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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第192話 暗躍する宰相閣下
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「そうか、あいつらは旅立ったのか」
「はい、お父様♪」
空の色が茜色に染まった頃、宰相専用の豪華な執務室で娘のダリアから報告を聞いたノルベルトは、小さく溜息をつくと黒革の椅子に深く腰かけた。
「『宮廷魔法師団長宛に帝国から指名依頼が来た』と部下から聞かされた時は、正直驚いたが……一先ず、王国からの監視役として文官を置いたから、宮廷魔法師どもや帝国は下手な真似は出来ないだろう」
小さく笑みを浮かべるノルベルトに、ソファーに座って紅茶を楽しんでいたダリアも満足げな笑みを見せた。
「そうですわね、お父様。正直、あの野蛮な愚民の集まりである帝国に、我が国の天才魔法師が護衛として向かうと聞いた時は、あの宮廷魔法師団団長に今すぐ止めるように直訴しようと思いましたが」
「……まさか、行ってないよな?」
「もちろんです。そもそも、そんな面倒なこと私がするわけないじゃありませんか」
「そう、だよな」
(前に、宮廷魔法師団の会議に乗り込んで『思う存分、引っ掻き回してくれた』とルベルから抗議が来たから、今回も一波乱起こすのかと思ったが……)
ダリアがルベルに対して事を起こしていないと聞いて、内心安堵したノルベルトは、不機嫌そうな顔で頬杖をついた。
「まぁ、あの宮廷魔法師団団長を敵に回すと厄介だからな」
「そんなの、宰相であるお父様より下の人物なのですから、どうにかなる人物ではないのですか?」
「……いいや、奴は別格だ」
(何せ、奴は俺やフェビルが今の地位に就く前から宮廷魔法師団団長をやっている人物だ。そんな奴を敵に回すことをしたくはない。今だって、宰相の権力と俺の魔法でどうにか奴を抑え込んでいるが……奴がいつ、俺に牙をむくか分からない)
『ノルベルト。俺は貴様を宰相だなんて認めないからな』
「チッ! 調子に乗りやがって」
「お父様?」
不思議そうに首を傾げたダリアに、ノルベルトは深く溜息をつくと姿勢を正した。
「それよりも、フェビルが文官と親しく話していたというのは本当なのか?」
「はい、お父様♪ 随分と身の程知らずの文官だなとは思いましたので、私が消そうと思いましたが」
「止めてくれ」
「分かっています。そんな面倒なことはしておりませんよ」
誰もが見惚れる可愛らしい笑みのダリアに対し、ノルベルトは疲労で机に突っ伏しそうになった。
(確か、俺が監視役に文官を送ると言った時、珍しく陛下が『人選を任せて欲しい』と言ってきたな。正直、誰でも良かったから任せたが……)
「……なぁ、ダリア」
「何でしょう?」
「その文官は、一体どんな奴だった?」
「さぁ、平民出身の文官のことなんか、貴族の私が知るわけがありません」
「そう、か」
(まぁ、陛下から選ばれた人物だとしても、所詮は平民出身の下級文官。一々気にしていたらきりが無い)
再び溜息をついたノルベルトは、優雅に紅茶を飲むダリアに目を向けた。
「ともかく、お使いご苦労だった」
「本当です! お陰で、昨夜出会った殿方を満足に楽しめませんでしたわ!」
「そう言うと思って、お前好みの騎士を護衛として寄こしたんじゃないか」
(夜会の条件を出した時、明らかに不満そうな顔をしていたから)
「やはり、そうでしたか! そちらに関しては感謝していますわ! お陰で、昨日に引き続いて初物がいただけましたし!」
「そう、か……」
娘の自由奔放さに、ノルベルトが思わず苦笑いを浮かべていると、ふとダリアのデコルテについたキスマークが目に入った。
「それにしても……ドレスから見えるキスマークはどうにかした方が良いんじゃないのか? ほら、その……他の令嬢のやっかみがあるかもしれないぞ?」
