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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第120話 呼び出しに応じる
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『ノルベルトの使者』を名乗る成金貴族男が逃げるように部屋を後にした直後、2人の部下の怒りが爆発した。
「何なんですかあいつは!? 団長のことを完全に見下していましたよね!?」
「えぇ、それもかなり頭が悪いようで、『辺境伯』という爵位が『伯爵』より高いことも分かっていませんでした。ということは、これは完全に団長のことを見下しているということですね」
顔を真っ赤にして憤慨している部下と、静かに殺気を放ちながら怒りを露にしているグレア。
そんな2人を傍で見ていたフェビルは、ぬるくなったコーヒーを一気飲みすると大袈裟に溜息をつく。
「この際、使いとして来た奴が、実は貴族教育の行き届いていないバカだったってことはどうでもいい。あれが、宰相閣下にとって使い捨ての駒でしかないことは、奴と話していて分かったからな」
「「団長……」」
(きっと底意地の悪い奴のことだ、俺を呼び出すついでに嫌がらせをしたかったのだろう。とはいえ、やけに幼稚な嫌がらせだったが)
心配そうな目を向ける2人の部下を見て、深く溜息をついたフェビルは、テーブルに置かれた手紙を手に取り、もう一度目を通すとソファーから立ち上がる。
そして、己の右腕である副団長に視線を向けて指示を飛ばす。
「グレア」
「何でしょうか?」
「俺が謁見の間に呼ばれた理由を探ってきてくれ。この手紙には『規定の時間に謁見の間に来るよう』としか書かれていない。恐らく、さっきのバカも俺が呼ばれた理由を知らないだろう」
「かしこまりました」
「もし何だったら、そいつを使って探らせてもいいぞ」
フェビルから『そいつ』呼ばわりされた部下が慌てて姿勢を正すと、グレアは小さく首を横に振る。
「いえ、それには及びません」
「1人で良いのか?」
「えぇ、この程度のこと、1人でこなせなければあなたの右腕は務まりませんから」
「そうか。なら、頼んだ」
「ハッ!」
(本当、頼りになる右腕だ)
綺麗に敬礼をしたグレアが足早に部屋を出ると、彼の背中を見送ったフェビルは手紙を届けてくれた部下に礼と伝える。
「わざわざ手紙を届けてくれたこと、感謝する」
「いえ、これも任務の一環ですから」
ニコリと笑う部下に、フェビルはフッと笑みを零すと指示を飛ばす。
「それなら、任務へ戻る前にあのバカがちゃんと帰ったか確認してきてくれ。大方、迷子になって彷徨っている可能性があるからな」
「ハッ!」
機敏な動きで敬礼をして部屋を後にした部下を見届けたフェビルは、執務室奥のクローゼットに向かう。
「さて、グレアが理由を探っている間、俺は礼服に着替えながら謁見の間で話すマシな言い訳でも考えておくか」
(ついこの間、防衛費について謁見の間に赴いた時、宰相閣下に『謁見の間に鎧姿や騎士団用の制服は相応しくないから、次から謁見の間に際は貴族らしい正装で来るように』と言われたからな)
「と言っても、あいつが宰相になってからなんだが」
小さく苦笑したフェビルは、普段から着ている紺色と金色の襟詰め騎士団用制服から貴族らしい華やかな服に着替えようと、クローゼットの扉を開ける。
◇◇◇◇◇
コンコンコン
「入れ」
「失礼致します。情報収集が終わりましたのでご報告に上がりました」
「早いな。丁度着替えを終えたばかりだぞ」
「そうでしたか。まぁ、この程度の情報収集、たいして時間はかかりませんでしたから」
執務室に来たグレアが、涼しい顔で眼鏡を軽く上げると、驚いて目を見開いていたフェビルが小さく笑みを零す。
「そうか。それで、呼び出された理由はなんだ?」
「やはり、特別訓練についてでした。そして、今回も彼の息のかかった貴族達が大勢集まっているとのことです」
「やっぱりか」
(ノルベルトに横槍を入れられたあの日から、俺たちはこれ以上ノルベルトから横槍を入れられないよう、あいつの息のかかった奴らに『特別任務』という名目で王都の見回りをさせて特別訓練を免除させたから、てっきりそれで納得してくれたものだと思ったのだが)
「どうやら、この国の宰相で在らせられる彼は、特別訓練に反対だったみたいだな」
「そのようですね。それで、私が情報収集をしている間、マシな言い訳は思いついたのですか?」
「あぁ、と言っても、あちらが聞いてくれるどうかは知らんが」
(大方、聞いてくれるとは思わないが……でもまぁ、こいつの報告を聞いて、これで少し覚悟が出来た)
頼もしい部下からの報告を聞いて、気合を入れ直したフェビル。
すると、傍で控えているグレアが懐から赤の小箱と青の小箱を取り出す。
「それと、こちらをお持ちしました。1つは記録用に。もう1つは万が一の護身用としてお使いください」
「おぉ、ありがとう。助かる。と言っても、護身用の方は使う機会が無いことを願いたいが」
「そうですね」
小さく苦笑したグレアに、フェビルは青色の小さな箱……記録魔法が付与された魔道具に魔力を流すと赤色の箱と一緒に懐に入れ、腹心に労をねぎらう言葉をかけると背を向ける。
