227 / 606
第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第213話 解くなら一緒に
しおりを挟む
「っ!? それって……」
(俺が、顔も知らない誰かによってカトレアや家族や友人の記憶を無くしたり、そいつの駒として自分の意思に関係なく殺めたりすることが出来たりするってことなのか!?)
愕然した表情のラピスに、マーザスは小さく頷いた。
「術者がその気になれば、改竄魔法で対象者の自我を無くす……廃人にすることも出来る。実際、300年前に起きた争いだって、術者が自国の貴族達を全員廃人にして手駒にすることが出来たから起きたみたいだし」
「「300年前の争い?」」
(そう言えばマーザス様、さっきも『300年前が~』っておっしゃっていたけど、300年前に一体に何があったのかしら?)
「マーザス殿、300年前の争いとは一体……」
「あぁ、それさえも忘れてしまったのか。ごめん、今の話は忘れて」
「はっ、はぁ……」
沈痛な表情で頭を抱えたマーザスを見て、ラピスは腑に落ちないまま静かに口を閉じた。
すると、ラピスの隣から白魚のような綺麗な白くて細長い手が、ラピスの大きくて屈強な手を包み込んだ。
「えっ!? カトレア……」
「ラピス、心配してくれてありがとう。でも私、絶対に改竄魔法を解きたい!」
懇願するような目を向けるカトレアに、ラピスは心配そうな顔で少しだけ体を彼女の方に向けた。
「……それは、やはり魔法師として許せないからか?」
「それもあるけど……一番は、マーザス様がおっしゃっていたように、術者のせいで大切な人達の記憶を無くしたくはないし、術者の駒として無差別に誰を殺めるようなことはしたくないの」
(術者の改竄魔法で、大切な人達を忘れることも、廃人になって手駒にとして誰かを殺めることも、国に仕える宮廷魔法師として真っ平ごめんよ!)
ラピスの手を包んだ両手に手に力が入った。
カトレアの揺るがない強い意思を聞いて、ラピスは奥歯を小さく噛み締めると情けない表情を無理やり引き締めた。
「分かった。でも、お前1人だけはしない」
「えっ? ラピス、それってつまり……」
啞然するカトレアをよそに、ラピスは視線をマーザスに移した。
「マーザス殿、お願いがあります」
「『俺にも解呪魔法をかけて欲しい』って?」
「はい」
「ラピス!!」
(あなたまで無理をすることじゃないわ!)
ラピスの決意を聞いたカトレアは、慌てて立ち上がると鎧で覆われたラピスの両肩を両手で掴んだ。
すると、カトレアの細長い手の上から大きな手を重ねられた。
「俺はお前の騎士だ。お前が意地でも改竄魔法を解くと言うのなら、騎士である俺も一緒に解く」
「でもっ! 私に付き合ってあなたが苦しい目に遭わなくても……」
「カトレア」
瞼に涙を浮かべながら心配するカトレアに、ラピスは優しく微笑みかけた。
「俺もお前と同じで、術者によってお前や大切な人達のことを忘れることも、廃人になって手駒として守るべき人達を殺めることもしたくない。これは、自分の意思で決めたことだ」
「ラピス……」
『良いのよ、別に付き合わなくたって』
『いや、これは俺の意思だ。婚約者としてお前の騎士になることは』
(そうだったわ。こいつは、どんなに苦しくても、どんなに無茶なことでも、私の騎士として私の意思を尊重して、『自分の意思』だと言って一緒についてきてくれた。だっだら……)
ラピスの意思を受け取ったカトレアは、両肩に乗せていた両手を離すと、静かにソファーに座った。
「分かったわ、あんたの意思を尊重する」
「あぁ、そうしてくれると助かる」
満足げな笑みを浮かべるラピスに、カトレアは小さく溜息をついた。
すると、ラピスがカトレアの両肩を優しく掴んだ。
「それよりも、体の方は大丈夫なのか? いきなり立ち上がって、とても心配したが」
「えぇ、今迄あんたが支えていてくれていたから大丈夫よ。それに……」
カトレアは目の前にいる帝国の宮廷魔法師に目を向けた。
「今から改竄魔法を解くのだから、ちゃんと体調を整えないと。そうですよね、マーザス様?」
「あぁ、そうだね」
ニッコリと笑ったマーザスは、親友から預かった銀色の杖を持つと立ち上がった。
「それじゃあ、2人の覚悟が決まったことだし早速始めようか」
(俺が、顔も知らない誰かによってカトレアや家族や友人の記憶を無くしたり、そいつの駒として自分の意思に関係なく殺めたりすることが出来たりするってことなのか!?)