「まぁ、お父様! もしかして、嫉妬ですか!?」
「いや、そういうことでは……仮にもお前は婚約者がいるんだぞ?」
(そもそも、婚約者がいる貴族令嬢が他の貴族令息と昼間から体を交わしていることが問題なのだが……)
胸元が大きく開いたドレスから見える複数のキスマークに、ノルベルトは呆れたように溜息をついた。
すると、父の呆れた様子を嫉妬していると勘違いしたダリアは、満面の笑みを浮かべると小さく両手を叩いた。
「ウフフッ、お父様! ご心配なく! お父様のことは今夜、私とお母様がしっかり慰めさせていただきます」
「……あぁ、そうしてくれ」
(魔法で若返った妻と娘から慰められるのは……フフッ、案外悪くないな。まぁ、その時は俺も若返りの魔法をかけないといけないが)
妻と娘から慰められることを想像し、一瞬笑みを浮かべたノルベルトは、誤魔化すように慌てて咳払いをすると、真剣な表情でダリアを見た。
「改めて、お使いご苦労だった。それと、屋敷に帰ったらリアンに『引き続き王女様の婚約者としての勤めを果たせ』と言ってくれ」
「は~い♪」
元気よく返事をしたダリアは、ソファーから立ち上がるとそのまま執務室を後にした。
「はぁ……一先ず、この国の奴らは俺の魔法にかかっているから大丈夫だろ」
ダリアが去った後、背もたれに体を預けたノルベルトは大きく息を吐いた。
(でもまぁ、我が国の現状を知った帝国が、王国に対して戦争でも仕掛けてきてくれれば、こちらとしては大変御の字なのだが)
下卑た笑みを浮かべながら考えを巡らせていたノルベルトは、ふとダリアの綺麗な柔肌についたキスマークを思い出し、呆れ果てたように溜息をついた。
「それにしても、ダリアがあそこまで節操のない娘だったとは……」
(今は俺の魔法でどうにかなっているが……もしも、こんな奴が宰相家令嬢だと平民どもに知られたら反乱を起こしかねない)
「だが……まぁ、良い」
椅子から立ち上がったノルベルトは、窓に映る綺麗な王都の街並みを眺めて愉悦の笑みを浮かべた。
「どうせ、この国の……この世界の全ては俺のものになるのだから」
「はい、お父様♪」
空の色が茜色に染まった頃、宰相専用の豪華な執務室で娘のダリアから報告を聞いたノルベルトは、小さく溜息をつくと黒革の椅子に深く腰かけた。
「『宮廷魔法師団長宛に帝国から指名依頼が来た』と部下から聞かされた時は、正直驚いたが……一先ず、王国からの監視役として文官を置いたから、宮廷魔法師どもや帝国は下手な真似は出来ないだろう」
小さく笑みを浮かべるノルベルトに、ソファーに座って紅茶を楽しんでいたダリアも満足げな笑みを見せた。
「そうですわね、お父様。正直、あの野蛮な愚民の集まりである帝国に、我が国の天才魔法師が護衛として向かうと聞いた時は、あの宮廷魔法師団団長に今すぐ止めるように直訴しようと思いましたが」
「……まさか、行ってないよな?」
「もちろんです。そもそも、そんな面倒なこと私がするわけないじゃありませんか」
「そう、だよな」
(前に、宮廷魔法師団の会議に乗り込んで『思う存分、引っ掻き回してくれた』とルベルから抗議が来たから、今回も一波乱起こすのかと思ったが……)
ダリアがルベルに対して事を起こしていないと聞いて、内心安堵したノルベルトは、不機嫌そうな顔で頬杖をついた。
「まぁ、あの宮廷魔法師団団長を敵に回すと厄介だからな」
「そんなの、宰相であるお父様より下の人物なのですから、どうにかなる人物ではないのですか?」
「……いいや、奴は別格だ」
(何せ、奴は俺やフェビルが今の地位に就く前から宮廷魔法師団団長をやっている人物だ。そんな奴を敵に回すことをしたくはない。今だって、宰相の権力と俺の魔法でどうにか奴を抑え込んでいるが……奴がいつ、俺に牙をむくか分からない)
『ノルベルト。俺は貴様を宰相だなんて認めないからな』
「チッ! 調子に乗りやがって」
