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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
閑話 儚くも温かい夢
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『あっ、お父様!』
そう言って、長兄と鍛錬をしていた我が娘は、屋敷に一時帰宅した私を見つけると笑顔で大きく手を振った。
すると、ニヤリと笑みを浮かべた長兄が妹に向かって木剣を振った。
『チッ、外したか』
『もう! リュシアン兄様の意地悪!』
長男からの不意打ちを難なく交わした娘は、頬を膨らませると、つい先日教えた剣技で長男に襲いかかった。
『ヘヘッ、この程度じゃ俺は倒せないぜ』
『ううっ……今度こそは!』
負けず嫌いを発揮させる妹を煽る長男。
全く、2人とも宰相家の令息と令嬢なのだから、もう少し貴族らしい慎ましさを持って欲しい。
特に、娘の方は少しは妻を見習って……いや、我が愛しき妻も娘に負けず劣らずお転婆なところがあるから、出来れば同い歳ぐらいの令嬢を見習って欲しい。
『あら、あなた。さっき、私に対して失礼なことを思っていませんでした?』
『……いや、思っていないぞ。断じて思っていないからな!』
『そうやって冷や汗掻きながら言い訳されても、説得力がありませんよ』
『うっ!』
小さく肩を震わせた私に、心底溜息をついた妻。
これで『社交界の華』と言われているのだから、社交界は本当に魔窟だと思い知らされる。
『……コホン。それよりも、わざわざ屋敷から庭に出てきたということは、フリージアに用があるじゃないのか?』
『えぇ、そうよ』
ニコリと笑みを浮かべた妻は、次の瞬間には鬼の形相で娘に向かって叫んだ。
『フリージア! いい加減、お屋敷に戻ってきなさい! そろそろ先生が来るわよ!』
母の怒鳴り声に大きく肩を震わせた娘は、長兄との鍛錬を中断させると、慌ててこちらに来た。
そして、妻に首根っこを掴まれた娘は、不満顔で屋敷へと戻っていった。
すると、妻や娘と入れ替わるように次男が屋敷から出てきた。
『お帰り、父さん。何か取りにきたの?』
子首を傾げた次男の手には、難しい専門書があった。
また、高位の魔法を習得するために勉強をしていたのだろう。
『あぁ、仕事で使う資料を取りに来た』
『そっか』
短く返事した次男は、独自で魔法の勉強と鍛錬をしている。
いつか、宮廷魔法師団に入団したいとのことだ。
学園入学する前に、全属性の初級魔法が使えるのなら、学園卒業と同時に宮廷魔法師団に入れそうだが......本人にとっては、まだまだらしい。
『父さん。仕事で使う資料って、もしかしてこれ?』
いつの間にか屋敷に戻っていた長男が、書類を持って屋敷を出ると、そのまま私のところに来た。
『おぉ、それだ。ありがとう、リュシアン 』
『ヘヘッ、これくらい次期当主としては当然のことだ』
照れ臭そうに笑う長男を、次男がジト目で見ていた。
『リュシアン兄さん。それって確か、エドガスが王宮に持って行こうとしていたやつだよね?』
『あっ! それを言うなよ、ロスペル! せっかく、父さんにいいところを見せようと思ったのに!』
『全く、相変わらず兄さんは爪が甘いね』
頬を膨らます長男に対し、小馬鹿にするように鼻で笑う次男。
その様子を屋敷の入口で優しく見守る、我が家の有能執事。
この何気ない日常が、泡沫の夢となってしまった今では、こんなにも愛おしい。
「ん、んんっ……」
心地よい微睡みから抜け出すと、そこには木目の天井があった。
「あぁ、そう言えば今、国境近くの宿場町にいるんだったな」
現宰相のありがた迷惑な好意のお陰で。
小さく溜息をついて窓の外を見ると、爽やかな朝の光景が広がっていた。
小鳥の囀り声に、人々の声……
「本当に清々しい朝だ」
