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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第222話 繰り返される過ち
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300年前、ペトロート王国とフィアンツ帝国の間で争いが起こる直前、宰相家であったインベック公爵家の当主が変わった。
そして、宰相もまたその当主に変わった。
その当主とは、数多の闇魔法の中でも特に希少な闇魔法……『改竄魔法』の使い手であった。
「前当主から当主と宰相の座を引き継いだ現当主兼宰相は、幼い頃から影の仕事を引き受けるインベック家に不満を抱いていたそうです」
「だから、その愚か者はお得意の改竄魔法で貴族達の記憶を改竄し、自分の駒にした貴族達を使って帝国に対して戦争を仕掛けた。全ては、領土拡大と王位簒奪を実現するために……そうだな? レクシャ?」
「はい、その通りでございます。皇帝陛下」
深く溜息をついた皇帝に、レクシャは俯いたまま顔を歪めた。
(これを聞いた当時の前インベック公爵は、息子の愚かな行いに心底呆れただろうな)
「全く、何度聞いても愚かとしか良いようがないな」
「そうですね。ですが、その愚かが再び行われようとしているのです」
「ということは、我が国に戦争を仕掛けようとしているその愚か者も、改竄魔法の使い手ということでしょうか?」
「そういうことになります」
(そう、インベック家の現当主ノルベルトは、300年前と同じ魔法で帝国に対して戦争を仕掛けようとしているのだ。そのせいで、私は地位を追われ……)
「ちなみに、どの記憶が改竄されたのでしょうか?」
「……恐らくですが、ノルベルトは国民の記憶にある300年前の出来事を全て消去しています。そして、『インベック家は由緒ある宰相家である』と改竄したのだと思います」
「っ!? だとしたら、今迄のサザランス公爵家の功績や、あなた様自身にその家族の功績も、全て自分や家のものにしているのですか?」
「はい。そもそも、サザランス公爵家の存在自体消去されているかと」
「そう、ですよね。300年前の悲劇が消されているということは……」
沈痛な表情で顔を上げたレクシャに対し、皇帝は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「フン! どうせまた、全ての貴族の記憶を改竄して手駒にするのだろ? それなら、貴様の魔法で十分……」
「いえ、今度は違うのです」
「何?」
鋭く睨んだ皇帝を前に、拳を握ったレクシャは皇帝と宰相に告げた。
「今回は、ペトロート王国に住んでいる国民全員に改竄魔法がかかっているのです」
「「はぁっ!?」」
(国民全員に改竄魔法がかかっているだと!?)
開いた口が塞がらない皇帝の隣で、銀縁の眼鏡をかけ直した宰相が僅かに声を震わせながらレクシャに問い質した。
「それは、本当のことなのですか? レクシャ様?」
「はい。現に、改竄魔法にかかった王国民は、現宰相を私ではなく、インベックの現当主であり、改竄魔法を使った張本人であるノルベルトだと認識しています。そして、今の王国民は300年前の出来事を知りません」
「そんな……」
(あんな重大な過ちを国民全員の記憶から消したというのか?)
「つまり、貴様がさっき言っていた『人質』というのは、国民全員ということだな?」
「そう、ですね……」
(宰相としての人質というのならば、国民になるだろうな)
苦い顔をするレクシャの曖昧な返事に、皇帝が小首を傾げた。
そんな2人をよそに、ノルベルトの愚行に一瞬意識が飛びかけた宰相は、ふと自国のことを今の王国民がどう思っているのか気になった。
「ちなみに、今の王国民は帝国のことはどう思っているのでしょうか?」
(確か、随分前に『ノルベルトという人物が大の外国嫌いだ』ということをレクシャ様から聞いたことが……)
「それは……」
宰相からの問いに、再び顔を歪めたレクシャは静かに口を閉じて俯いた。
それを見た皇帝が、厳しい表情でレクシャに続きを促した。
「言え。この際、いかような罵倒でも貴様に免じて不問にしてやろう」
「ありがとうございます。では」
苦々しい顔をしたレクシャは、表をあげると口を開いた。
「これは、貴国だけでなく我が国の周辺諸国に言える話なのですが……」
「前置きは良い。さっさと言え」