「お父様?」
不思議そうに首を傾げたダリアに、ノルベルトは深く溜息をつくと姿勢を正した。
「それよりも、フェビルが文官と親しく話していたというのは本当なのか?」
「はい、お父様♪ 随分と身の程知らずの文官だなとは思いましたので、私が消そうと思いましたが」
「止めてくれ」
「分かっています。そんな面倒なことはしておりませんよ」
誰もが見惚れる可愛らしい笑みのダリアに対し、ノルベルトは疲労で机に突っ伏しそうになった。
(確か、俺が監視役に文官を送ると言った時、珍しく陛下が『人選を任せて欲しい』と言ってきたな。正直、誰でも良かったから任せたが……)
「……なぁ、ダリア」
「何でしょう?」
「その文官は、一体どんな奴だった?」
「さぁ、平民出身の文官のことなんか、貴族の私が知るわけがありません」
「そう、か」
(まぁ、陛下から選ばれた人物だとしても、所詮は平民出身の下級文官。一々気にしていたらきりが無い)
再び溜息をついたノルベルトは、優雅に紅茶を飲むダリアに目を向けた。
「ともかく、お使いご苦労だった」
「本当です! お陰で、昨夜出会った殿方を満足に楽しめませんでしたわ!」
「そう言うと思って、お前好みの騎士を護衛として寄こしたんじゃないか」
(夜会の条件を出した時、明らかに不満そうな顔をしていたから)
「やはり、そうでしたか! そちらに関しては感謝していますわ! お陰で、昨日に引き続いて初物がいただけましたし!」
「そう、か……」
娘の自由奔放さに、ノルベルトが思わず苦笑いを浮かべていると、ふとダリアのデコルテについたキスマークが目に入った。
「それにしても……ドレスから見えるキスマークはどうにかした方が良いんじゃないのか? ほら、その……他の令嬢のやっかみがあるかもしれないぞ?」
「まぁ、お父様! もしかして、嫉妬ですか!?」
「いや、そういうことでは……仮にもお前は婚約者がいるんだぞ?」
(そもそも、婚約者がいる貴族令嬢が他の貴族令息と昼間から体を交わしていることが問題なのだが……)
胸元が大きく開いたドレスから見える複数のキスマークに、ノルベルトは呆れたように溜息をついた。
すると、父の呆れた様子を嫉妬していると勘違いしたダリアは、満面の笑みを浮かべると小さく両手を叩いた。
「ウフフッ、お父様! ご心配なく! お父様のことは今夜、私とお母様がしっかり慰めさせていただきます」
「……あぁ、そうしてくれ」
(魔法で若返った妻と娘から慰められるのは……フフッ、案外悪くないな。まぁ、その時は俺も若返りの魔法をかけないといけないが)
妻と娘から慰められることを想像し、一瞬笑みを浮かべたノルベルトは、誤魔化すように慌てて咳払いをすると、真剣な表情でダリアを見た。
「改めて、お使いご苦労だった。それと、屋敷に帰ったらリアンに『引き続き王女様の婚約者としての勤めを果たせ』と言ってくれ」
「は~い♪」
元気よく返事をしたダリアは、ソファーから立ち上がるとそのまま執務室を後にした。
「はぁ……一先ず、この国の奴らは俺の魔法にかかっているから大丈夫だろ」
ダリアが去った後、背もたれに体を預けたノルベルトは大きく息を吐いた。
(でもまぁ、我が国の現状を知った帝国が、王国に対して戦争でも仕掛けてきてくれれば、こちらとしては大変御の字なのだが)
下卑た笑みを浮かべながら考えを巡らせていたノルベルトは、ふとダリアの綺麗な柔肌についたキスマークを思い出し、呆れ果てたように溜息をついた。
「それにしても、ダリアがあそこまで節操のない娘だったとは……」
(今は俺の魔法でどうにかなっているが……もしも、こんな奴が宰相家令嬢だと平民どもに知られたら反乱を起こしかねない)
「だが……まぁ、良い」
椅子から立ち上がったノルベルトは、窓に映る綺麗な王都の街並みを眺めて愉悦の笑みを浮かべた。
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