木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国

第205話 帝国の魔法研究所

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「それにしても、帝国の研究所って広いのね。王国の研究所に比べるまでもないわ」
「そうだな」


 マクシェルのことを一旦頭の隅に置いたカトレアは、地図と見比べながら研究所内に目を向けた。

 王城近くにある帝国の魔法研究所は、白一色に統一された10階建ての巨大な建物で、中は個別の研究室や研究内容を議論するための会議室など、用途に合わせた大小様々な部屋が多数あった。
 そして、カトレア達がいくつもの部屋の前を通ると、時折、部屋から研究者達が熱い意見を交わしている声が漏れ聞こえていた。

 (前々から話には聞いていたけど、帝国って随分と魔道具の研究に力を入れているのね。まぁ、研究者達の持っている物を見れば分かるけど)

 白衣を着た研究者達とすれ違う度に、カトレアは彼らが持っている古い書籍や研究内容が記されている書類、王国で見たことが無い魔道具に目を奪われていた。

 (さっき、私とすれ違った研究者が持っていた魔道具、王国で見たことない物だったから……恐らく、試作の魔道具かしら?)


「はぁ……任務を終わらせたら、どこかの研究室を見学させてもらえないかしらね?」
「まぁ、うちの研究者達も今頃、どこかの研究室を見学している頃だから……もしかすると、今から会う人物にお願いしたら、ご厚意で見せてくれるかもしれないな」
「確かに、私たちが今から会いに行く人って、この研究所の副所長さんだから、お願いしたら見せてくれるかもしれないわね」


 自分の隣を歩いてくれているラピスとそんなことを話しながら、カトレアは研究所と地図を交互に見ながら歩いていると、不意に先程ラピスと一緒に乗った物のことを思い出した。


「そう言えば私、人生で初めて『魔道エレベーター』ってものに乗ったけど……本当にあっという間に目的地に着いたから驚いたわ」
「そうだな。俺も初めて乗ったが……確か、魔道エレベーターって転移魔法の応用で作られたものだよな?」
「えぇ、そうよ。それに、魔道エレベーターの中に乗る人の少量の魔力で、動くのだから良いわよね」


 研究者達と別れた後、カトレアとラピスは手紙の中にあった地図を頼りに、研究所の受付近くにあった魔道エレベーターを使って、目的の人物がいる10階まで移動したのだ。


「あの魔道具、王国にも欲しいわね」
「王国には転移陣があるから、無くても問題ないだろ。そもそも、帝国の研究所のような高い建物がないじゃないか」
「そうね。でも、宮廷魔法師団本部と騎士団本部を行き来するくらいは使えるじゃない?」
「言われてみればそうだが……宰相閣下が使うことを許さないだろ」
「あっ、そうだったわね……」


 (どうして、うちの宰相閣下ってあんなにも排他的な考えなの?)

 王国産の魔道具以外は一切認めないノルベルトの方針を思い出し、カトレアは思わず溜息をついた。


「そう言えば、昨日の休憩中にマクシェル殿が話していたが、帝国内にはいくつもの魔法研究所があるらしいな」
「そうなの?」


 (王国には宮廷魔法師団内にある研究所しかないけど、帝国にはいくつもあるのね)

 首を傾げるカトレアに、ラピスは小さく頷いた。


「あぁ、特にここ、帝都カノンにある魔法研究所が帝国で一番の大きい研究所らしい」
「そうなのね」


 ラピスの言葉に深く頷いたカトレアは、すれ違う度にこちらを不思議そうに見てくる研究者達を一瞥した。


「あと、帝国の研究者達って色んな人種や種族がいるのね」
「当たり前だろ。ここは、大陸イチの領土を誇り、多種多様な人種や種族が暮らすがいる国だ。人間と同じように、獣人が研究者として働いていても何ら不思議じゃない」
「それに、身分の関係無いのよね?」
「あっ、そう、だが……お前、休憩中にしていたマクシェル殿の話を聞いていたのか?」
「当たり前でしょ。だってあの時、あんたの隣にいたんだから」


 (マクシェル殿が話している間、どこかうわの空だったから、てっきり聞いていないものかと思った)

 予想外の事実に驚いているラピスをよそに、カトレアは再び小さく溜息をつくと視線を地図に戻した。

 帝国では、身分重視の王国とは違い、興味や意欲があれば、平民でも種族関係なく魔法や剣技を身につけることが出来る。
 そして、最低限の魔法の知識とやる気があれば、身分や種族関係無く魔法研究所に入ることが許されている。
 ちなみに、王国の魔法研究所に入る条件として、必ず貴族でないといけない。


「身分も種族も関係無く魔法の勉強出来る……だからこそ、汎用性が高い有能な魔道具が量産されるのね」
「そうだな。帝国産の魔道具は、大陸だけでなく世界中で有名な物みたいだからな」
「……そうね」


 (王国の魔道具も帝国と同じくらい有名になればいいのに)

 少しだけ悔しい顔をしたカトレアは、気持ちを落ち着けるように大きく息を吐くと、目的の人物がいる部屋の前で足を止めた。


「それで、私はこの部屋にいる『マーザス・アラウェイ』って人に手紙を渡して、王国からの預かり物を受け取ればいいのよね?」
「あぁ、何でも、『帝国イチの天才魔法師』らしいぞ」
「へぇ~」


 (帝国の天才魔法師。それは、是非とも会わないといけないわね)

 扉の前に立ったカトレアは、勝気な笑みを浮かべた。
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