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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第121話 主君に手をあげる
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腹心に見送られたフェビルは、指定された時間通りに謁見の間に来た。
フェビルの来訪に気づいた門番役の騎士が、フェビルに敬礼をすると扉の向こうに声をかける。
「陛下。近衛騎士団団長、フェビル・シュタール殿が来られました」
「うむ、入れ」
扉の向こうから聞こえてきた声に、扉の前にいたフェビルが思わず小さく舌打ちをする。
「ったく、どうして陛下じゃなくてお前が返事するんだよ」
(お前はただの宰相だろうが)
「フェビル団長?」
「あぁ、すまん。開けてくれ」
「ハッ!」
苛立つ気持ちを抑えようと小さく息を吐いたフェビルは、いつになく真剣な表情で門番役の部下に指示を出す。
そして、これから起こるであろう厄介事に内心げんなりしつつ、フェビルはゆっくり開けられた扉の向こう側へ足を踏み入れる。
◇◇◇◇◇
謁見の間に入ったフェビルは、金と赤を中心に装飾された謁見の間に思わず眉を顰める。
(半年前に来た時よりも更に下品な内装になっているな。こりゃあ、他国から重鎮を呼ぶことは出来ないな。我が国の恥になること間違いなしだから)
「でもまぁ、それと同じくらい気になることがあるが」
誰にも聞こえない声で呟いたフェビルは、謁見の間に集った大勢の貴族達に目を向ける。
(俺の知っている陛下ならば、謁見の間に当事者以外の人間を入れることをしない。だとしたら、これは間違いなく……)
下卑た笑みを浮かべながら不躾な視線をぶつけてくる貴族達に、フェビルは内心うんざりしつつも陛下の御前で足を止め、臣下らしくその場で片膝をついて胸に手をあてると深々と頭を下げる。
「ペトロート王国近衛騎士団長、フェビル・シュタール。ただいま、国王陛下の求めに応じて馳せ参じました」
フェビルのバリトンボイスが謁見の間に響いた時、陛下の隣で人を見下したような目でフェビルを見ていたノルベルトは軽く鼻を鳴らす。
「フン! 陛下の求めに応じるのは、国に尽くす者として当然のことだ。とは言え、今回呼び出したのは私であるが」
「…………」
(こいつ、横柄な態度に拍車がかかっているな。仮にも、陛下の御前だぞ。なのに、そんな態度が許されると思っているのか?)
ノルベルトの厭味ったらしい言葉に、謁見の間に集まった貴族達の口から同調するような嘲笑が漏れ出る。
それを聞いたフェビルが怒りを抑えるように小さく唇を噛んだ時、目の前にからこの国の為政者らしい堂々とした声が謁見の間に響き渡る。
「表を上げよ。フェビル・シュタール」
「ハッ!」
(やはり、この国の主はいつになく威厳溢れて……)
陛下の声を聞いて安堵したフェビルが顔を上げようとしたその時、渇いた音がフェビルの前から聞こえてきた。
「貴様、何をしているんだ!!」
音に驚いて慌てて顔を上げたフェビルが目にしたのは、ノルベルトが陛下の頭を叩いた光景だった。
◇◇◇◇◇
『臣下が主君に対して手を上げる』という信じられない光景を目の当たりにし、激高したフェビルはすぐさま立ち上がると無礼を承知で玉座の間に足を踏み入れ、陛下を背に庇いながら鬼の形相でノルベルトを睨みつける。
すると、ノルベルトは嘲笑うような笑みを浮かべる。
「『何を』って、陛下が私の合図も聞かずに言葉を発しただから、それを臣下として諌めただけだ」
「『合図』だと?」
益々険しい表情をするフェビルに、得意げな笑みを浮かべたノルベルトは両腕を大きく広げる。
「そうだ。この場を取り仕切るのは宰相の勤め。故に、それを乱されてしまっては困る。それは陛下であろうと同じ。だから、仕方なく陛下を諌めただけのこと」
「俺と同じ国王の一臣下でしかないお前が、陛下を諌める権利があるというのか?」
(そもそも、どうして陛下がお前の言うことを聞かなきゃならんのだ!)