「はっ、はい……今の王国民は、貴国を含めた周辺諸国のことを『高貴な我が国民より遥かに劣っている野蛮な人間達が住む国だ』と思っています」
レクシャの話を聞いた皇帝と宰相は、揃って眉を顰めると互いに目を合わせた。
そして、宰相もまたその当主に変わった。
その当主とは、数多の闇魔法の中でも特に希少な闇魔法……『改竄魔法』の使い手であった。
「前当主から当主と宰相の座を引き継いだ現当主兼宰相は、幼い頃から影の仕事を引き受けるインベック家に不満を抱いていたそうです」
「だから、その愚か者はお得意の改竄魔法で貴族達の記憶を改竄し、自分の駒にした貴族達を使って帝国に対して戦争を仕掛けた。全ては、領土拡大と王位簒奪を実現するために……そうだな? レクシャ?」
「はい、その通りでございます。皇帝陛下」
深く溜息をついた皇帝に、レクシャは俯いたまま顔を歪めた。
(これを聞いた当時の前インベック公爵は、息子の愚かな行いに心底呆れただろうな)
「全く、何度聞いても愚かとしか良いようがないな」
「そうですね。ですが、その愚かが再び行われようとしているのです」
「ということは、我が国に戦争を仕掛けようとしているその愚か者も、改竄魔法の使い手ということでしょうか?」
「そういうことになります」
(そう、インベック家の現当主ノルベルトは、300年前と同じ魔法で帝国に対して戦争を仕掛けようとしているのだ。そのせいで、私は地位を追われ……)
「ちなみに、どの記憶が改竄されたのでしょうか?」
「……恐らくですが、ノルベルトは国民の記憶にある300年前の出来事を全て消去しています。そして、『インベック家は由緒ある宰相家である』と改竄したのだと思います」
「っ!? だとしたら、今迄のサザランス公爵家の功績や、あなた様自身にその家族の功績も、全て自分や家のものにしているのですか?」
「はい。そもそも、サザランス公爵家の存在自体消去されているかと」
「そう、ですよね。300年前の悲劇が消されているということは……」
沈痛な表情で顔を上げたレクシャに対し、皇帝は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「フン! どうせまた、全ての貴族の記憶を改竄して手駒にするのだろ? それなら、貴様の魔法で十分……」
「いえ、今度は違うのです」
「何?」
鋭く睨んだ皇帝を前に、拳を握ったレクシャは皇帝と宰相に告げた。
「今回は、ペトロート王国に住んでいる国民全員に改竄魔法がかかっているのです」
「「はぁっ!?」」
(国民全員に改竄魔法がかかっているだと!?)
開いた口が塞がらない皇帝の隣で、銀縁の眼鏡をかけ直した宰相が僅かに声を震わせながらレクシャに問い質した。
「それは、本当のことなのですか? レクシャ様?」
「はい。現に、改竄魔法にかかった王国民は、現宰相を私ではなく、インベックの現当主であり、改竄魔法を使った張本人であるノルベルトだと認識しています。そして、今の王国民は300年前の出来事を知りません」
「そんな……」
(あんな重大な過ちを国民全員の記憶から消したというのか?)
「つまり、貴様がさっき言っていた『人質』というのは、国民全員ということだな?」
「そう、ですね……」
(宰相としての人質というのならば、国民になるだろうな)
苦い顔をするレクシャの曖昧な返事に、皇帝が小首を傾げた。
そんな2人をよそに、ノルベルトの愚行に一瞬意識が飛びかけた宰相は、ふと自国のことを今の王国民がどう思っているのか気になった。
「ちなみに、今の王国民は帝国のことはどう思っているのでしょうか?」
(確か、随分前に『ノルベルトという人物が大の外国嫌いだ』ということをレクシャ様から聞いたことが……)
「それは……」
宰相からの問いに、再び顔を歪めたレクシャは静かに口を閉じて俯いた。
それを見た皇帝が、厳しい表情でレクシャに続きを促した。
「言え。この際、いかような罵倒でも貴様に免じて不問にしてやろう」
「ありがとうございます。では」
苦々しい顔をしたレクシャは、表をあげると口を開いた。
「これは、貴国だけでなく我が国の周辺諸国に言える話なのですが……」
「前置きは良い。さっさと言え」
「はっ、はい……今の王国民は、貴国を含めた周辺諸国のことを『高貴な我が国民より遥かに劣っている野蛮な人間達が住む国だ』と思っています」
レクシャの話を聞いた皇帝と宰相は、揃って眉を顰めると互いに目を合わせた。
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