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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第81話 鍛錬大好きメスト君
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――時は、メストが執務室でシトリンに『カミルとの鍛錬を続ける』と言った直後に進む。
「ただいま戻りました……って、どうされましたか? メスト隊長にシトリン副隊長」
カトレアを宮廷魔法師団本部まで送り届けたラピスは、訓練の報告書を仕上げようと騎士団本部内にある第四部隊の執務室に入る。
すると、啞然とした顔でメストを見つめているシトリンと、そんなシトリンに目もくれず真面目顔で書類に目を通しているメストが目に飛び込んできた。
(シトリン副隊長が啞然した顔をするなんてどうしたんだろう?)
普段は温和な笑みを浮かべて飄々としている上司の珍しい表情に、ラピスは思わず首を傾げていると、部下の声に気づいたシトリンがゆっくりとラピスの方を見た。
「あれっ? ラピス戻ったんだ」
「はい、報告書を仕上げたくて戻りました」
「そう。てっきり、カトレア嬢とデートに行くかと思った」
「何を仰っているのですか。自分は休みでも、あちらは仕事ですから無理に決まっているではありませんか」
呆れ顔のラピスを見て、シトリンは何かを思いついてニヤリと笑みを浮かべる。
「ラピス。そんなこと言って婚約者を蔑ろにしていたら愛想尽かされるよ~?」
「でしたら、ご心配なく。自分は、婚約者のことを一番に尊重していますので、蔑ろにする気など一切ございません」
「あっそ」
(万が一にでも婚約者を蔑ろにしていたら、泣きそうになっている婚約者をわざわざ追いかけるなんてしない)
涼しい顔をしながらも僅かに冷気を纏っているラピスからきっぱり言い切られ、シトリンは酷くつまらなそうな顔で頬杖をつく。
そんな彼の隣の席に座ったラピスは、意趣返しとばかりにシトリンに同じ質問をぶつける。
「それを言うなら、副隊長こそ婚約者のところに行かれては? 私以上にお休みが無いと聞いていますが」
「あぁ、僕なら今夜、婚約者と食事に行く約束をしているよ。せっかくの休みだしね」
「さすが副隊長。抜け目がありませんね」
「ありがとう。ラピスも見習うといいよ」
「そうですね。参考にさせていただきます」
(隊長は……って、さっきの様子だと誘っていないだろうな)
婚約者を大事にしているシトリンの予定を聞き、真剣な表情で書類と格闘しているメストを一瞥し、ラピスが思わず苦笑すると執務室に入ってきた時の光景が頭を過った。
「そう言えば、お先程まで何を話されていたのですか? 副隊長が珍しい表情をされていましたが」
「あぁ、それがね……」
頬杖を止めたシトリンは、先程までメストと話していたことをラピスに話した。
◇◇◇◇◇
「なるほど。私もあの場にいましたから、隊長が例の平民……カミルさんと鍛錬をされる約束をされていたのは存じ上げていました。けどまさか、王都に戻った後でもその鍛錬を続けるとは」
シトリンから話を聞いたラピスが驚いた表情で感想を口にすると、それを聞いていたメストが不機嫌そうに顔を上げる。
「何だ、俺が悪いって言うのか?」
「い、いえ! そういうことではない、のですが……」
(これ、副団長や団長の耳に届いたらどうなるのだろうか?)
模範的騎士である副団長とやることなすこと豪快な団長の顔が思い浮かび、ラピスが大きく溜息をつくと、呆れ顔のシトリンがメストの方に目を向けた。
「でも、カミル君だってメストとの鍛錬は『騎士団が駐屯地に滞在している間だけ』って思ったんじゃない?」
「そうですよ。俺が彼の立場だったら絶対にそう思います」
((何せ、ここからリアスタ村まではそれなりに距離があるから))
シトリンの意見にラピスが同調すると、小さく溜息をついたメストが持っていた書類を机の上に静かに置いて少しだけ顔を背けた。
「まぁ、それに関しては、俺が初日に話さなかったばかりにカミルも同じように思っていたらしい」
「初日に話さなかったんだね」
(普通って最初に説明するもんだよね)
シトリンから僅かばかり冷たい視線を向けられ、居た堪れない気持ちになったメストは小さく咳払いすると話を戻した。
「だが、俺は最初からそのつもりだった。だから、転移の魔道具にあの場所も入れた」
「なるほどね~~」
(つまり、カミル君と決闘を行う時点で、メストの中では彼との関係は訓練期間の間だけのものにしたくなかったということだね。まぁ、決闘で勝ったから良かったものの、負けていたらどうなったことやら)
幼馴染であり相棒であるメストの思惑を聞いて、言葉を失うラピスを他所に、呆れたシトリンが再び頬杖をついてメストに問い質す。
「それで、彼にはそのことを話したんだよね?」
「あぁ、訓練最終日に話した」
「訓練最終日……」
(1ヶ月もあったのに、話したのが最終日って……)
「そしたら、なんて?」
「最初は驚いていたが、最終的には了承してくれた」
「「はぁ……」」
(カミル君(さん)、うちの隊長が本当にごめん(なさい))
騎士としては有能なメストのとんでもないやらかしに、シトリンとラピスは揃って溜息をつくと心の内でカミルに謝った。
「ただいま戻りました……って、どうされましたか? メスト隊長にシトリン副隊長」
カトレアを宮廷魔法師団本部まで送り届けたラピスは、訓練の報告書を仕上げようと騎士団本部内にある第四部隊の執務室に入る。
すると、啞然とした顔でメストを見つめているシトリンと、そんなシトリンに目もくれず真面目顔で書類に目を通しているメストが目に飛び込んできた。
(シトリン副隊長が啞然した顔をするなんてどうしたんだろう?)
