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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第197話 フィアンツ帝国
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「ところでマクシェル殿」
「何でしょうか?」
「フィアンツ帝国とは一体、どんな国なのでしょうか?」
国境を越えてから帝都に繋がる道を走っている王国一行。
そんな中、マクシェルが乗っていた馬車を護衛していたラピスは、ふと気になって馬車の中から外を眺めていたマクシェルに聞いた。
「おや、ラピス様はフィアンツ帝国のことはどの程度ご存じで?」
「ペトロート王国の隣国としか……すみません、事前に勉強をしていたのですが、いかんせん我が騎士団には帝国に関する文献があまりなくて」
「ラピス様。それは、我ら宮廷魔法師団も同じです」
「えっ、そうなのですか?」
マクシェルとラピスの会話を聞いていた研究者の1人が、首を傾げるラピスに向かって小さく頷いた。
「えぇ、なぜか我が団にも帝国に関する本が無かったのです」
「そうでしたか」
揃って目を伏せた研究者とラピスを見て、マクシェルは小さく溜息をつくと視線を鬱蒼とした森に移した。
「まぁ、それも全てあやつのせいだが」
誰の耳にも届かないまま風に乗ったマクシェルの呟きは、感情を抑えるように小さく拳を握った彼の心情も連れ去ってしまった。
「では、旅の暇つぶしとして、フィアンツ帝国についてお話しましょう」
「ありがとうございます、マクシェル殿」
街道をしばらく走った後、一行は休憩を兼ねて街道の脇で馬車を止めた。
そのタイミングで馬車から降りたマクシェルは、ラピスや研究者達と一緒に街道近くの草原に座り込んで話始めた。
その話は、マクシェルの近くにいた宮廷魔法師の風魔法によって、馬車を警護していた他の騎士達や宮廷魔法師達にも届けられた。
「フィアンツ帝国は、ペトロート王国があるこの大陸で一番の領土を誇る大国になります。そして、1年中温暖な気候で肥沃な土地、海に山にと豊富な資源があるため、とても住みやすい国です」
「それは、ペトロート王国も同じようなことが言えると思いますが?」
首を傾げる研究者の問いに、マクシェルは少しだけ苦笑いを浮かべると小さく首を横に振った。
「確かに、我がペトロート王国も帝国と同じように温暖な気候ではありますが、領土からして我が国が有している資源や土地は、広大な土地を有する帝国には遥かに及びませんよ」
「言われてみれば、そうでした」
国を囲うように森や山が東西南北に広がっているペトロート王国は、帝国に比べると肥沃な土地も豊富な資源もあまり無い。
(海も無ければ、資源も肥沃な土地もあまり無い国だからこそ、魔法技術を発展させようとしたのだが……)
『魔法は貴族のためにあるものだ! 下賤な平民が使って良いものではない!』
脳裏に蘇った愚者の言葉に、思わず小さく拳を握ったマクシェル。
「マクシェル殿、どうされました?」
「いえ、何でもありませんよ。では、話の続きといきましょうか」
下がっていた口角を上げたマクシェルは、いつの間にか聴取が増えたことに気づきながらも話を続けた。
「首都はカノン。ペトロート王国と同様、魔法文化が進んでいる国でもあります。それは、研究者の皆様もご存知ですよね?」
マクシェルの言葉に、研究者達は一様に頷いた。
そんな彼らに、安堵の笑みを浮かべたマクシェルは問いかけた。
「ただ、ペトロート王国とフィアンツ帝国とでは大きな違いがあります。それは何か分かりますか?」
「魔法師の数でしょうか?」
「確かに帝国と王国では、総人口に差がありますから当然、魔法師の数は異なります。ですが、違いますね」
「それでは、1人当たりの習得している魔法の数でしょうか?」
「それは帝国も王国も同じなので違います」
「では一体……」
研究者達が難しい顔をしながら揃って首を傾げていると、いつの間にかラピスの横にいた宮廷魔法師が口にした。
「魔道具技術の差、ですよね?」
「「「「「「!?」」」」」」
「そうです。さすがですね、カトレア様」
ニッコリ笑うマクシェルの視線の先には、不機嫌そうな顔で鼻を鳴らすカトレアがいた。
「知っていて当然です。そもそも、今回帝国に行くことになった目的の1つとして、その魔道具技術を盗むためでもあるのですから」
「盗むなんて……我々はただ、研究の一環として魔道具技術を勉強するために帝国に来たのです」
「それの一体、何が違うのやら……それしては、さっきの問いにあっさり答えられなかったけど」
「っ!?」
「まぁまぁ、答えが出ましたしそのくらいにしましょう」
「……それもそうですね」
カトレアと研究者達の間に剣呑な空気が流れた瞬間、それを察知したマクシェルは穏やかな口調で彼らを宥めた。
そんなマクシェルに罪悪感を覚えたカトレアは、彼から目を逸らすとそのままラピスの横に座った。
「カトレア、今のは言い過ぎだったんじゃないか?」
「……うるさい」
(私だって、こんなこと言いたくないわよ)
僅かに眉を顰めるとカトレアをよそに、マクシェルは話の続きをし始めた。
「カトレア様がおっしゃった通り、我が国と帝国とでは魔道具技術が大きく差があります。それは、研究者の皆様が一番分かっていると思います。故に、今回の帝国行きが決まったことでしょうし」
先程とは打って変わって顔を俯かせて沈黙する研究者達に、マクシェルは一瞬目を伏せると少しだけ笑みを潜めた。
