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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第147話 解雇してちょうだい
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執務室を後にしたテオを見届けたカトレアは、小さく溜息をつくとダリアに向かって頭を下げる。
「ごめんなさい。この後に会議が入っていたことを忘れていたわ」
心底申し訳なさそうな顔でカトレアが謝ると、テオが去って怒りが収まったのか、深く溜息をついたダリアがドカッとソファーに座り足を組んでそっぽを向く。
「良いわよ、別に。それよりも、さっさと会議に行ってきなさいよ。私は、もう少し寛いでから帰るから」
「……分かったわ」
(一先ず、このわがまま娘の機嫌が直ったようで良かったわ)
不機嫌そうにしているダリアを見て、内心安堵したカトレアは急いで自席に戻ると机の上に置いてある会議に使う資料を手に取る。
そして、足早に部屋を出ようとしたその時、後ろから声がかかる。
「あっ、そうだ。カトレア、団長にもう1つ言ってほしいことがあったんだったわ」
「……何かしら?」
(どうせ、ろくでもないことなのでしょう。正直、聞きたくない。何だったら、話していた内装の件についても団長に話を通したくない)
『心底面倒くさい』と思いつつ、淑女の笑みを浮かべたカトレアが振り向くと、ダリアが下卑た笑みを浮かべて頼みごとをする。
「さっきの黒ローブの男、どうみても平民だったわよね?」
「えぇ、そうね。一応、私の小間使いをしてくれている魔法師見習いだけど」
(とはいえ、さっきのことで彼がただの魔法師見習いではないことは分かったのだけど)
「だったら今すぐ、黒ローブの魔法師見習いは全員解雇してちょうだい」
「は?」
(貴族と同等の魔力量を有する平民を全員解雇? あんた、何を言っているの?)
ダリアのろくでもない頼み事に、一瞬呆気にとられたカトレアは心底呆れたように深く溜息をつく。
「あのね、彼らはただの平民じゃないの。貴族と同等の魔力量を有している稀な平民なの。だから、宮廷魔法師団は貴重な人材として彼らを雇用し、魔法に関するあらゆる雑務を任せているの」
今の宰相閣下になってすぐの頃、貴族の同等の魔力量を持った平民が貴族を魔法で殺す事件が起こった……らしい。
というのも、いつどこで事件が起き、誰が殺されたのか全く分からなかったからである。
けれど、それを聞いた宰相閣下は、二度と同じ事件が起きないよう、すぐさま平民に魔法を教えるのを禁じた。
そして、貴族と同じ魔力量を持つ平民は見つけ次第殺そうとしていた。
だが、貴重な人材である彼らを殺すことに猛反対した宮廷魔法師団団長が、宰相閣下に『だったら、彼らの保護と監視を兼ねて『見習い魔法師』として彼らを宮廷魔法師団で雇用させて欲しい』と嘆願した。
その結果、貴族と同じ魔力量を持つ平民は『見習い魔法師』として、宮廷魔法師団で雑用係をしている。
(雑用と言っても、大半が研究達の作った試作品魔道具や転移陣に魔力を注いだり、試作品魔道具に属性魔法を付与するのを手伝ったりなど……膨大な魔力を持っている彼らだからこそ任せられるものばかり。現に私も、執務室にある魔道具のメンテナンスをテオに任せているし)
そんなことを思いつつカトレアが優しく諭すと、更に不機嫌になったダリアが鼻を鳴らす。
「フン! そんなの、あなた達宮廷魔法師だけでどうにかなるでしょ? だったら、さっさと全員解雇しなさい」
「……どうしてか、聞いてもいいかしら?」
わがまま令嬢を諭すことを諦めたカトレアが静かに問い質すと、ダリアがさも当然とばかりに偏った理由を口にする。
「そんなの、ここが貴族と王族にしか立ち入ることを許されない場所だからに決まっているでしょ!」
「…………」
(聞かなきゃ良かった。こんなしょうもない理由で貴重な人材を解雇出来るはずがない。確かに、宮廷魔法師団に来たばかりの頃はダリアと同じことを思った。けれど、彼らを知っていくうちに、彼らが宮廷魔法師団にとってなくてはならない存在だと思うようになった)
あまりにもしょうもない理由に、額を抑えようとしたカトレアはギュッと手を強く握りしめる。
そして、小さく溜息をつくとダリアに背を向ける。
「……進言してみるわ」
「そうしてちょうだい。それと、あなたの小間使いはさっき私のことを侮辱した灰色ローブにしなさい。平民程度で出来るなら、貴族に出来るでしょ」
「そう、ね。そのことも含めて、団長とかけあってみるわ」
「うん、よろしく~」
淡々とした口調で返事したカトレアは、満足そうな笑みで手を振るダリアに見送られながら部屋を出る。
そして、執務室のドアを閉めると自嘲気味の笑みを浮かべる。
「でもまぁ、言ったところで団長が許すはずない。だって、彼らを全員『魔法師見習い』にしたのは他でもない団長なのだから」
(それに、灰色ローブはうちの大事な研究員だから役割が違うし……というか、宰相家令嬢なのだから、宮廷魔法師団のことをある程度把握しているものじゃないの?)