思わず笑を零した私は、ベッドから起き抜けると気を引き締めた。
これから私は、あの方に謁見しに行くのだから。
「全ては、奪われたもの取り戻すために」
そう言って、長兄と鍛錬をしていた我が娘は、屋敷に一時帰宅した私を見つけると笑顔で大きく手を振った。
すると、ニヤリと笑みを浮かべた長兄が妹に向かって木剣を振った。
『チッ、外したか』
『もう! リュシアン兄様の意地悪!』
長男からの不意打ちを難なく交わした娘は、頬を膨らませると、つい先日教えた剣技で長男に襲いかかった。
『ヘヘッ、この程度じゃ俺は倒せないぜ』
『ううっ……今度こそは!』
負けず嫌いを発揮させる妹を煽る長男。
全く、2人とも宰相家の令息と令嬢なのだから、もう少し貴族らしい慎ましさを持って欲しい。
特に、娘の方は少しは妻を見習って……いや、我が愛しき妻も娘に負けず劣らずお転婆なところがあるから、出来れば同い歳ぐらいの令嬢を見習って欲しい。
『あら、あなた。さっき、私に対して失礼なことを思っていませんでした?』
『……いや、思っていないぞ。断じて思っていないからな!』
『そうやって冷や汗掻きながら言い訳されても、説得力がありませんよ』
『うっ!』
小さく肩を震わせた私に、心底溜息をついた妻。
これで『社交界の華』と言われているのだから、社交界は本当に魔窟だと思い知らされる。
『……コホン。それよりも、わざわざ屋敷から庭に出てきたということは、フリージアに用があるじゃないのか?』
『えぇ、そうよ』
ニコリと笑みを浮かべた妻は、次の瞬間には鬼の形相で娘に向かって叫んだ。
『フリージア! いい加減、お屋敷に戻ってきなさい! そろそろ先生が来るわよ!』
母の怒鳴り声に大きく肩を震わせた娘は、長兄との鍛錬を中断させると、慌ててこちらに来た。
そして、妻に首根っこを掴まれた娘は、不満顔で屋敷へと戻っていった。
すると、妻や娘と入れ替わるように次男が屋敷から出てきた。
『お帰り、父さん。何か取りにきたの?』
子首を傾げた次男の手には、難しい専門書があった。
また、高位の魔法を習得するために勉強をしていたのだろう。
『あぁ、仕事で使う資料を取りに来た』
『そっか』
短く返事した次男は、独自で魔法の勉強と鍛錬をしている。
いつか、宮廷魔法師団に入団したいとのことだ。
学園入学する前に、全属性の初級魔法が使えるのなら、学園卒業と同時に宮廷魔法師団に入れそうだが......本人にとっては、まだまだらしい。
『父さん。仕事で使う資料って、もしかしてこれ?』
いつの間にか屋敷に戻っていた長男が、書類を持って屋敷を出ると、そのまま私のところに来た。
『おぉ、それだ。ありがとう、リュシアン 』
『ヘヘッ、これくらい次期当主としては当然のことだ』
照れ臭そうに笑う長男を、次男がジト目で見ていた。
『リュシアン兄さん。それって確か、エドガスが王宮に持って行こうとしていたやつだよね?』
『あっ! それを言うなよ、ロスペル! せっかく、父さんにいいところを見せようと思ったのに!』
『全く、相変わらず兄さんは爪が甘いね』
頬を膨らます長男に対し、小馬鹿にするように鼻で笑う次男。
その様子を屋敷の入口で優しく見守る、我が家の有能執事。
この何気ない日常が、泡沫の夢となってしまった今では、こんなにも愛おしい。
「ん、んんっ……」
心地よい微睡みから抜け出すと、そこには木目の天井があった。
「あぁ、そう言えば今、国境近くの宿場町にいるんだったな」
現宰相のありがた迷惑な好意のお陰で。
小さく溜息をついて窓の外を見ると、爽やかな朝の光景が広がっていた。
小鳥の囀り声に、人々の声……
「本当に清々しい朝だ」
思わず笑を零した私は、ベッドから起き抜けると気を引き締めた。
これから私は、あの方に謁見しに行くのだから。
「全ては、奪われたもの取り戻すために」
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