336 / 606
第5章 止まっていた運命が動き出す
第313話 騎士団長の登場
しおりを挟む
「お前達、一体何をやっている!!」
「「「っ!」」」
周囲一帯を威圧すようなその声は、ラピスや倒れているメストにとって聞き馴染みがあり、カミルにとっては懐かしい声だった。
(この声、もしかして……)
大きく目を見開いたカミルが眉を顰めるダリアから声の聞こえた方に視線を向ける。
その時、ラピスが大声で声の主の名を呼んだ。
「フェビル団長!!」と。
「その声、もしかしてラピスか?」
「はい!!」
『ラピス』という名前に僅かに眉を潜ませたダリアだったが、双剣を持っている彼がラピスだとは結びつかないようで、バカにしたように鼻で笑った。
(もしかしてあの令嬢、あれがラピスだと気づいていないのか?)
ラピスに向かって侮蔑の目を向けるダリアに、フェビルは不思議に思いつつ、部下を従えて群衆の中から出て、そのまま驚いた顔で敬礼をしているラピスに駆け寄る。
そして、倒れている黄金の騎士達や宮廷魔法師達に目を向けて顔を顰めた。
「ラピス、ここにダリア嬢がいるからして何となく察しがつくが一応説明してくれ」
「ハッ! そちらにいるかの令嬢が、魅了魔法で騎士達や宮廷魔法師達が操り、平民達に危害を加えようとしていたので、そちらにいる平民と共に操り人形達を無力化していたのです」
「そちらにいる平民……っ?!」
首を傾げたまま後ろを振り向いたフェビルは、後ろでレイピアを構えている人物に思わず言葉を失う。
(木こりの恰好に銀色のレイピア。そして、ペリドットのような淡い緑色の瞳の瞳……間違いない)
「本当に、あなた様だったのですね」
メストやシトリンの話を聞いてから、木こりの正体が『忘れ去られた貴族令嬢』であるかもしれないと予想していたフェビルは、初めて見る木こりの姿に言葉では言い表せない悔しさがこみ上げた。
(色々と聞きたいことがあるが……一先ず、この状況をどうにかしなければ)
冷たい目でこちらを見ているカミルから視線を逸らしたフェビルは、そのままラピスに視線を戻すと彼が着ている鎧について問い質す。
「それで、どうしてお前はその恰好をしている?」
「それが、相手が相手でしたので……」
気まずそうに視線を動かすラピスに、フェビルはゆっくりと視線を移すと、そこには不機嫌そうこちらを見るダリアがいた。
(なるほど。やはり、あの淫乱令嬢の悪戯を止めていたというわけか)
「フン! いきなり何なのあんた達! この私を邪魔するなんていい度胸じゃない!」
騎士団長が来ていることに気付かないダリアを見て、違和感を覚えたフェビルがラピスに囁く。
「おい、あれは演技か? それとも本気で言っているのか?」
「あれは演技ではありません。恐らく、改竄魔法の影響で忘れているのかと」
「うっ! そんな状態でまだ宰相家令嬢を名乗っているとは……」
「団長。気持ちは分かりますが、先に事を収めましょう。そこにいるもう1人の令嬢もそれを望んでいます」
「……分かっている」
(本物の宰相家令嬢がそれを望んでいるのなら)
レイピアを構えながら無表情でこちらを見ているカミルを一瞥し、気まずそうに目を伏せたフェビルは、大きく息を吐くとダリアに向かって恭しくお辞儀をした。
「お初にお目にかかります、ダリア・インベック公爵令嬢」
「はぁ? 誰よ、あんた。あんたみたいな暑苦しい男、知らないわ」
横柄な態度で堂々と慇懃無礼なことを口にするダリアに、僅かに眉を動かしたフェビルは更に深く頭を下げる。
「私、ペトロート王国騎士団団長、フェビル・シュタールと申します。今回、あなた様のお父上であらせられる宰相閣下から『愛娘が王都で騒ぎを起こしている』と聞きつけ、こちらに参った次第で……」
「まぁ! あなた、お父様の使者だったのね! ごめんなさい、てっきりそこにいる愚民のお仲間さんかと思ったわ!」
「…………」
(全く言葉が通じていない。これも改竄魔法の影響なのか……でもまぁ、これで事が収まるのなら構わない)
嬉しそうな笑みで的外れなことを言うダリアに対し、殺気を放っているラピスに無言で止めるように合図したフェビルは、作り笑いを浮かべながらゆっくりと頭を上げる。
「はい。ですので、あなた様にはこれから王城の方に来ていただいて……」
「つまり、お父様のところに行けばいいのね! 分かったわ! 丁度、暇つぶしにも飽きてきた頃だし、今すぐ行ってあげる♪」
「……ありがとうございます」
倒れている騎士や宮廷魔法師、メイド達に一切目もくれず、ご機嫌になったダリアはスキップしながらその場を後にした。
「「「っ!」」」
周囲一帯を威圧すようなその声は、ラピスや倒れているメストにとって聞き馴染みがあり、カミルにとっては懐かしい声だった。
(この声、もしかして……)
大きく目を見開いたカミルが眉を顰めるダリアから声の聞こえた方に視線を向ける。
その時、ラピスが大声で声の主の名を呼んだ。
「フェビル団長!!」と。
「その声、もしかしてラピスか?」
「はい!!」
『ラピス』という名前に僅かに眉を潜ませたダリアだったが、双剣を持っている彼がラピスだとは結びつかないようで、バカにしたように鼻で笑った。
(もしかしてあの令嬢、あれがラピスだと気づいていないのか?)
