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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第137話 疎遠になる婚約者
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「あの、聞いても良いですか?」
「あぁ、何だ?」
(本当は聞きたくなんてない。けれど、一応聞いておかないと)
胸からこみ上げてくるどす黒い感情を抑えつつ、カミルは『珍しくカミルから聞いてきた!』と目を輝かせているメストに問い質す。
「このところ、私の家へよく泊りに来ていますけど、婚約者様のことは本当に大丈夫なのですか?」
「えっ?」
カミルから唐突に婚約者のことを聞かれ、ホットコーヒーで一息ついていたメストの表情で固まる。
それを見たカミルは、持っていたマグカップを置くと深々と頭を下げる。
「すみません、平民である私がお貴族様の事情に口を出していいことではありませんでした」
(そもそも、私がメスト様の事情に口を出していい資格はない。だって、今の私は……)
マグカップの中に映る傷ついた顔の自分と目がかち合ったカミルは静かに目を伏せる。
そんなカミルを見て、ようやくカミルが聞いてきたこと理解したメストは、マグカップを置くと疲れたように深くため息をつく。
「婚約者、か……」
「っ」
(やはり、私が聞いていいことでは無かったのね)
「あの、無理して話さなくても……」
「いや、ここ半年、カミルには色々と世話になっている。だから、カミルには俺と婚約者について話そう」
「えっ?」
メストの口から出た答えに、思わず目を見開いたカミルが恐る恐る顔を上げると、いつになく真剣な表情のメストと目があった。
「よろしいのですか? 平民の私に婚約者の話しても?」
「良いんだ。むしろ、知っていて欲しい。カミルも、俺が泊る度に心のどこかで俺の婚約者のことを気にしていたのだろ?」
「いえ、私は別に気にしていたわけでは……」
「そうか? だとしたら、今になってどうして聞いてきた?」
「そ、それは……」
真剣な表情で問い質すメストに、僅かに顔を歪ませたカミルは再び彼から目を逸らす。
(これは、完全にメスト様も気づいている。口では『気にしていない』と言いつつ、本当は心のどこかで婚約者のことを気にしていたことを)
本心を見抜かれて不本意そうな顔をするカミルに、メストは突然申し訳なさそうな顔でカミルに謝る。
「すまない。本当は、俺がこの家へ泊まる度に、ちゃんとカミルに話しておくべきだった。そうすれば、カミルに余計な心配をかけずに済んだ。本当にすまなかった」
深々と頭を下げるメストに、カミルは気遣うような素振りをする。
「いえ、本当に特に気にしていませんから。そもそも、平民の私に話すことでもないでしょうから」
(違う。本当は聞きたくなかった。あなたと婚約者のことなんて聞きたくなかった。だけど、毎週のように私のところに来ているあなたを見ているうちに、『いつか、婚約者について聞かないといけない』と思ってしまったの)
メストとの時間は楽しいし、本当は婚約者のところになんて行って欲しくない。
けれど、自分のせいで婚約者と関係を悪くしたら元も子もない。
それに、誠実なメストが婚約者に対して不誠実なことをするとは一切思っていないからこそ、婚約者との関係が尚更気になってしまう。
そんな複雑な心境をカミルが抱いているなどと思いも寄らず、大きく目を見開いたメストが頭を上げるとカミルに微笑みかける。
「ありがとう。俺は心優しいカミルが俺の師匠であることを誇りに思う」
「っ!?」
(いきなり何を言っているの!?)
突然の誉め言葉に、思わず頬を赤らめるカミル。
「だからこそ、聞いて欲しい。そんなカミルを困らせた罪滅ぼしとしてことを」
笑みを潜めたメストは、カミルの家へ泊りに来てからのことを話し始める。
◇◇◇◇◇
「……なるほど。つまり、あなた様から婚約者様を誘った場合、もれなく婚約者様とそのお父君の反感を買ってしまうから、あなた様から婚約者様を誘うことはしなくなったと。その結果、ここ半年の間、あなた様は婚約者様からの誘いがないので婚約者様とデートをすることがなく、お休みの度に私のところに来ていたというわけですね?」
メストから一通り話を聞いたカミルは、少しだけ難しい顔をしながらメストに問い質す。
すると、心底疲れたような顔でホットコーヒーを飲んだメストが、マグカップを置くと深く頷く。
「そうなんだ。一応、休みの日が分かったら、その都度ダリア……俺の婚約者に手紙を送っている。けれど……」
「ここ半年は彼女からのデートの誘いが一切ないと?」
「そういうことだ?」
「確認ですけど、半年前まではあなた様から何度か誘っていたのですよね?」
「もちろんだ。だが、さっきも言ったが、誘う度に反感を買ってしまうから止めた」
「そんな……」
苦笑いで話すメストに、カミルは言葉を失う。
(メスト様のことだから、あの自由奔放な婚約者にも誠実に接しているのでしょう。それにしても……)
「あの令嬢、一体何を考えているのかしら?」
メストが王都に来て間もない頃は、メストに苦言を呈されても、凛々しい顔立ちの彼の隣にいる優越感に浸っていたダリアは、メストとのデートを心底楽しんでいた。
けれど、メストが王都に来て半年が過ぎた頃、自由奔放なダリアは婚約者であるメストと一緒にいる時間を苦痛に感じた。
そのため、メストからの誘いを断り続けていたり、気まぐれで応じた時はずっと不機嫌なままメストとの時間を過ごしたりしていたのだ。