こみ上げてくる怒りを抑えようとフェビルが強く拳を握ると、笑みを深めたノルベルトがゆっくりと首を縦に振る。
「あるとも。なにせ、私はこの国の宰相。国王陛下の次に偉い立場。そして、上の立場の人間が行った過ちを正すのもまた臣下の勤め。何か間違っていることを言っているか?」
「貴様!」
(確かに、上の立場の人間が行った過ちを正すのもまた臣下の勤めだ。だが、主君に手を上げるのは明らかに間違っている!)
『この手紙が届く頃には、私は君の知っている私では無くなっていることを』
(どうして、こいつがこの国の宰相なんだ! こいつのせいで俺は……!)
『悪いのは主君であり、自分はそれを諫めただけ』と自分が行ったことに対して一切悪びれもしないノルベルトの言葉と態度に、堪忍袋の緒が切れたフェビルは怒りを任せて拳を振り上げようとした。
その時、フェビルの背後からフェビルを諌める声が聞えてきた。
「フェビル・シュタール、私は大丈夫だ。だから、玉座の間から降りなさい」
「しかし、陛下……!」
「いいから降りなさい」
「くっ!!」
(陛下、あなたって方は……!)
背後にいる主君の虚ろな碧眼の中に少しだけ宿った強い意志を見たフェビルは、悔しそうに顔を歪めるとゆっくりと頭を下げて玉座の間から降りる。
そして、陛下の御前に戻ると片膝をつくと深々と頭を下げる。
「陛下。数々の無礼、心よりお詫び申し上げます。処罰はいかなるものでもお受け致します」
「よい。『我を守りたい』という貴殿の騎士としての心意気だけで十分……」
「いいえ、処罰はきちんと受けてもらう」
フェビルと陛下の会話に土足で入ってきたノルベルトは、フェビルに対して非難の目を向ける。
「フェビル・シュタール。貴様には今回の特別訓練について、きちんと処罰を受けてもらう」
フェビルの来訪に気づいた門番役の騎士が、フェビルに敬礼をすると扉の向こうに声をかける。
「陛下。近衛騎士団団長、フェビル・シュタール殿が来られました」
「うむ、入れ」
扉の向こうから聞こえてきた声に、扉の前にいたフェビルが思わず小さく舌打ちをする。
「ったく、どうして陛下じゃなくてお前が返事するんだよ」
(お前はただの宰相だろうが)
「フェビル団長?」
「あぁ、すまん。開けてくれ」
「ハッ!」
苛立つ気持ちを抑えようと小さく息を吐いたフェビルは、いつになく真剣な表情で門番役の部下に指示を出す。
そして、これから起こるであろう厄介事に内心げんなりしつつ、フェビルはゆっくり開けられた扉の向こう側へ足を踏み入れる。
◇◇◇◇◇
謁見の間に入ったフェビルは、金と赤を中心に装飾された謁見の間に思わず眉を顰める。
(半年前に来た時よりも更に下品な内装になっているな。こりゃあ、他国から重鎮を呼ぶことは出来ないな。我が国の恥になること間違いなしだから)
「でもまぁ、それと同じくらい気になることがあるが」
誰にも聞こえない声で呟いたフェビルは、謁見の間に集った大勢の貴族達に目を向ける。
(俺の知っている陛下ならば、謁見の間に当事者以外の人間を入れることをしない。だとしたら、これは間違いなく……)
下卑た笑みを浮かべながら不躾な視線をぶつけてくる貴族達に、フェビルは内心うんざりしつつも陛下の御前で足を止め、臣下らしくその場で片膝をついて胸に手をあてると深々と頭を下げる。
「ペトロート王国近衛騎士団長、フェビル・シュタール。ただいま、国王陛下の求めに応じて馳せ参じました」
フェビルのバリトンボイスが謁見の間に響いた時、陛下の隣で人を見下したような目でフェビルを見ていたノルベルトは軽く鼻を鳴らす。
「フン! 陛下の求めに応じるのは、国に尽くす者として当然のことだ。とは言え、今回呼び出したのは私であるが」
「…………」
(こいつ、横柄な態度に拍車がかかっているな。仮にも、陛下の御前だぞ。なのに、そんな態度が許されると思っているのか?)