「報告ご苦労。それじゃあ、行ってくる」
「はい、お気をつけて」
恭しく頭を下げたグレアに見送られ、フェビルは近衛騎士団長らしい毅然とした態度で謁見の間に向かう。
「何なんですかあいつは!? 団長のことを完全に見下していましたよね!?」
「えぇ、それもかなり頭が悪いようで、『辺境伯』という爵位が『伯爵』より高いことも分かっていませんでした。ということは、これは完全に団長のことを見下しているということですね」
顔を真っ赤にして憤慨している部下と、静かに殺気を放ちながら怒りを露にしているグレア。
そんな2人を傍で見ていたフェビルは、ぬるくなったコーヒーを一気飲みすると大袈裟に溜息をつく。
「この際、使いとして来た奴が、実は貴族教育の行き届いていないバカだったってことはどうでもいい。あれが、宰相閣下にとって使い捨ての駒でしかないことは、奴と話していて分かったからな」
「「団長……」」
(きっと底意地の悪い奴のことだ、俺を呼び出すついでに嫌がらせをしたかったのだろう。とはいえ、やけに幼稚な嫌がらせだったが)
心配そうな目を向ける2人の部下を見て、深く溜息をついたフェビルは、テーブルに置かれた手紙を手に取り、もう一度目を通すとソファーから立ち上がる。
そして、己の右腕である副団長に視線を向けて指示を飛ばす。
「グレア」
「何でしょうか?」
「俺が謁見の間に呼ばれた理由を探ってきてくれ。この手紙には『規定の時間に謁見の間に来るよう』としか書かれていない。恐らく、さっきのバカも俺が呼ばれた理由を知らないだろう」
「かしこまりました」
「もし何だったら、そいつを使って探らせてもいいぞ」
フェビルから『そいつ』呼ばわりされた部下が慌てて姿勢を正すと、グレアは小さく首を横に振る。
「いえ、それには及びません」
「1人で良いのか?」
「えぇ、この程度のこと、1人でこなせなければあなたの右腕は務まりませんから」
「そうか。なら、頼んだ」
「ハッ!」
(本当、頼りになる右腕だ)
綺麗に敬礼をしたグレアが足早に部屋を出ると、彼の背中を見送ったフェビルは手紙を届けてくれた部下に礼と伝える。
「わざわざ手紙を届けてくれたこと、感謝する」
「いえ、これも任務の一環ですから」
ニコリと笑う部下に、フェビルはフッと笑みを零すと指示を飛ばす。
「それなら、任務へ戻る前にあのバカがちゃんと帰ったか確認してきてくれ。大方、迷子になって彷徨っている可能性があるからな」
「ハッ!」
機敏な動きで敬礼をして部屋を後にした部下を見届けたフェビルは、執務室奥のクローゼットに向かう。
「さて、グレアが理由を探っている間、俺は礼服に着替えながら謁見の間で話すマシな言い訳でも考えておくか」
(ついこの間、防衛費について謁見の間に赴いた時、宰相閣下に『謁見の間に鎧姿や騎士団用の制服は相応しくないから、次から謁見の間に際は貴族らしい正装で来るように』と言われたからな)
「と言っても、あいつが宰相になってからなんだが」
小さく苦笑したフェビルは、普段から着ている紺色と金色の襟詰め騎士団用制服から貴族らしい華やかな服に着替えようと、クローゼットの扉を開ける。
◇◇◇◇◇
コンコンコン
「入れ」
「失礼致します。情報収集が終わりましたのでご報告に上がりました」
「早いな。丁度着替えを終えたばかりだぞ」
「そうでしたか。まぁ、この程度の情報収集、たいして時間はかかりませんでしたから」
執務室に来たグレアが、涼しい顔で眼鏡を軽く上げると、驚いて目を見開いていたフェビルが小さく笑みを零す。
「そうか。それで、呼び出された理由はなんだ?」
「やはり、特別訓練についてでした。そして、今回も彼の息のかかった貴族達が大勢集まっているとのことです」
「やっぱりか」
(ノルベルトに横槍を入れられたあの日から、俺たちはこれ以上ノルベルトから横槍を入れられないよう、あいつの息のかかった奴らに『特別任務』という名目で王都の見回りをさせて特別訓練を免除させたから、てっきりそれで納得してくれたものだと思ったのだが)
「どうやら、この国の宰相で在らせられる彼は、特別訓練に反対だったみたいだな」
「そのようですね。それで、私が情報収集をしている間、マシな言い訳は思いついたのですか?」
「あぁ、と言っても、あちらが聞いてくれるどうかは知らんが」
(大方、聞いてくれるとは思わないが……でもまぁ、こいつの報告を聞いて、これで少し覚悟が出来た)
頼もしい部下からの報告を聞いて、気合を入れ直したフェビル。
すると、傍で控えているグレアが懐から赤の小箱と青の小箱を取り出す。
「それと、こちらをお持ちしました。1つは記録用に。もう1つは万が一の護身用としてお使いください」
「おぉ、ありがとう。助かる。と言っても、護身用の方は使う機会が無いことを願いたいが」
「そうですね」
小さく苦笑したグレアに、フェビルは青色の小さな箱……記録魔法が付与された魔道具に魔力を流すと赤色の箱と一緒に懐に入れ、腹心に労をねぎらう言葉をかけると背を向ける。
「報告ご苦労。それじゃあ、行ってくる」
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