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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第207話 帝国の魔道具
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「さて、立ち話も何だから座って話そうか。君たちのためにとっておきのお菓子と紅茶も用意したから」
「はっ、はぁ……」
ラピスが落ち着いたタイミングで、マーザスに誘われるがまま、カトレアは応接セットのソファーに座った。
すると、ピンク色の大きな箱型カバーがテーブルに鎮座していることに気づいた。
(これが、お菓子と紅茶? どう見ても、ピンク色の可愛らしい大きな箱にしか見えないんだけど……)
「あの、紅茶と茶菓子とはどこに……」
「もちろんここだよ」
「えっ?」
目の前の箱を指差したマーザスに、カトレアは怪しむように眉を顰めた。
それを見たマーザスは、笑みを浮かべたまま箱の上にある取っ手を持った。
「それじゃあ、行くね……はい!」
「「っ!?」」
マーザスが大袈裟にカバーを開けると、そこから立派なアフタヌーンティーセットが現れた。
((本当に、紅茶とお菓子が現れた))
一瞬の出来事にカトレアとラピスが啞然としていると、向かい側に座っていたマーザスが、カトレアの後ろに控えているラピスに目を向けた。
「ねぇ、君も座ったらどうだい? せっかく君の分も用意したんだから」
「いえ、自分は騎士ですので……」
「大丈夫だよ。何かが起こったら、僕が筆頭宮廷魔法師の名に懸けて守ってあげるから」
「そう、ですか……でしたら、お言葉に甘えて」
マーザスの無言の圧力に負けたラピスは、小さく溜息をつくとそのままカトレアの隣に座った。
「はい、どうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
マーザスから差し出されたティーカップを受け取ったカトレアとラピスは、ほのかに湯気が立つ紅茶に視線を落とした。
(カバーに入っていたとは思えない程の淹れたてのような紅茶の良い香り。これは一体……)
「さぁさぁ、2人とも。冷めないうちに飲んでみて」
「あっ、はい。いただきます」
「いただきます」
マーザスに促されて恐る恐る口を付けたカトレアとラピスは、侍女が淹れたような紅茶の美味しさに目を見開いた。
(美味しい。温度も丁度良いし、時間が経った時に出る紅茶特有の苦みもない)
「どうかな? 味の方は?」
「……美味しいです。淹れたてのような甘みもあってとても」
「ありがとう。それで、そっちの君は?」
「はい、とても美味しいです」
2人の反応を見て、マーザスは満足げに笑うと紅茶を一口飲んだ。
「うん、美味しいね」
「あの、そのカバーは一体……」
(色々聞きたいこともあるし、先に任務を完遂させないといけないけど……魔道具作りに携わっている宮廷魔法師として、今はそのカバーについて聞かないと!)
任務より好奇心を優先したカトレアが、マーザスの隣に置いてあるカバーに目を向けた。
すると、持っていたティーカップをテーブルに置いたマーザスが、膝の上にカバーを乗せた。
「あぁ、これ? これは、収納魔法を付与した魔道具だよ」
「「収納魔法!?」」
(収納魔法って、言わずと知れた非属性魔法じゃない!)
驚きのあまり大声を上げて立ち上がった2人に、マーザスは再び満足げに笑うとカバーを優しく撫でた。
「そう! これは、主にマジックバックに使われている収納魔法を用いた新しい魔道具! 収納魔法には時間経過の概念が無いからね! それを利用して作ったのさ!」
「なるほど。つまり、収納魔法の特性をカバーに付与すれば、私たちが来訪する前に用意した紅茶でも、淹れたてと変わらない温かさで飲めるということですね?」
「そういうこと!」
(さすが、優れた魔道具技術を持つフィアンツ帝国。このような魔道具まであるなんて……)
マーザスの膝の上にある魔道具を興味深げに見るカトレアに対し、マーザスは少し苦笑いを浮かべた。
「とは言っても、これを使うには魔力が必要だから、売るとすれば貴族向けになるね。平民向けに販売するには魔石が必須になるから、それを踏まえて更なる改良をしないと」
「そう言えば、貴国では平民向けの魔道具もあるのでしたね」
感心するように頷いたラピスに、マーザスは一瞬だけ目を細めると深く溜息をついた。
「あぁ、そうだった。すっかり忘れていた。今の君たちの国って、魔道具は全て貴族にしか売っていなかったんだよね。全く、とんだバカなことしてくれたよ。お陰で、帝国では一時期、魔道具が売れないということが……」
「あの?」
小首を傾げるカトレアとラピスに気づいたマーザスは、再び深く溜息をつくと笑みを浮かべて小さく首を横に振った。
「いや、何でも無いよ。ごめんね、見苦しいところを見せて」
「あっ、いえ……」
ラピスが申し訳なさそうに俯くと、カトレアが小さく鼻を鳴らしてマーザスに冷たい視線を向けた。
「そもそも、どうして平民向けの魔道具を作っているのですか? 魔力の少ないのですから、魔道具が使えなくても仕方ないじゃないですか」
「おい、カトレア……」
不機嫌なカトレアに気づいたラピスが慌てて止めようとするが、カトレアは構わず問い質した。
「だいたい、膨大な魔力を持った人間が、魔力をあまり持たない人間のことを気にするなんて、時間と労力の無駄じゃないですか?」
