろそろ決着をつけないと私の体力が……あ、あの場所なら!)
鬱蒼としている森の中で、特に樹木が生い茂る場所を見つけた木こりは、彼をその場所まで引き込もうと攻撃を躱しつつ誘導しようとした。
だが……
「よそ見をするな!」
「っ!」
木こりの視線に気づいたメストは、月を突く鋭い一撃で木こりの行く手を阻み、更に隙を与えない攻撃を仕掛ける。
(失敗した。でも、距離を取らないと体力が……)
「ハアッ!!」
体力の限界を感じた木こりが降参するようにレイピアの鞘に手をかけたその時、メストが大ぶりに剣を振るい一瞬だけ隙が出来た。
(これを躱せば一気に彼から距離を取ることが出来る上に彼をあの場所に引き込めるわ)
散歩を日課にしているステインに比べ、森の知識があまりない木こり。
それでも、木々が生い茂る場所にメストを引き込めば、木を盾にして攻撃を躱しつつ体力を回復すること出来るだけでなく、メストにとって木々は障害物になるからメストの体力を削ることも出来ると確信した。
ほぼゼロ距離で攻撃を躱していた木こりは、彼をあの場所へ引き込むためにメストの大振りの攻撃を躱して一気に距離を取ろうとした。
その瞬間、メストの口角が少しだけ上がった。
(フッ、かかったな)
攻撃を躱されたメストが浮かべた不敵な笑みに、木こりは今の大振りの攻撃がフェイントであると察して大きく見開く。
(マズイ!! このままじゃ……!!)
「ハアアッ!!」
メストのフェイントからの強烈な一撃に、大きく体をのけ反らせて体勢を崩した木こりはレイピアの柄に手をかける。
カキン!!!
「「ハァ、ハァ、ハァ……」」
木々のざわめきと鳥たちのさえずりが響く穏やかな森の中、息を切らした2人は自分の持っている得物に目を向けた。
「どうやら、俺の勝ちだな」
「そう、みたいですね」
片膝をついて僅かに眉を顰める木こりと、心底嬉しそうな顔で木こりを見下ろすメスト。
相対する2人の視線の先には、振り下ろされたメストの両手剣を受け止める木こりのレイピアがあった。
◇◇◇◇◇
「そ、そこまで! 勝者、メスト!」
2人の激闘に見惚れていたシトリンから名前を呼ばれ、笑みを深めたメストはゆっくりと剣を収めて再び木こりを見ると、思わず息を呑んだ。
「っ!?」
そこには、片膝ついたままでレイピアを降ろした木こりが心底悔しそうな表情をしていた。
(こんな表情をする彼、初めて見た)
今まで無表情の木こりしか見たことがなかったメストは、初めて見た木こりの人間らしい表情を見て安堵する。
すると、メストの頭に懐かしい記憶が蘇った。
『メスト様! 次は絶対勝ちますからね!!』
(この記憶は確か、幼い頃にダリアと……いや、ダリアは黒髪に茶色の瞳で、記憶の中の少女は銀髪に淡い緑色の瞳だからダリアではない。だとしたら、俺に木刀の切っ先を向ける勝気な笑みの少女は一体……)
メストが記憶の中の少女を思い出そうした時、突然、激しい頭痛に襲われた。
「ウッ!!!!」
「メスト!」
「あっ!!」
頭をかち割るような頭痛に、咄嗟に額を抑えたメストは木こりから少しだけ離れるとその場に蹲る。
(メスト様!!)
彼の異変を目の当たりにした木こりは、慌ててレイピアを鞘に収めるとメストの前にしゃがみ込んだ。
(メスト様!! メスト様!!)
顔を真っ青にした木こりがメストの顔を見ようとした瞬間、彼の体がゆっくりと木こりの方に傾いた。
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