木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国

第198話 魔道具技術の差

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「さすが、マクシェル殿。下級文官とはいえ、国王陛下から勅命を下された御仁であります」


 苦笑しながら褒め称える研究者に、マクシェルは笑みを浮かべながら小さく首を横に振った。


「いえいえ、これくらい。王国に仕える文官ならことですよ」


 (だったら、王国に仕える文官なら魔物一匹をあっさり倒してしまうのかしら?)

 朗らかな笑みで謙遜するマクシェルに、カトレアは疑うように少しだけ目を細めた。
 そんな彼女の視線に気づいたのか、マクシェルがカトレアの方に微笑みかけると、視線を大勢の聴衆に戻した。


「では、マクシェル殿は王国の魔道具技術についてどう思われますか?」
「それは、下級文官の身ではあまりにも身分不相応では……」
「良いじゃないのですか?」
「カトレア?」


 その場にいた者の視線が一斉に自分に向いたカトレアは、不機嫌そうに小さく鼻を鳴らした。


「ここには、宰相閣下や騎士団長に宮廷魔法師団長がいません。だから、ここであなたが王国に対して苦言を呈しても、あなたをクビにする立場の人間はいませんよ」


 (それに、下級文官の世迷言をわざわざ上司に言うバカはここにはいないだろうし)


「つまり、あなたがここで言いたいことを言っても良いのではないでしょうか?」
「……分かりました。そういうことでしたら、お言葉に甘えます」


 さりげなく背中を押してくれたカトレアに、マクシェルは立ち上がって静かにお辞儀をした。
 そして、腰を下ろすと少しだけ俯いた。


「では、これから話すことは、あくまで『下級文官の的外れな見解』ということで聞いて欲しいのですが……」




「まず、王国と帝国とでは魔道具に対する需要が異なることです」
「需要ですか?」


 首を傾げる研究者達に、顔を上げたマクシェルが静かに頷いた。


「はい。研究者の皆様もご存知かと思いますが、王国の魔道具は全て魔力を使うため、豊富な魔力を有する貴族や王族に需要が行きます」
「そうですね。それが、王国での常識ですし」
「もちろん、平民にも魔力がありますが……王国の魔道具はどれも初級魔法一回分の魔力を使いますし、何より値が張ります。ですから、平民には到底手が出せる代物ではございません」


 そう言って、マクシェルは懐から王国で作られた小型の魔道具を取り出した。

 (そう、王国で作られる魔道具は全て魔力を使う。そして、流通する魔道具は全て高額だ。そのため、王国において魔道具の需要は貴族や王族に限られ、国民の大多数を占める平民が王国産の魔道具を使うことは、金銭的にも使用魔力量的にもありえないのだ)


「それに対し、帝国で作られている魔道具の大半は、魔石を使います。魔石で動く魔道具は、当然のことながら魔力は使いませんし、魔力を使う魔道具に比べてもとても安価です。そのため、貴族だけでなく平民にも需要があるのです」
「確かにそうかもしれませんが……ですが、それだけでどうして我が国と帝国とで魔道具技術が大きく異なったのでしょうか?」
「それこそが、魔道具技術に差を生み出したからです」
「えっ?」


 難しい顔をする研究者達に、マクシェルは小さく笑みを浮かべた。


「魔道具の技術は、誰かに使ってもらわなければ進歩しない。これは、魔道具を研究している皆様なら知っていることですよね」
「まぁ、そうですけど……ハッ! つまり!」
「フフッ、もう分かったみたいですね」


 得意げな笑みを浮かべたマクシェルは、懐から帝国で作られた小型の魔道具を取り出すと、両手に2つの魔道具を持った。


「これは、火をつける魔道具ですが……需要が異なれば、魔道具技術にも大きく差が出てくる」
「つまり、魔道具の需要こそが魔道具技術の発展に大きく繋がってくるということですね?」
「そういうことです」


 (魔道具を使ってくれる人が多ければ多いほど、新たな発見も生まれて来るだろうし、課題も出てくる。それこそが、魔道具技術の発展にも大きく関わってくるのだ)

 研究者達が一様に納得した表情をすると、マクシェルは2つの魔道具を懐に戻した。
 すると、研究者の1人が何かを思い出して暗い顔をした。


「ですが、平民が王国の魔道具を使わない最大の理由は、金銭的なものや使用魔力量ではなく……」
「宰相閣下の采配、ですね?」
「はい」


 研究者の答えに、マクシェルは小さく拳を握った。
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