「それと、あんたが『侮辱した』と勘違いしている灰色ローブの研究員は私より爵位が高い伯爵よ」
(そんな人を子爵令嬢である私が、小間使いさせるなんて出来るはずがない)
僅かに顔を歪ませたカトレアは、深く息を吐いて気持ちを落ち着けると、足早に会議のある場所へと向かった。
「ごめんなさい。この後に会議が入っていたことを忘れていたわ」
心底申し訳なさそうな顔でカトレアが謝ると、テオが去って怒りが収まったのか、深く溜息をついたダリアがドカッとソファーに座り足を組んでそっぽを向く。
「良いわよ、別に。それよりも、さっさと会議に行ってきなさいよ。私は、もう少し寛いでから帰るから」
「……分かったわ」
(一先ず、このわがまま娘の機嫌が直ったようで良かったわ)
不機嫌そうにしているダリアを見て、内心安堵したカトレアは急いで自席に戻ると机の上に置いてある会議に使う資料を手に取る。
そして、足早に部屋を出ようとしたその時、後ろから声がかかる。
「あっ、そうだ。カトレア、団長にもう1つ言ってほしいことがあったんだったわ」
「……何かしら?」
(どうせ、ろくでもないことなのでしょう。正直、聞きたくない。何だったら、話していた内装の件についても団長に話を通したくない)
『心底面倒くさい』と思いつつ、淑女の笑みを浮かべたカトレアが振り向くと、ダリアが下卑た笑みを浮かべて頼みごとをする。
「さっきの黒ローブの男、どうみても平民だったわよね?」
「えぇ、そうね。一応、私の小間使いをしてくれている魔法師見習いだけど」
(とはいえ、さっきのことで彼がただの魔法師見習いではないことは分かったのだけど)
「だったら今すぐ、黒ローブの魔法師見習いは全員解雇してちょうだい」
「は?」
(貴族と同等の魔力量を有する平民を全員解雇? あんた、何を言っているの?)
ダリアのろくでもない頼み事に、一瞬呆気にとられたカトレアは心底呆れたように深く溜息をつく。
「あのね、彼らはただの平民じゃないの。貴族と同等の魔力量を有している稀な平民なの。だから、宮廷魔法師団は貴重な人材として彼らを雇用し、魔法に関するあらゆる雑務を任せているの」
今の宰相閣下になってすぐの頃、貴族の同等の魔力量を持った平民が貴族を魔法で殺す事件が起こった……らしい。
というのも、いつどこで事件が起き、誰が殺されたのか全く分からなかったからである。
けれど、それを聞いた宰相閣下は、二度と同じ事件が起きないよう、すぐさま平民に魔法を教えるのを禁じた。
そして、貴族と同じ魔力量を持つ平民は見つけ次第殺そうとしていた。
だが、貴重な人材である彼らを殺すことに猛反対した宮廷魔法師団団長が、宰相閣下に『だったら、彼らの保護と監視を兼ねて『見習い魔法師』として彼らを宮廷魔法師団で雇用させて欲しい』と嘆願した。
その結果、貴族と同じ魔力量を持つ平民は『見習い魔法師』として、宮廷魔法師団で雑用係をしている。
(雑用と言っても、大半が研究達の作った試作品魔道具や転移陣に魔力を注いだり、試作品魔道具に属性魔法を付与するのを手伝ったりなど……膨大な魔力を持っている彼らだからこそ任せられるものばかり。現に私も、執務室にある魔道具のメンテナンスをテオに任せているし)
そんなことを思いつつカトレアが優しく諭すと、更に不機嫌になったダリアが鼻を鳴らす。
「フン! そんなの、あなた達宮廷魔法師だけでどうにかなるでしょ? だったら、さっさと全員解雇しなさい」
「……どうしてか、聞いてもいいかしら?」
わがまま令嬢を諭すことを諦めたカトレアが静かに問い質すと、ダリアがさも当然とばかりに偏った理由を口にする。
「そんなの、ここが貴族と王族にしか立ち入ることを許されない場所だからに決まっているでしょ!」
「…………」
(聞かなきゃ良かった。こんなしょうもない理由で貴重な人材を解雇出来るはずがない。確かに、宮廷魔法師団に来たばかりの頃はダリアと同じことを思った。けれど、彼らを知っていくうちに、彼らが宮廷魔法師団にとってなくてはならない存在だと思うようになった)
あまりにもしょうもない理由に、額を抑えようとしたカトレアはギュッと手を強く握りしめる。
そして、小さく溜息をつくとダリアに背を向ける。
「……進言してみるわ」
「そうしてちょうだい。それと、あなたの小間使いはさっき私のことを侮辱した灰色ローブにしなさい。平民程度で出来るなら、貴族に出来るでしょ」
「そう、ね。そのことも含めて、団長とかけあってみるわ」
「うん、よろしく~」
淡々とした口調で返事したカトレアは、満足そうな笑みで手を振るダリアに見送られながら部屋を出る。
そして、執務室のドアを閉めると自嘲気味の笑みを浮かべる。
「でもまぁ、言ったところで団長が許すはずない。だって、彼らを全員『魔法師見習い』にしたのは他でもない団長なのだから」
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「それと、あんたが『侮辱した』と勘違いしている灰色ローブの研究員は私より爵位が高い伯爵よ」
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