ノルベルトの厭味ったらしい言葉に、謁見の間に集まった貴族達の口から同調するような嘲笑が漏れ出る。
それを聞いたフェビルが怒りを抑えるように小さく唇を噛んだ時、目の前にからこの国の為政者らしい堂々とした声が謁見の間に響き渡る。
「表を上げよ。フェビル・シュタール」
「ハッ!」
(やはり、この国の主はいつになく威厳溢れて……)
陛下の声を聞いて安堵したフェビルが顔を上げようとしたその時、渇いた音がフェビルの前から聞こえてきた。
「貴様、何をしているんだ!!」
音に驚いて慌てて顔を上げたフェビルが目にしたのは、ノルベルトが陛下の頭を叩いた光景だった。
◇◇◇◇◇
『臣下が主君に対して手を上げる』という信じられない光景を目の当たりにし、激高したフェビルはすぐさま立ち上がると無礼を承知で玉座の間に足を踏み入れ、陛下を背に庇いながら鬼の形相でノルベルトを睨みつける。
すると、ノルベルトは嘲笑うような笑みを浮かべる。
「『何を』って、陛下が私の合図も聞かずに言葉を発しただから、それを臣下として諌めただけだ」
「『合図』だと?」
益々険しい表情をするフェビルに、得意げな笑みを浮かべたノルベルトは両腕を大きく広げる。
「そうだ。この場を取り仕切るのは宰相の勤め。故に、それを乱されてしまっては困る。それは陛下であろうと同じ。だから、仕方なく陛下を諌めただけのこと」
「俺と同じ国王の一臣下でしかないお前が、陛下を諌める権利があるというのか?」
(そもそも、どうして陛下がお前の言うことを聞かなきゃならんのだ!)
こみ上げてくる怒りを抑えようとフェビルが強く拳を握ると、笑みを深めたノルベルトがゆっくりと首を縦に振る。
「あるとも。なにせ、私はこの国の宰相。国王陛下の次に偉い立場。そして、上の立場の人間が行った過ちを正すのもまた臣下の勤め。何か間違っていることを言っているか?」
「貴様!」
(確かに、上の立場の人間が行った過ちを正すのもまた臣下の勤めだ。だが、主君に手を上げるのは明らかに間違っている!)
『この手紙が届く頃には、私は君の知っている私では無くなっていることを』
(どうして、こいつがこの国の宰相なんだ! こいつのせいで俺は……!)
『悪いのは主君であり、自分はそれを諫めただけ』と自分が行ったことに対して一切悪びれもしないノルベルトの言葉と態度に、堪忍袋の緒が切れたフェビルは怒りを任せて拳を振り上げようとした。
その時、フェビルの背後からフェビルを諌める声が聞えてきた。
「フェビル・シュタール、私は大丈夫だ。だから、玉座の間から降りなさい」
「しかし、陛下……!」
「いいから降りなさい」
「くっ!!」
(陛下、あなたって方は……!)
背後にいる主君の虚ろな碧眼の中に少しだけ宿った強い意志を見たフェビルは、悔しそうに顔を歪めるとゆっくりと頭を下げて玉座の間から降りる。
そして、陛下の御前に戻ると片膝をつくと深々と頭を下げる。
「陛下。数々の無礼、心よりお詫び申し上げます。処罰はいかなるものでもお受け致します」
「よい。『我を守りたい』という貴殿の騎士としての心意気だけで十分……」
「いいえ、処罰はきちんと受けてもらう」
フェビルと陛下の会話に土足で入ってきたノルベルトは、フェビルに対して非難の目を向ける。
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