木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国

第214話 呪いを解く

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「じゃあ、この部屋で改竄かいざん魔法を解くね」
「この部屋ですか?」


 (室内を囲むように本棚やクローゼットなどが置かれているけど、魔法を放っても大丈夫なのかしら?)

 心配そうな顔で部屋を見渡したカトレアに、マーザスは小さく頷いた。


「うん。この部屋には魔法を放っても傷1つ付かないよう、防御魔法を施しているから……って、あっ!」
「どうされましたか、マーザス様?」


 小首を傾げたカトレアに対し、マーザスが頬を掻きながら苦笑いを浮かべた。


「実は、僕もあまりやったことがない魔法だから……解呪魔法は、1人ずつやってもいいかな?」
「そういうことでしたら、私は構いません」
「自分も問題ありません」
「ありがとう。それじゃあ、カトレア君は僕の目の前に立って。ラピス君は、カトレア君に何があってもいいように、彼女すぐ後ろで控えていて」
「「はい」」


 ソファーから立ち上がったカトレアとラピスは、マーザスから言われた通りの場所に立った。
 すると、不意にラピスはマーザスが持っている杖が気になった。


「それにしても、その大きさの杖を軽々と持てるなんて……マーザス殿って、日頃から鍛えていらっしゃるのですか?」
「ううん、違うよ」
「えっ?」


 (では、どうやって背丈とあまり変わらない大きさの杖を軽々と持っているのだろうか?)

 不思議そうに小首を傾げたラピスに、少しだけ苦笑したマーザスは杖の先端をラピスに見せた。


「この先端についている透明な魔石が何か関係が?」
「うん。これは、持ち主の魔力に合わせて質量を調整するために付けられた、質量魔法が施された魔石だよ」
「魔石に魔法が付与されているのですか!?」


 (そんな技術、聞いたことがない! さすが、魔道具開発の発展が凄まじい帝国だ!)

 驚いて杖の先端を凝視するラピスを見て、マーザスは得意げに胸を張った。


「そうだよ! すごいよね! うちの弟弟子!」
「そっ、そうですね……」


 (そう言えば、この杖って、マーザス殿の弟弟子殿が作ったものだった)

 満足そうな笑みを浮かべているマーザスを、ラピスが静かに冷めた目で見つめていると、今度はカトレアから質問が飛んできた。


「マーザス様、1つよろしいでしょうか?」
「何だい?」


 得意げな笑みを浮かべたまま、マーザスはラピスからカトレアに視線を移した。


「私の師匠とは一体、どんな方だったのですか?」


 (私の記憶に一切ない師匠。そんな方は一体どんな方だったのだろう)

 小さく拳を作ったカトレアの問いに、マーザスは杖を持っていない手の人差し指を立て、そのまま下唇の真ん中に持っていくと、お茶目にウインクをして答えた。


「それは、改竄魔法を解いてから教えてあげるよ♪」




「では、始めるね」


 笑みを潜ませたマーザスがそっと目を閉じると、意識を集中させて魔力を練り始めた。
 すると、マーザスの周りを白色の魔力が竜巻のように吹き荒れ、静かに目を閉じているマーザスの体をあっという間に包み込んだ。

 (魔力を練り始めてからそんなに経っていないのに、もうあんなにが溢れている。これが、帝国の天才魔法師の実力なのね)

 始まりの魔力とは、【火・水・土・風・雷・氷】の6属性に属する前の魔力であり、魔力を持っている者なら誰でも使える。
 また、非属性魔法を相性が良いため、主に魔力を流して使う魔道具に使う時に使われる。

 マーザスを包んだ真っ白な魔力を、カトレアはうっとりするような顔で見つめる。
 すると、脳裏にマーザスの言葉が蘇った。



『君の師匠は、僕よりも魔力量が多かったんだよ』


 (私の師匠って、一体どんな人だったのかしら? 今のマーザス様みたいな、魔法師として確かな実力のあった方だったのだろうか?)

 顔も分からない師匠のことを少しだけ頭に思い浮かべようとした時、閉じられていたマーザスの深い緑色の瞳が静かに開いた。
 その瞬間、吹き荒れていた白い魔力が球状となって杖の先端に集まり、杖に刻まれた数多の魔法陣の1つが白く光った。


「行くよ、《ディスペル》」


 マーザスが静かに解呪魔法を唱えると、球状になった白い魔力がカトレアの足元に魔法陣を描き、そこから真っ白な柱が顕現した。
 そして、柱はカトレアの華奢な体を一瞬で閉じ込めた。
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