(あのワケアリ下級文官の話を聞いてから、ずっと気になっていた。どうしてフィアンツ帝国は、魔力の少ない平民に魔法を教えたり、平民向けの魔道具を作ったりしているのだろう? 王国だったら、そんな非効率なことはしない)
愚かなことだと蔑むカトレアに、マーザスは笑みを止めた。
「はっ、はぁ……」
ラピスが落ち着いたタイミングで、マーザスに誘われるがまま、カトレアは応接セットのソファーに座った。
すると、ピンク色の大きな箱型カバーがテーブルに鎮座していることに気づいた。
(これが、お菓子と紅茶? どう見ても、ピンク色の可愛らしい大きな箱にしか見えないんだけど……)
「あの、紅茶と茶菓子とはどこに……」
「もちろんここだよ」
「えっ?」
目の前の箱を指差したマーザスに、カトレアは怪しむように眉を顰めた。
それを見たマーザスは、笑みを浮かべたまま箱の上にある取っ手を持った。
「それじゃあ、行くね……はい!」
「「っ!?」」
マーザスが大袈裟にカバーを開けると、そこから立派なアフタヌーンティーセットが現れた。
((本当に、紅茶とお菓子が現れた))
一瞬の出来事にカトレアとラピスが啞然としていると、向かい側に座っていたマーザスが、カトレアの後ろに控えているラピスに目を向けた。
「ねぇ、君も座ったらどうだい? せっかく君の分も用意したんだから」
「いえ、自分は騎士ですので……」
「大丈夫だよ。何かが起こったら、僕が筆頭宮廷魔法師の名に懸けて守ってあげるから」
「そう、ですか……でしたら、お言葉に甘えて」
マーザスの無言の圧力に負けたラピスは、小さく溜息をつくとそのままカトレアの隣に座った。
「はい、どうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
マーザスから差し出されたティーカップを受け取ったカトレアとラピスは、ほのかに湯気が立つ紅茶に視線を落とした。
(カバーに入っていたとは思えない程の淹れたてのような紅茶の良い香り。これは一体……)
「さぁさぁ、2人とも。冷めないうちに飲んでみて」
「あっ、はい。いただきます」
「いただきます」
マーザスに促されて恐る恐る口を付けたカトレアとラピスは、侍女が淹れたような紅茶の美味しさに目を見開いた。
(美味しい。温度も丁度良いし、時間が経った時に出る紅茶特有の苦みもない)
「どうかな? 味の方は?」
「……美味しいです。淹れたてのような甘みもあってとても」
「ありがとう。それで、そっちの君は?」
「はい、とても美味しいです」
2人の反応を見て、マーザスは満足げに笑うと紅茶を一口飲んだ。
「うん、美味しいね」
「あの、そのカバーは一体……」
(色々聞きたいこともあるし、先に任務を完遂させないといけないけど……魔道具作りに携わっている宮廷魔法師として、今はそのカバーについて聞かないと!)
任務より好奇心を優先したカトレアが、マーザスの隣に置いてあるカバーに目を向けた。
すると、持っていたティーカップをテーブルに置いたマーザスが、膝の上にカバーを乗せた。
「あぁ、これ? これは、収納魔法を付与した魔道具だよ」
「「収納魔法!?」」
(収納魔法って、言わずと知れた非属性魔法じゃない!)
驚きのあまり大声を上げて立ち上がった2人に、マーザスは再び満足げに笑うとカバーを優しく撫でた。
「そう! これは、主にマジックバックに使われている収納魔法を用いた新しい魔道具! 収納魔法には時間経過の概念が無いからね! それを利用して作ったのさ!」
「なるほど。つまり、収納魔法の特性をカバーに付与すれば、私たちが来訪する前に用意した紅茶でも、淹れたてと変わらない温かさで飲めるということですね?」
「そういうこと!」
(さすが、優れた魔道具技術を持つフィアンツ帝国。このような魔道具まであるなんて……)
マーザスの膝の上にある魔道具を興味深げに見るカトレアに対し、マーザスは少し苦笑いを浮かべた。
「とは言っても、これを使うには魔力が必要だから、売るとすれば貴族向けになるね。平民向けに販売するには魔石が必須になるから、それを踏まえて更なる改良をしないと」
「そう言えば、貴国では平民向けの魔道具もあるのでしたね」
感心するように頷いたラピスに、マーザスは一瞬だけ目を細めると深く溜息をついた。
「あぁ、そうだった。すっかり忘れていた。今の君たちの国って、魔道具は全て貴族にしか売っていなかったんだよね。全く、とんだバカなことしてくれたよ。お陰で、帝国では一時期、魔道具が売れないということが……」
「あの?」
小首を傾げるカトレアとラピスに気づいたマーザスは、再び深く溜息をつくと笑みを浮かべて小さく首を横に振った。
「いや、何でも無いよ。ごめんね、見苦しいところを見せて」
「あっ、いえ……」
ラピスが申し訳なさそうに俯くと、カトレアが小さく鼻を鳴らしてマーザスに冷たい視線を向けた。
「そもそも、どうして平民向けの魔道具を作っているのですか? 魔力の少ないのですから、魔道具が使えなくても仕方ないじゃないですか」
「おい、カトレア……」
不機嫌なカトレアに気づいたラピスが慌てて止めようとするが、カトレアは構わず問い質した。
「だいたい、膨大な魔力を持った人間が、魔力をあまり持たない人間のことを気にするなんて、時間と労力の無駄じゃないですか?」
(あのワケアリ下級文官の話を聞いてから、ずっと気になっていた。どうしてフィアンツ帝国は、魔力の少ない平民に魔法を教えたり、平民向けの魔道具を作ったりしているのだろう? 王国だったら、そんな非効率なことはしない)
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