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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第195話 夜の森で(後編)
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「さて、夜も遅いですし戻るとしますか。明日は、いよいよ帝国に入るのですから」
「はっ、はぁ……そう、ですね」
2人の間に沈黙の時間がしばらく流れた後、にこやかに微笑んだマクシェルの気遣いに、カトレアは小さく頷くと彼と共に森を後にしようとした。
(本当は魔法の鍛錬をしたかったけど……あんなものを見せられた後では集中出来るはずが無いわ)
『ほら、この通り!』
『っ!?』
一瞬で魔物を葬った下級文官の姿が頭から離れないカトレアは、先を行く彼の背中を見ながら僅かに眉を顰めた。
その時、森の異変に気付いた2人が足を止めた。
「カトレア様、前から感じるこの禍々しい独特な気配……」
「そうですね。この気配、間違いありません」
(下級文官が、魔物と渡り会っている騎士や宮廷魔法師と同じように魔物の気配に気づくのもおかしな話だけど……今はそんなことを考える余裕はなさそうね)
前からただならぬ気配を感じたカトレアが下ろしていた杖を構えようとした瞬間、森の奥から大きな火の玉が飛んできた。
「っ!? 危ない!」
飛んできた火の玉からマクシェルを守ろうと、カトレアが彼の前に出ようと一歩を踏み出した。
しかし、それにマクシェルが咄嗟にカトレアの行く手を阻むと静かに剣を構えた。
「大丈夫です」
そう言って、笑みを潜めたマクシェルは持っていた片手剣に透明な魔力を纏わせた。
(えっ!? あの魔力って、前に魔物討伐に参戦していた平民が使っていた魔力!?)
見覚えの魔力にカトレアが気を取られている隙に、マクシェルは魔力を纏わせた剣で飛んできた火の玉を一刀両断で打ち消した。
「あっ、あなたは一体……」
「カトレア様。既にお気づきかと思いますが、魔物達の姿が見え始めました」
「っ!?」
状況を報告したマクシェルの酷く冷めた声を聞いて、冷静になったカトレアは今度こそ杖を構えると姿を現し始めた魔物達を捉えた。
「数は、20~30っていったところですね。まぁ、私一人でも造作も無い数ですが、あなた様を守りながら戦うとなると、少々骨が折れる数ですね」
マクシェルに対して遠回しに嫌味を言ったカトレアに、マクシェルは後ろを振り向くと穏やかな笑みを浮かべた。
「ご心配無く。これでも私は、王国に仕える下級文官。己の身を守る術くらい、心得ておりますとも」
「そうでなくては困ります。魔物がいるかもしれない森に1人で来たのですから」
(そうでなくても、魔物を一瞬で屠ったあなたなら大丈夫でしょうけど)
小さく鼻を鳴らすカトレアを一瞥し、小さく頷いたマクシェルは視線を前に戻した。
「恐らく、魔物が発生した原因は、この近くにある魔法陣に流れる魔力が暴走して、小さな歪みが起きたのだろう」
「魔法陣? 暴走? 歪み?」
(一体に何を言っているの?)
「いえ、道中で研究者様方から聞いた話を思い出しただけです。忘れてください」
「分かりました……」
(でも、こんな状況でどうして急にそんなことを思い出したのかしら?)