愕然した表情のラピスに、マーザスは小さく頷いた。
「術者がその気になれば、改竄魔法で対象者の自我を無くす……廃人にすることも出来る。実際、300年前に起きた争いだって、術者が自国の貴族達を全員廃人にして手駒にすることが出来たから起きたみたいだし」
「「300年前の争い?」」
(そう言えばマーザス様、さっきも『300年前が~』っておっしゃっていたけど、300年前に一体に何があったのかしら?)
「マーザス殿、300年前の争いとは一体……」
「あぁ、それさえも忘れてしまったのか。ごめん、今の話は忘れて」
「はっ、はぁ……」
沈痛な表情で頭を抱えたマーザスを見て、ラピスは腑に落ちないまま静かに口を閉じた。
すると、ラピスの隣から白魚のような綺麗な白くて細長い手が、ラピスの大きくて屈強な手を包み込んだ。
「えっ!? カトレア……」
「ラピス、心配してくれてありがとう。でも私、絶対に改竄魔法を解きたい!」
懇願するような目を向けるカトレアに、ラピスは心配そうな顔で少しだけ体を彼女の方に向けた。
「……それは、やはり魔法師として許せないからか?」
「それもあるけど……一番は、マーザス様がおっしゃっていたように、術者のせいで大切な人達の記憶を無くしたくはないし、術者の駒として無差別に誰を殺めるようなことはしたくないの」
(術者の改竄魔法で、大切な人達を忘れることも、廃人になって手駒にとして誰かを殺めることも、国に仕える宮廷魔法師として真っ平ごめんよ!)
ラピスの手を包んだ両手に手に力が入った。
カトレアの揺るがない強い意思を聞いて、ラピスは奥歯を小さく噛み締めると情けない表情を無理やり引き締めた。
「分かった。でも、お前1人だけはしない」
「えっ? ラピス、それってつまり……」
啞然するカトレアをよそに、ラピスは視線をマーザスに移した。
「マーザス殿、お願いがあります」
「『俺にも解呪魔法をかけて欲しい』って?」
「はい」
「ラピス!!」
(あなたまで無理をすることじゃないわ!)
ラピスの決意を聞いたカトレアは、慌てて立ち上がると鎧で覆われたラピスの両肩を両手で掴んだ。
すると、カトレアの細長い手の上から大きな手を重ねられた。
「俺はお前の騎士だ。お前が意地でも改竄魔法を解くと言うのなら、騎士である俺も一緒に解く」
「でもっ! 私に付き合ってあなたが苦しい目に遭わなくても……」
「カトレア」
瞼に涙を浮かべながら心配するカトレアに、ラピスは優しく微笑みかけた。
「俺もお前と同じで、術者によってお前や大切な人達のことを忘れることも、廃人になって手駒として守るべき人達を殺めることもしたくない。これは、自分の意思で決めたことだ」
「ラピス……」
『良いのよ、別に付き合わなくたって』
『いや、これは俺の意思だ。婚約者としてお前の騎士になることは』
(そうだったわ。こいつは、どんなに苦しくても、どんなに無茶なことでも、私の騎士として私の意思を尊重して、『自分の意思』だと言って一緒についてきてくれた。だっだら……)
ラピスの意思を受け取ったカトレアは、両肩に乗せていた両手を離すと、静かにソファーに座った。
「分かったわ、あんたの意思を尊重する」
「あぁ、そうしてくれると助かる」
満足げな笑みを浮かべるラピスに、カトレアは小さく溜息をついた。
すると、ラピスがカトレアの両肩を優しく掴んだ。
「それよりも、体の方は大丈夫なのか? いきなり立ち上がって、とても心配したが」
「えぇ、今迄あんたが支えていてくれていたから大丈夫よ。それに……」
カトレアは目の前にいる帝国の宮廷魔法師に目を向けた。
「今から改竄魔法を解くのだから、ちゃんと体調を整えないと。そうですよね、マーザス様?」
「あぁ、そうだね」
ニッコリと笑ったマーザスは、親友から預かった銀色の杖を持つと立ち上がった。
「それじゃあ、2人の覚悟が決まったことだし早速始めようか」
7
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!
六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。
家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能!
「ここなら、自由に生きられるかもしれない」
活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。
「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる