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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第79話 これからも続けさせて欲しい
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――それは、カミルにとって青天の霹靂だった。
「今、何とおっしゃいました?」
駐屯地での特別訓練最終日の朝。
回避技の鍛錬を終えたメストから『これからも一緒に鍛錬しよう』と言われ、カミルは一瞬頭が真っ白になった。
(今、『これからも』って言ってなかった?)
『これで、メストともしばらくお別れだ』と思っていたカミル。
なにせ、リアスタ村から王都までそれなりに距離があるから、今までのように鍛錬するのは難しいと思っていたから。
そんなカミルが無表情のまま固まっていると、メストは爽やかな笑みを浮かべながらさっき言ったことをそのまま繰り返す。
「だから、『これからも一緒に鍛錬しよう』って言ったんだ」
「『これからも一緒に鍛錬しよう』って……確か、今日って駐屯地での訓練最終日ですよね?」
「あぁ、そうだな」
笑みを浮かべたまま頷くメストに対し、カミルは少しだけ眉を顰める。
(昨日の鍛錬終わりに『明日で訓練が終わるから王都に戻る』って言われて、驚いたのと同時に『この鍛錬も明日で終わりか』ってほんの少し寂しさを……って、そうじゃなくて!)
「そうでしたよね。ならば、この鍛錬も今日でおしまいになるのではないでしょうか?」
「どうしてだ?」
「あなた様が王都に戻るということは、近衛騎士としての仕事に戻るということ。ですので、不規則で多忙な日々に戻るあなた様が、王都から馬を走らせてここに来ることは難しくなる」
「つまり、俺が王都に戻ったら仕事の都合で鍛錬する時間が無くなるというのか?」
「そういうことです」
(今日で彼との時間も終わりになる。だから、この温かくて切ない気持ちを絶対に思い出してはいけない)
こみ上げてきたもやもやとした気持ちを押し殺したカミルに、僅かに眉を顰めて聞いていたメストは小さく笑みを浮かべる。
「確かにそうかもしれない。だが、俺は王都に戻った後もカミルと鍛錬がしたいと。だから、この魔道具にこの場所を登録した」
「えっ?」
驚いて思わず声を上げたカミルを見て、メストは気まずそうに視線を逸らすと汗で濡れた紺色の髪を乱暴に掻いた。
「すまん、本当は俺が鍛錬初日に言えば良かった。だが俺は、最初から訓練が終わってこの場所を離れることになっても、お前との鍛錬を続けるつもりだった。だから、登録した」
「そうだったのですか? てっきり、駐屯地から道のりをショートカットするために登録したものかと」
「まぁ、それもあるが……」
乱れた髪から手を離したメストが小さく溜息をつくと、緩んだ表情を引き締めるとカミルに視線を戻す。
「まだ俺は、あなたのような回避技を身につけていない。だから、俺が王都に戻ってもあなたとの鍛錬を通して回避技を教えて欲しい」
「それでしたら、気が向いた時にこちらへ来ていただければいつでも教えますが」
「あぁ、それでも良かった。だが……」
そう言葉を区切ると、この1ヶ月の鍛錬のことを思い返す。
(1ヶ月間、俺は彼から回避技の基礎を学んだ。相手の動きを観察する時のポイント、相手の動きに合わせて体を動かす時にタイミング、得物を使っての攻撃の受け止め方に受け流し方、そして相手の攻撃を利用した反撃の仕方)
メストがカミルから学んだ回避技は、正しく騎士学校に通っていた時も学んでいたそれとは全く異なっていた。
『ほら、そこはカウンターが来ることを考慮して、避けたのと同時に剣で防ぐ構えをしないと』
『またそうやって正面から受け止めて。そんなことをしていたら、敵にすぐに隙をつかれますよ。こんな感じで!』
『うっ!』
カミルからの容赦ない指導を思い出し、メストは思わず笑みを零す。
(正直、得物を使った回避技まだまだ身についていない。それに、決闘の時を除いて彼に勝ったことは一度も無かった。当たり前だ。彼は長い間、1人で回避技を磨き続けていたのだから)
たかが1ヶ月足らずのメストがカミルに回避技で勝てるわけがない。
そう分かっていても、メストはカミルとの鍛錬のお陰で、前より相手の動きに対して敏感になったし、相手の動きに合わせての体の動かし方も洗練されたと実感する。
(何よりも、1番は……)
「あ、あの……?」
無表情のまま首を傾げるカミルに、優しく微笑んだメストは鍛錬を続けたい一番の理由を口にする。
「俺が、俺自身があなたの鍛錬の時間が楽しくて、毎日じゃないと嫌だと思ったんだ。だから、あなたが嫌じゃなければ、これからも毎朝、あなたとの鍛錬を続けてさせて欲しい」
「今、何とおっしゃいました?」
駐屯地での特別訓練最終日の朝。
回避技の鍛錬を終えたメストから『これからも一緒に鍛錬しよう』と言われ、カミルは一瞬頭が真っ白になった。
(今、『これからも』って言ってなかった?)
『これで、メストともしばらくお別れだ』と思っていたカミル。
なにせ、リアスタ村から王都までそれなりに距離があるから、今までのように鍛錬するのは難しいと思っていたから。
そんなカミルが無表情のまま固まっていると、メストは爽やかな笑みを浮かべながらさっき言ったことをそのまま繰り返す。
「だから、『これからも一緒に鍛錬しよう』って言ったんだ」
「『これからも一緒に鍛錬しよう』って……確か、今日って駐屯地での訓練最終日ですよね?」
「あぁ、そうだな」
笑みを浮かべたまま頷くメストに対し、カミルは少しだけ眉を顰める。
(昨日の鍛錬終わりに『明日で訓練が終わるから王都に戻る』って言われて、驚いたのと同時に『この鍛錬も明日で終わりか』ってほんの少し寂しさを……って、そうじゃなくて!)
「そうでしたよね。ならば、この鍛錬も今日でおしまいになるのではないでしょうか?」
「どうしてだ?」
「あなた様が王都に戻るということは、近衛騎士としての仕事に戻るということ。ですので、不規則で多忙な日々に戻るあなた様が、王都から馬を走らせてここに来ることは難しくなる」
「つまり、俺が王都に戻ったら仕事の都合で鍛錬する時間が無くなるというのか?」
「そういうことです」
(今日で彼との時間も終わりになる。だから、この温かくて切ない気持ちを絶対に思い出してはいけない)
こみ上げてきたもやもやとした気持ちを押し殺したカミルに、僅かに眉を顰めて聞いていたメストは小さく笑みを浮かべる。
「確かにそうかもしれない。だが、俺は王都に戻った後もカミルと鍛錬がしたいと。だから、この魔道具にこの場所を登録した」
「えっ?」
驚いて思わず声を上げたカミルを見て、メストは気まずそうに視線を逸らすと汗で濡れた紺色の髪を乱暴に掻いた。
「すまん、本当は俺が鍛錬初日に言えば良かった。だが俺は、最初から訓練が終わってこの場所を離れることになっても、お前との鍛錬を続けるつもりだった。だから、登録した」
「そうだったのですか? てっきり、駐屯地から道のりをショートカットするために登録したものかと」
「まぁ、それもあるが……」
乱れた髪から手を離したメストが小さく溜息をつくと、緩んだ表情を引き締めるとカミルに視線を戻す。
「まだ俺は、あなたのような回避技を身につけていない。だから、俺が王都に戻ってもあなたとの鍛錬を通して回避技を教えて欲しい」
「それでしたら、気が向いた時にこちらへ来ていただければいつでも教えますが」
「あぁ、それでも良かった。だが……」
そう言葉を区切ると、この1ヶ月の鍛錬のことを思い返す。
(1ヶ月間、俺は彼から回避技の基礎を学んだ。相手の動きを観察する時のポイント、相手の動きに合わせて体を動かす時にタイミング、得物を使っての攻撃の受け止め方に受け流し方、そして相手の攻撃を利用した反撃の仕方)
メストがカミルから学んだ回避技は、正しく騎士学校に通っていた時も学んでいたそれとは全く異なっていた。
『ほら、そこはカウンターが来ることを考慮して、避けたのと同時に剣で防ぐ構えをしないと』
『またそうやって正面から受け止めて。そんなことをしていたら、敵にすぐに隙をつかれますよ。こんな感じで!』
『うっ!』
カミルからの容赦ない指導を思い出し、メストは思わず笑みを零す。
(正直、得物を使った回避技まだまだ身についていない。それに、決闘の時を除いて彼に勝ったことは一度も無かった。当たり前だ。彼は長い間、1人で回避技を磨き続けていたのだから)
たかが1ヶ月足らずのメストがカミルに回避技で勝てるわけがない。
そう分かっていても、メストはカミルとの鍛錬のお陰で、前より相手の動きに対して敏感になったし、相手の動きに合わせての体の動かし方も洗練されたと実感する。
(何よりも、1番は……)
「あ、あの……?」
無表情のまま首を傾げるカミルに、優しく微笑んだメストは鍛錬を続けたい一番の理由を口にする。
「俺が、俺自身があなたの鍛錬の時間が楽しくて、毎日じゃないと嫌だと思ったんだ。だから、あなたが嫌じゃなければ、これからも毎朝、あなたとの鍛錬を続けてさせて欲しい」
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