不思議そうに小首を傾げるカトレアをよそに、マクシェルは表情を引き締めると眼前に迫った魔物に向かって再び剣を構えた。
「カトレア様」
「何でしょう?」
「私が前衛を担いますので、後衛をお任せしてもよろしいでしょうか?」
「そんなの、言われなくても分かっています。だから、あなたも前衛として少しは役に立ってください」
「フフッ、承知いたしました」
小さく笑みを浮かべたマクシェルは、そっと足元に透明な魔力を纏わせた。
「あなた様は忘れているかもしれませんが……こう見えて私、かつては王国の盾を担っていたのですよ」
「はっ?」
(何言っているの? 『王国の盾』と言えば、ダリアの実家であり、この国の宰相家であるインベック公爵家……)
「では、参ります」
顔を顰めるカトレアの前で、足元に纏っていた魔力を一気に弾け飛ばしたマクシェルは、勢いのまま魔物の群れへと突進した。
それを合図に、カトレアは後衛としてマクシェルの支援するように、夜の森で得意の火魔法を放ち、魔物達をあっという間に魔石に変えた。
「ふぅ、これでいいかしら?」
「はい。お見事でございます」
安堵の溜息をつくカトレアを見て、笑みを潜めたマクシェルは彼女に聞こえない小さな声で呟いた。
「あなたは、本当にロスペルの弟子なのだろうか?」
「はっ、はぁ……そう、ですね」
2人の間に沈黙の時間がしばらく流れた後、にこやかに微笑んだマクシェルの気遣いに、カトレアは小さく頷くと彼と共に森を後にしようとした。
(本当は魔法の鍛錬をしたかったけど……あんなものを見せられた後では集中出来るはずが無いわ)
『ほら、この通り!』
『っ!?』
一瞬で魔物を葬った下級文官の姿が頭から離れないカトレアは、先を行く彼の背中を見ながら僅かに眉を顰めた。
その時、森の異変に気付いた2人が足を止めた。
「カトレア様、前から感じるこの禍々しい独特な気配……」
「そうですね。この気配、間違いありません」
(下級文官が、魔物と渡り会っている騎士や宮廷魔法師と同じように魔物の気配に気づくのもおかしな話だけど……今はそんなことを考える余裕はなさそうね)
前からただならぬ気配を感じたカトレアが下ろしていた杖を構えようとした瞬間、森の奥から大きな火の玉が飛んできた。
「っ!? 危ない!」
飛んできた火の玉からマクシェルを守ろうと、カトレアが彼の前に出ようと一歩を踏み出した。
しかし、それにマクシェルが咄嗟にカトレアの行く手を阻むと静かに剣を構えた。
「大丈夫です」
そう言って、笑みを潜めたマクシェルは持っていた片手剣に透明な魔力を纏わせた。
(えっ!? あの魔力って、前に魔物討伐に参戦していた平民が使っていた魔力!?)
見覚えの魔力にカトレアが気を取られている隙に、マクシェルは魔力を纏わせた剣で飛んできた火の玉を一刀両断で打ち消した。
「あっ、あなたは一体……」
「カトレア様。既にお気づきかと思いますが、魔物達の姿が見え始めました」
「っ!?」
状況を報告したマクシェルの酷く冷めた声を聞いて、冷静になったカトレアは今度こそ杖を構えると姿を現し始めた魔物達を捉えた。
「数は、20~30っていったところですね。まぁ、私一人でも造作も無い数ですが、あなた様を守りながら戦うとなると、少々骨が折れる数ですね」
マクシェルに対して遠回しに嫌味を言ったカトレアに、マクシェルは後ろを振り向くと穏やかな笑みを浮かべた。
「ご心配無く。これでも私は、王国に仕える下級文官。己の身を守る術くらい、心得ておりますとも」
「そうでなくては困ります。魔物がいるかもしれない森に1人で来たのですから」
(そうでなくても、魔物を一瞬で屠ったあなたなら大丈夫でしょうけど)
小さく鼻を鳴らすカトレアを一瞥し、小さく頷いたマクシェルは視線を前に戻した。
「恐らく、魔物が発生した原因は、この近くにある魔法陣に流れる魔力が暴走して、小さな歪みが起きたのだろう」
「魔法陣? 暴走? 歪み?」
(一体に何を言っているの?)
「いえ、道中で研究者様方から聞いた話を思い出しただけです。忘れてください」
「分かりました……」
(でも、こんな状況でどうして急にそんなことを思い出したのかしら?)
不思議そうに小首を傾げるカトレアをよそに、マクシェルは表情を引き締めると眼前に迫った魔物に向かって再び剣を構えた。
「カトレア様」
「何でしょう?」
「私が前衛を担いますので、後衛をお任せしてもよろしいでしょうか?」
「そんなの、言われなくても分かっています。だから、あなたも前衛として少しは役に立ってください」
「フフッ、承知いたしました」
小さく笑みを浮かべたマクシェルは、そっと足元に透明な魔力を纏わせた。
「あなた様は忘れているかもしれませんが……こう見えて私、かつては王国の盾を担っていたのですよ」
「はっ?」
(何言っているの? 『王国の盾』と言えば、ダリアの実家であり、この国の宰相家であるインベック公爵家……)
「では、参ります」
顔を顰めるカトレアの前で、足元に纏っていた魔力を一気に弾け飛ばしたマクシェルは、勢いのまま魔物の群れへと突進した。
それを合図に、カトレアは後衛としてマクシェルの支援するように、夜の森で得意の火魔法を放ち、魔物達をあっという間に魔石に変えた。
「ふぅ、これでいいかしら?」
「はい。お見事でございます」
安堵の溜息をつくカトレアを見て、笑みを潜めたマクシェルは彼女に聞こえない小さな声で呟いた。
「あなたは、本当にロスペルの弟子なのだろうか?」
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