普段は温和な笑みを浮かべて飄々としている上司の珍しい表情に、ラピスは思わず首を傾げていると、部下の声に気づいたシトリンがゆっくりとラピスの方を見た。
「あれっ? ラピス戻ったんだ」
「はい、報告書を仕上げたくて戻りました」
「そう。てっきり、カトレア嬢とデートに行くかと思った」
「何を仰っているのですか。自分は休みでも、あちらは仕事ですから無理に決まっているではありませんか」
呆れ顔のラピスを見て、シトリンは何かを思いついてニヤリと笑みを浮かべる。
「ラピス。そんなこと言って婚約者を蔑ろにしていたら愛想尽かされるよ~?」
「でしたら、ご心配なく。自分は、婚約者のことを一番に尊重していますので、蔑ろにする気など一切ございません」
「あっそ」
(万が一にでも婚約者を蔑ろにしていたら、泣きそうになっている婚約者をわざわざ追いかけるなんてしない)
涼しい顔をしながらも僅かに冷気を纏っているラピスからきっぱり言い切られ、シトリンは酷くつまらなそうな顔で頬杖をつく。
そんな彼の隣の席に座ったラピスは、意趣返しとばかりにシトリンに同じ質問をぶつける。
「それを言うなら、副隊長こそ婚約者のところに行かれては? 私以上にお休みが無いと聞いていますが」
「あぁ、僕なら今夜、婚約者と食事に行く約束をしているよ。せっかくの休みだしね」
「さすが副隊長。抜け目がありませんね」
「ありがとう。ラピスも見習うといいよ」
「そうですね。参考にさせていただきます」
(隊長は……って、さっきの様子だと誘っていないだろうな)
婚約者を大事にしているシトリンの予定を聞き、真剣な表情で書類と格闘しているメストを一瞥し、ラピスが思わず苦笑すると執務室に入ってきた時の光景が頭を過った。
「そう言えば、お先程まで何を話されていたのですか? 副隊長が珍しい表情をされていましたが」
「あぁ、それがね……」
頬杖を止めたシトリンは、先程までメストと話していたことをラピスに話した。
◇◇◇◇◇
「なるほど。私もあの場にいましたから、隊長が例の平民……カミルさんと鍛錬をされる約束をされていたのは存じ上げていました。けどまさか、王都に戻った後でもその鍛錬を続けるとは」
シトリンから話を聞いたラピスが驚いた表情で感想を口にすると、それを聞いていたメストが不機嫌そうに顔を上げる。
「何だ、俺が悪いって言うのか?」
「い、いえ! そういうことではない、のですが……」
(これ、副団長や団長の耳に届いたらどうなるのだろうか?)
模範的騎士である副団長とやることなすこと豪快な団長の顔が思い浮かび、ラピスが大きく溜息をつくと、呆れ顔のシトリンがメストの方に目を向けた。
「でも、カミル君だってメストとの鍛錬は『騎士団が駐屯地に滞在している間だけ』って思ったんじゃない?」
「そうですよ。俺が彼の立場だったら絶対にそう思います」
((何せ、ここからリアスタ村まではそれなりに距離があるから))
シトリンの意見にラピスが同調すると、小さく溜息をついたメストが持っていた書類を机の上に静かに置いて少しだけ顔を背けた。
「まぁ、それに関しては、俺が初日に話さなかったばかりにカミルも同じように思っていたらしい」
「初日に話さなかったんだね」
(普通って最初に説明するもんだよね)
シトリンから僅かばかり冷たい視線を向けられ、居た堪れない気持ちになったメストは小さく咳払いすると話を戻した。
「だが、俺は最初からそのつもりだった。だから、転移の魔道具にあの場所も入れた」
「なるほどね~~」
(つまり、カミル君と決闘を行う時点で、メストの中では彼との関係は訓練期間の間だけのものにしたくなかったということだね。まぁ、決闘で勝ったから良かったものの、負けていたらどうなったことやら)
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「それで、彼にはそのことを話したんだよね?」
「あぁ、訓練最終日に話した」
「訓練最終日……」
(1ヶ月もあったのに、話したのが最終日って……)
「そしたら、なんて?」
「最初は驚いていたが、最終的には了承してくれた」
「「はぁ……」」
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