もちろん、そんなことを当事者であるメストや第三者であるカミルが知る由もない。
「あぁ、何だ?」
(本当は聞きたくなんてない。けれど、一応聞いておかないと)
胸からこみ上げてくるどす黒い感情を抑えつつ、カミルは『珍しくカミルから聞いてきた!』と目を輝かせているメストに問い質す。
「このところ、私の家へよく泊りに来ていますけど、婚約者様のことは本当に大丈夫なのですか?」
「えっ?」
カミルから唐突に婚約者のことを聞かれ、ホットコーヒーで一息ついていたメストの表情で固まる。
それを見たカミルは、持っていたマグカップを置くと深々と頭を下げる。
「すみません、平民である私がお貴族様の事情に口を出していいことではありませんでした」
(そもそも、私がメスト様の事情に口を出していい資格はない。だって、今の私は……)
マグカップの中に映る傷ついた顔の自分と目がかち合ったカミルは静かに目を伏せる。
そんなカミルを見て、ようやくカミルが聞いてきたこと理解したメストは、マグカップを置くと疲れたように深くため息をつく。
「婚約者、か……」
「っ」
(やはり、私が聞いていいことでは無かったのね)
「あの、無理して話さなくても……」
「いや、ここ半年、カミルには色々と世話になっている。だから、カミルには俺と婚約者について話そう」
「えっ?」
メストの口から出た答えに、思わず目を見開いたカミルが恐る恐る顔を上げると、いつになく真剣な表情のメストと目があった。
「よろしいのですか? 平民の私に婚約者の話しても?」
「良いんだ。むしろ、知っていて欲しい。カミルも、俺が泊る度に心のどこかで俺の婚約者のことを気にしていたのだろ?」
「いえ、私は別に気にしていたわけでは……」
「そうか? だとしたら、今になってどうして聞いてきた?」
「そ、それは……」
真剣な表情で問い質すメストに、僅かに顔を歪ませたカミルは再び彼から目を逸らす。
(これは、完全にメスト様も気づいている。口では『気にしていない』と言いつつ、本当は心のどこかで婚約者のことを気にしていたことを)
本心を見抜かれて不本意そうな顔をするカミルに、メストは突然申し訳なさそうな顔でカミルに謝る。
「すまない。本当は、俺がこの家へ泊まる度に、ちゃんとカミルに話しておくべきだった。そうすれば、カミルに余計な心配をかけずに済んだ。本当にすまなかった」
深々と頭を下げるメストに、カミルは気遣うような素振りをする。
「いえ、本当に特に気にしていませんから。そもそも、平民の私に話すことでもないでしょうから」
(違う。本当は聞きたくなかった。あなたと婚約者のことなんて聞きたくなかった。だけど、毎週のように私のところに来ているあなたを見ているうちに、『いつか、婚約者について聞かないといけない』と思ってしまったの)
メストとの時間は楽しいし、本当は婚約者のところになんて行って欲しくない。
けれど、自分のせいで婚約者と関係を悪くしたら元も子もない。
それに、誠実なメストが婚約者に対して不誠実なことをするとは一切思っていないからこそ、婚約者との関係が尚更気になってしまう。
そんな複雑な心境をカミルが抱いているなどと思いも寄らず、大きく目を見開いたメストが頭を上げるとカミルに微笑みかける。
「ありがとう。俺は心優しいカミルが俺の師匠であることを誇りに思う」
「っ!?」
(いきなり何を言っているの!?)
突然の誉め言葉に、思わず頬を赤らめるカミル。
「だからこそ、聞いて欲しい。そんなカミルを困らせた罪滅ぼしとしてことを」
笑みを潜めたメストは、カミルの家へ泊りに来てからのことを話し始める。
◇◇◇◇◇
「……なるほど。つまり、あなた様から婚約者様を誘った場合、もれなく婚約者様とそのお父君の反感を買ってしまうから、あなた様から婚約者様を誘うことはしなくなったと。その結果、ここ半年の間、あなた様は婚約者様からの誘いがないので婚約者様とデートをすることがなく、お休みの度に私のところに来ていたというわけですね?」
メストから一通り話を聞いたカミルは、少しだけ難しい顔をしながらメストに問い質す。
すると、心底疲れたような顔でホットコーヒーを飲んだメストが、マグカップを置くと深く頷く。
「そうなんだ。一応、休みの日が分かったら、その都度ダリア……俺の婚約者に手紙を送っている。けれど……」
「ここ半年は彼女からのデートの誘いが一切ないと?」
「そういうことだ?」
「確認ですけど、半年前まではあなた様から何度か誘っていたのですよね?」
「もちろんだ。だが、さっきも言ったが、誘う度に反感を買ってしまうから止めた」
「そんな……」
苦笑いで話すメストに、カミルは言葉を失う。
(メスト様のことだから、あの自由奔放な婚約者にも誠実に接しているのでしょう。それにしても……)
「あの令嬢、一体何を考えているのかしら?」
メストが王都に来て間もない頃は、メストに苦言を呈されても、凛々しい顔立ちの彼の隣にいる優越感に浸っていたダリアは、メストとのデートを心底楽しんでいた。
けれど、メストが王都に来て半年が過ぎた頃、自由奔放なダリアは婚約者であるメストと一緒にいる時間を苦痛に感じた。
そのため、メストからの誘いを断り続けていたり、気まぐれで応じた時はずっと不機嫌なままメストとの時間を過ごしたりしていたのだ。
もちろん、そんなことを当事者であるメストや第三者であるカミルが知る由もない。
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