ラピスに向かって侮蔑の目を向けるダリアに、フェビルは不思議に思いつつ、部下を従えて群衆の中から出て、そのまま驚いた顔で敬礼をしているラピスに駆け寄る。
そして、倒れている黄金の騎士達や宮廷魔法師達に目を向けて顔を顰めた。
「ラピス、ここにダリア嬢がいるからして何となく察しがつくが一応説明してくれ」
「ハッ! そちらにいるかの令嬢が、魅了魔法で騎士達や宮廷魔法師達が操り、平民達に危害を加えようとしていたので、そちらにいる平民と共に操り人形達を無力化していたのです」
「そちらにいる平民……っ?!」
首を傾げたまま後ろを振り向いたフェビルは、後ろでレイピアを構えている人物に思わず言葉を失う。
(木こりの恰好に銀色のレイピア。そして、ペリドットのような淡い緑色の瞳の瞳……間違いない)
「本当に、あなた様だったのですね」
メストやシトリンの話を聞いてから、木こりの正体が『忘れ去られた貴族令嬢』であるかもしれないと予想していたフェビルは、初めて見る木こりの姿に言葉では言い表せない悔しさがこみ上げた。
(色々と聞きたいことがあるが……一先ず、この状況をどうにかしなければ)
冷たい目でこちらを見ているカミルから視線を逸らしたフェビルは、そのままラピスに視線を戻すと彼が着ている鎧について問い質す。
「それで、どうしてお前はその恰好をしている?」
「それが、相手が相手でしたので……」
気まずそうに視線を動かすラピスに、フェビルはゆっくりと視線を移すと、そこには不機嫌そうこちらを見るダリアがいた。
(なるほど。やはり、あの淫乱令嬢の悪戯を止めていたというわけか)
「フン! いきなり何なのあんた達! この私を邪魔するなんていい度胸じゃない!」
騎士団長が来ていることに気付かないダリアを見て、違和感を覚えたフェビルがラピスに囁く。
「おい、あれは演技か? それとも本気で言っているのか?」
「あれは演技ではありません。恐らく、改竄魔法の影響で忘れているのかと」
「うっ! そんな状態でまだ宰相家令嬢を名乗っているとは……」
「団長。気持ちは分かりますが、先に事を収めましょう。そこにいるもう1人の令嬢もそれを望んでいます」
「……分かっている」
(本物の宰相家令嬢がそれを望んでいるのなら)
レイピアを構えながら無表情でこちらを見ているカミルを一瞥し、気まずそうに目を伏せたフェビルは、大きく息を吐くとダリアに向かって恭しくお辞儀をした。
「お初にお目にかかります、ダリア・インベック公爵令嬢」
「はぁ? 誰よ、あんた。あんたみたいな暑苦しい男、知らないわ」
横柄な態度で堂々と慇懃無礼なことを口にするダリアに、僅かに眉を動かしたフェビルは更に深く頭を下げる。
「私、ペトロート王国騎士団団長、フェビル・シュタールと申します。今回、あなた様のお父上であらせられる宰相閣下から『愛娘が王都で騒ぎを起こしている』と聞きつけ、こちらに参った次第で……」
「まぁ! あなた、お父様の使者だったのね! ごめんなさい、てっきりそこにいる愚民のお仲間さんかと思ったわ!」
「…………」
(全く言葉が通じていない。これも改竄魔法の影響なのか……でもまぁ、これで事が収まるのなら構わない)
嬉しそうな笑みで的外れなことを言うダリアに対し、殺気を放っているラピスに無言で止めるように合図したフェビルは、作り笑いを浮かべながらゆっくりと頭を上げる。
「はい。ですので、あなた様にはこれから王城の方に来ていただいて……」
「つまり、お父様のところに行けばいいのね! 分かったわ! 丁度、暇つぶしにも飽きてきた頃だし、今すぐ行ってあげる♪」
「……ありがとうございます」
倒れている騎士や宮廷魔法師、メイド達に一切目もくれず、ご機嫌になったダリアはスキップしながらその場を後にした。
8
あなたにおすすめの小説
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!
六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。
家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能!
「ここなら、自由に生きられるかもしれない」
活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。
「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる