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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第196話 ようこそ、フィアンツ帝国へ
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「……はい、大丈夫です。ようこそ、フィアンツ帝国へ」
国境付近の宿場町で一夜を明かした後、一行は国境にある検問所で帝国の騎士から検問を受けて、無事に帝国への入国を許可された。
「ありがとうございます」
「……いえ。これが、私の仕事ですから」
嬉しそうに笑みを浮かべるマクシェルを見て、騎士は悔しそうに顔を歪めると小さく拳を握った。
(『あなたのような方が、どうしてお使いみたいなことをされているのですか?』という顔をしているな。まぁ、事情を話したところで信じてはもらえないだろうが)
悔しさに堪える騎士に、目を細めたマクシェルは笑みを浮かべたまま頭を下げると馬車が止まっている場所まで戻った。
すると、馬車の前にいたラピスが駆けてきた。
「マクシェル殿、ありがとうございます」
「いえいえ、下級とはいえ私も王国の文官。入国手続きくらい、容易いものですよ」
実は、入国手続きの仕方を忘れていたラピスを含めた護衛達は、検問所の前にして困り果てていた。
それを馬車の中から見ていたマクシェルは、颯爽と馬車から降りると彼らに代わって入国手続きをしてくれたのだ。
(本当に、この人がいて良かった。この人がいなければ、俺たちは今頃王都に戻っていただろう)
律儀に頭を下げるラピスに、マクシェルが笑みを浮かべながら小さく首を横に振った。
すると、先ほど検問していた騎士が、マクシェルに駆け寄るとそっと耳打ちした。
「閣下。どうして、あなた様がわざわざこちらにいらっしゃっているのですか? それも、下級文官の姿で。こちらに来ると事前に知らせていただければ、すぐさま王宮にお通ししましたのに」
突然駆け寄ってきた騎士に対して眉を顰めるラピスに、騎士はラピスや後ろにいる一行に不快な目を向けた。
そんな2人の剣呑した視線に気づいたマクシェルは、小さく笑みを浮かべると騎士に耳打ちをした。
「まぁ、色々あってですよ」
「色々って……」
「それと、陛下には先触れを出してあったはずですが……」
「っ!? そっ、それは! 大変失礼いたしました!!」
マクシェルの言葉に、顔を引き攣らせた騎士が慌てて敬礼すると、そのまま回れ右をして持ち場へと戻って行った。
(どうやら、事前に通達が無かったらしいな)
「全く、あの皇帝は……自国の騎士に騙し討ちをかけて楽しいのだろうか?」
彼のことを気の毒に思ったマクシェルは、小さく呟いて盛大に溜息をついた。
すると、心配そうな顔をしたラピスが近づいてきた。
「あの、マクシェル殿」
「何でしょう?」
「先程、あの騎士から何を言われたのですか?」
(急に来たと思えば、いきなり俺に対して警戒心を向けていたが)
慌てて去った騎士の背中を警戒するように見ていたラピスは、眉を顰めたまま視線をマクシェルに向けた。
「いえ、たいしたことは言われていませんよ」
「そうなのですか? それにしては、検問を受けている時、帝国の騎士はあなた様に対して不躾な視線を送っていた気がしますが……先程も私に対して似たような視線を向けていましたし」
「それはきっと、王国から……それも、随行役として下級文官が来ることが物珍しかったのでしょう」
「確かに」
(検問所に行く前、マクシェル殿が『ここ3年、王国は周辺諸国との外交を絶っていた』と仰っていた。だとしたら、あの騎士には王国から来た俺たちは物珍しく見えたのだろう)
「ですがこれは、一応、公式的な外交なので普通は……」
「えぇ、普通は上級文官か宰相が随行役として来ます。しかしながら……」
「皆様、国内のことで忙しいのですよね?」
「そういうことです」
(本当は、その宰相を名乗る奴が大の外国嫌いなのだが……まぁ、帝国のことをよく知らない彼らに話したところで信じてくれるかどうか)
「それに、普通なら即入国拒否されるのだが……通したということは、王国が外交を絶っていた事実を、あの皇帝は意図的に隠していたのだろう」
僅かに目を細めたマクシェルの呟きに気づかなかったラピスは、マクシェルの言葉に納得すると安堵の溜息をついた。
「何はともあれ、無事に帝国への入国は許可されましたね」
「そうですね」
「ですが、お恥ずかしい話、私たち護衛役は帝国に対する知識は全くありません。ですから、ここは下級文官であるマクシェル殿にある程度のことを任せてもよろしいでしょうか?」
「良いのですか?」
「はい。宿場町を出発する前、帝国のことはある程度知っているとおっしゃっていましたし」
「聞いていたのですか? あれは、研究者の皆様に話していたのですが……」
「もちろんです。それに、他の護衛役の騎士や宮廷魔法師達もその話を聞いていましたから、マクシェル殿に任せることには皆納得しています」
(まぁ、一番駄々を捏ねると危惧していたカトレアがあっさりと納得したのは意外だったが)
「そういうことでしたら、引き受けましょう」
「ありがとうございます」
「いえいえ、それでは早速行きましょうか。ここで立ち止まっていると、他の入国者にも迷惑がかかりますから」
「あっ! はい! そうですね」
マクシェルの言葉でハッとさせられたラピスは、急いで他の騎士達や御者、研究者達や宮廷魔法師達に入国許可が下りたことを報告。
そうして、一行を隣国フィアンツ帝国に入国した。
国境付近の宿場町で一夜を明かした後、一行は国境にある検問所で帝国の騎士から検問を受けて、無事に帝国への入国を許可された。
「ありがとうございます」
「……いえ。これが、私の仕事ですから」
嬉しそうに笑みを浮かべるマクシェルを見て、騎士は悔しそうに顔を歪めると小さく拳を握った。
(『あなたのような方が、どうしてお使いみたいなことをされているのですか?』という顔をしているな。まぁ、事情を話したところで信じてはもらえないだろうが)
悔しさに堪える騎士に、目を細めたマクシェルは笑みを浮かべたまま頭を下げると馬車が止まっている場所まで戻った。
すると、馬車の前にいたラピスが駆けてきた。
「マクシェル殿、ありがとうございます」
「いえいえ、下級とはいえ私も王国の文官。入国手続きくらい、容易いものですよ」
実は、入国手続きの仕方を忘れていたラピスを含めた護衛達は、検問所の前にして困り果てていた。
それを馬車の中から見ていたマクシェルは、颯爽と馬車から降りると彼らに代わって入国手続きをしてくれたのだ。
(本当に、この人がいて良かった。この人がいなければ、俺たちは今頃王都に戻っていただろう)
律儀に頭を下げるラピスに、マクシェルが笑みを浮かべながら小さく首を横に振った。
すると、先ほど検問していた騎士が、マクシェルに駆け寄るとそっと耳打ちした。
「閣下。どうして、あなた様がわざわざこちらにいらっしゃっているのですか? それも、下級文官の姿で。こちらに来ると事前に知らせていただければ、すぐさま王宮にお通ししましたのに」
突然駆け寄ってきた騎士に対して眉を顰めるラピスに、騎士はラピスや後ろにいる一行に不快な目を向けた。
そんな2人の剣呑した視線に気づいたマクシェルは、小さく笑みを浮かべると騎士に耳打ちをした。
「まぁ、色々あってですよ」
「色々って……」
「それと、陛下には先触れを出してあったはずですが……」
「っ!? そっ、それは! 大変失礼いたしました!!」
マクシェルの言葉に、顔を引き攣らせた騎士が慌てて敬礼すると、そのまま回れ右をして持ち場へと戻って行った。
(どうやら、事前に通達が無かったらしいな)
「全く、あの皇帝は……自国の騎士に騙し討ちをかけて楽しいのだろうか?」
彼のことを気の毒に思ったマクシェルは、小さく呟いて盛大に溜息をついた。
すると、心配そうな顔をしたラピスが近づいてきた。
「あの、マクシェル殿」
「何でしょう?」
「先程、あの騎士から何を言われたのですか?」
(急に来たと思えば、いきなり俺に対して警戒心を向けていたが)
慌てて去った騎士の背中を警戒するように見ていたラピスは、眉を顰めたまま視線をマクシェルに向けた。
「いえ、たいしたことは言われていませんよ」
「そうなのですか? それにしては、検問を受けている時、帝国の騎士はあなた様に対して不躾な視線を送っていた気がしますが……先程も私に対して似たような視線を向けていましたし」
「それはきっと、王国から……それも、随行役として下級文官が来ることが物珍しかったのでしょう」
「確かに」
(検問所に行く前、マクシェル殿が『ここ3年、王国は周辺諸国との外交を絶っていた』と仰っていた。だとしたら、あの騎士には王国から来た俺たちは物珍しく見えたのだろう)
「ですがこれは、一応、公式的な外交なので普通は……」
「えぇ、普通は上級文官か宰相が随行役として来ます。しかしながら……」
「皆様、国内のことで忙しいのですよね?」
「そういうことです」
(本当は、その宰相を名乗る奴が大の外国嫌いなのだが……まぁ、帝国のことをよく知らない彼らに話したところで信じてくれるかどうか)
「それに、普通なら即入国拒否されるのだが……通したということは、王国が外交を絶っていた事実を、あの皇帝は意図的に隠していたのだろう」
僅かに目を細めたマクシェルの呟きに気づかなかったラピスは、マクシェルの言葉に納得すると安堵の溜息をついた。
「何はともあれ、無事に帝国への入国は許可されましたね」
「そうですね」
「ですが、お恥ずかしい話、私たち護衛役は帝国に対する知識は全くありません。ですから、ここは下級文官であるマクシェル殿にある程度のことを任せてもよろしいでしょうか?」
「良いのですか?」
「はい。宿場町を出発する前、帝国のことはある程度知っているとおっしゃっていましたし」
「聞いていたのですか? あれは、研究者の皆様に話していたのですが……」
「もちろんです。それに、他の護衛役の騎士や宮廷魔法師達もその話を聞いていましたから、マクシェル殿に任せることには皆納得しています」
(まぁ、一番駄々を捏ねると危惧していたカトレアがあっさりと納得したのは意外だったが)
「そういうことでしたら、引き受けましょう」
「ありがとうございます」
「いえいえ、それでは早速行きましょうか。ここで立ち止まっていると、他の入国者にも迷惑がかかりますから」
「あっ! はい! そうですね」
マクシェルの言葉でハッとさせられたラピスは、急いで他の騎士達や御者、研究者達や宮廷魔法師達に入国許可が下りたことを報告。
そうして、一行を隣国フィアンツ帝国に入国した。
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