木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国

第241話 魔力の歪み

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「魔力の歪み?」


 いつの間にか玉座から降り、宰相の隣に来ていた皇帝が首を傾げると、マーザスが小さく頷いた。


「はい。魔道具に仕込まれている魔法陣とは違い、設置型の魔法陣は指定された魔力を流し込まないといけません」
「指定された魔力ですか?」
「そうです。魔道具に仕込まれている魔道具は、全て人の魔力そのものに反応して動いているのです」
「どういうことだ?」


 更に首を傾げる皇帝に、マーザスは小さく笑みを浮かべると一歩だけ下がった。


「陛下、謁見の間での魔力の放出をお許しいただいてもよろしいでしょうか?」
「あっ、あぁ……いいぞ」
「ありがとうございます」


 深々と頭を下げたマーザスは、片方の手のひらを3人に向けた。
 その瞬間、マーザスの5本の指に5属性全ての魔力が灯った。


「「「っ!?」」」
「我が師曰く、『全ての人間には、5属性全ての魔力が流れている』と常々口にしていました」


 (そして、それを全て引き出すには……それこそ血の滲むような鍛錬が必要だった。はぁ、これをたった1ヵ月で会得したロスペルは、本当に凄かったな。俺だって、会得するのに半年はかかったのに)

 唖然とする3人をよそに、1人感傷に浸っていたマーザスは指に灯った魔力を消すと、徐に指に嵌めていた銀色の指輪を外した。
 そこには、魔法陣に刻まれている文字……魔法文字が書かれていた。


「これは、現在改良中の魔道具なのですが……陛下、御前での魔法の使用をお許しいただけますでしょうか?」
「あぁ、許すぞ。だが、間違ってもこの部屋を吹き飛ばすなよ」
「もちろんですよ」


 苦笑いを浮かべたマーザスは、再び指輪を嵌めると誰もいない方に手を向けた。


「《ライトニング》」


 雷の初級魔法を唱えた瞬間、指輪に刻まれた魔法文字が黄色く光り、マーザスの手に黄色の魔法陣が展開された。
 そして、魔法陣の真ん中から雷が一直線に飛び出すとすぐに消えてしまった。


「うん、やっぱり距離を伸ばすには、外の魔力を借り受ける量をもう少し多くした方が良いね」
「あの、マーザス様?」
「あぁ、すみません。つい、魔道具に携わる者としての血が騒いでしまいました」


 申し訳なさそうに頭を掻いたマーザスは、指輪を外すとそのまま手のひらに乗せて3人に見せた。


「このように、魔力を流せば風属性が得意な私でも簡単に雷属性の魔法を放つことが出来ます」
「それは、人間の中に流れている魔力そのものに反応しているからでしょうか?」
「はい、その通りです」


 小さく頷いたマーザスは、指輪を嵌めると3人に目を向けた。


「しかし、設置型の魔法陣は、魔道具に仕込まれている魔法陣とは異なり、長期で発動する広範囲魔法ですので、魔法の安定を図るためにも、必ず魔法陣に流す魔力の種類を指定して、その指定された魔力を流さないといけないのです」
「その『指定された魔力』というのは、属性魔力や非属性魔力のことですよね?」
「はい。とは言っても、主に属性魔力に分類される魔力を指定することが多いのですが」
「そうだな。我が国に張られている結界魔法も、魔法自体は非属性であるが、使っている魔力は一応属性魔力に分類される光属性だからな」
「確かにそうですね」


 王族にしか使えないとされている光属性の魔法は、一応属性魔力と分類されている。

 そのことを思い出して納得した皇帝と宰相の隣で、難しい顔をしたレクシャがマーザスに視線を向けた。


「では、指定されていない魔力を流すと……」
「えぇ、魔法陣自体に異常が起き、正常に動かなくなった魔法陣で魔力の渦が出来るのです」
「その結果、その渦によって魔物が湧きやすくなると?」
「そうです」


 真剣な表情で頷いたマーザスに、一瞬悔し気な顔をしたレクシャは僅かに息を吐くと皇帝に対してその場で傅いた。


「ですので、皇帝陛下。万が一の時に備え、作戦が開始される前にまでに、出来るだけ多くの平民に貴国で生産流通されている護身用魔道具を、その貴族を通して届けて欲しいのです」
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