「王国に流通している魔道具は、全て魔力で動かします。対して、帝国に流通している魔道具の約半数は、魔物から取れる魔石で動かしています。この時点で、王国と帝国で日常的に魔道具を使う人の数が大きく異なります。これが、魔道具技術に差が生まれたのです」
「何でしょうか?」
「フィアンツ帝国とは一体、どんな国なのでしょうか?」
国境を越えてから帝都に繋がる道を走っている王国一行。
そんな中、マクシェルが乗っていた馬車を護衛していたラピスは、ふと気になって馬車の中から外を眺めていたマクシェルに聞いた。
「おや、ラピス様はフィアンツ帝国のことはどの程度ご存じで?」
「ペトロート王国の隣国としか……すみません、事前に勉強をしていたのですが、いかんせん我が騎士団には帝国に関する文献があまりなくて」
「ラピス様。それは、我ら宮廷魔法師団も同じです」
「えっ、そうなのですか?」
マクシェルとラピスの会話を聞いていた研究者の1人が、首を傾げるラピスに向かって小さく頷いた。
「えぇ、なぜか我が団にも帝国に関する本が無かったのです」
「そうでしたか」
揃って目を伏せた研究者とラピスを見て、マクシェルは小さく溜息をつくと視線を鬱蒼とした森に移した。
「まぁ、それも全てあやつのせいだが」
誰の耳にも届かないまま風に乗ったマクシェルの呟きは、感情を抑えるように小さく拳を握った彼の心情も連れ去ってしまった。
「では、旅の暇つぶしとして、フィアンツ帝国についてお話しましょう」
「ありがとうございます、マクシェル殿」
街道をしばらく走った後、一行は休憩を兼ねて街道の脇で馬車を止めた。
そのタイミングで馬車から降りたマクシェルは、ラピスや研究者達と一緒に街道近くの草原に座り込んで話始めた。
その話は、マクシェルの近くにいた宮廷魔法師の風魔法によって、馬車を警護していた他の騎士達や宮廷魔法師達にも届けられた。
「フィアンツ帝国は、ペトロート王国があるこの大陸で一番の領土を誇る大国になります。そして、1年中温暖な気候で肥沃な土地、海に山にと豊富な資源があるため、とても住みやすい国です」
「それは、ペトロート王国も同じようなことが言えると思いますが?」
首を傾げる研究者の問いに、マクシェルは少しだけ苦笑いを浮かべると小さく首を横に振った。
「確かに、我がペトロート王国も帝国と同じように温暖な気候ではありますが、領土からして我が国が有している資源や土地は、広大な土地を有する帝国には遥かに及びませんよ」
「言われてみれば、そうでした」
国を囲うように森や山が東西南北に広がっているペトロート王国は、帝国に比べると肥沃な土地も豊富な資源もあまり無い。
(海も無ければ、資源も肥沃な土地もあまり無い国だからこそ、魔法技術を発展させようとしたのだが……)
『魔法は貴族のためにあるものだ! 下賤な平民が使って良いものではない!』
脳裏に蘇った愚者の言葉に、思わず小さく拳を握ったマクシェル。
「マクシェル殿、どうされました?」
「いえ、何でもありませんよ。では、話の続きといきましょうか」
下がっていた口角を上げたマクシェルは、いつの間にか聴取が増えたことに気づきながらも話を続けた。
「首都はカノン。ペトロート王国と同様、魔法文化が進んでいる国でもあります。それは、研究者の皆様もご存知ですよね?」
マクシェルの言葉に、研究者達は一様に頷いた。
そんな彼らに、安堵の笑みを浮かべたマクシェルは問いかけた。
「ただ、ペトロート王国とフィアンツ帝国とでは大きな違いがあります。それは何か分かりますか?」
「魔法師の数でしょうか?」
「確かに帝国と王国では、総人口に差がありますから当然、魔法師の数は異なります。ですが、違いますね」
「それでは、1人当たりの習得している魔法の数でしょうか?」
「それは帝国も王国も同じなので違います」
「では一体……」
研究者達が難しい顔をしながら揃って首を傾げていると、いつの間にかラピスの横にいた宮廷魔法師が口にした。
「魔道具技術の差、ですよね?」
「「「「「「!?」」」」」」
「そうです。さすがですね、カトレア様」
ニッコリ笑うマクシェルの視線の先には、不機嫌そうな顔で鼻を鳴らすカトレアがいた。
「知っていて当然です。そもそも、今回帝国に行くことになった目的の1つとして、その魔道具技術を盗むためでもあるのですから」
「盗むなんて……我々はただ、研究の一環として魔道具技術を勉強するために帝国に来たのです」
「それの一体、何が違うのやら……それしては、さっきの問いにあっさり答えられなかったけど」
「っ!?」
「まぁまぁ、答えが出ましたしそのくらいにしましょう」
「……それもそうですね」
カトレアと研究者達の間に剣呑な空気が流れた瞬間、それを察知したマクシェルは穏やかな口調で彼らを宥めた。
そんなマクシェルに罪悪感を覚えたカトレアは、彼から目を逸らすとそのままラピスの横に座った。
「カトレア、今のは言い過ぎだったんじゃないか?」
「……うるさい」
(私だって、こんなこと言いたくないわよ)
僅かに眉を顰めるとカトレアをよそに、マクシェルは話の続きをし始めた。
「カトレア様がおっしゃった通り、我が国と帝国とでは魔道具技術が大きく差があります。それは、研究者の皆様が一番分かっていると思います。故に、今回の帝国行きが決まったことでしょうし」
先程とは打って変わって顔を俯かせて沈黙する研究者達に、マクシェルは一瞬目を伏せると少しだけ笑みを潜めた。
「王国に流通している魔道具は、全て魔力で動かします。対して、帝国に流通している魔道具の約半数は、魔物から取れる魔石で動かしています。この時点で、王国と帝国で日常的に魔道具を使う人の数が大きく異なります。これが、魔道具技術に差が生まれたのです」
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