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第5章 止まっていた運命が動き出す
第314話 ご苦労だった
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「全く、これを『暇つぶし』とは」
ご機嫌にその場を後にしたダリアを見送ったフェビルは、深いため息をついて額に手を添える。
(暇つぶし程度で、こんな騒ぎを起されてはたまったものではないのだが)
「これで我が国の宰相家令嬢とは……本当、そこにいる平民を見習って欲しいものだ」
再び深く溜息をついたフェビルは、倒れている騎士達や宮廷魔法師達を確認すると、後ろで控えていた部下達に見やった。
「お前達は、ここで伸びている騎士や宮廷魔法師どもを近くに止めている荷馬車に乗せ……」
「団長、その前にお願いがあります」
部下に指示を飛ばしていたフェビルを遮ったラピスに、フェビルが面倒くさそうな顔で視線を移す。
「何だ、言ってみろ」
「ダリア嬢の近くで倒れていた者は、私の方で引き取ってももらえませんでしょうか?」
「ダリアの近く……あぁ、そこでのびている冒険者のことなら別に構わないぞ」
「ありがとうございます」
足早に冒険者のもとに向かったラピスを不思議に思い、フェビルは部下に倒れている騎士や宮廷魔法師やメイド達を回収するよう指示を飛ばすと、そのままラピスのもとに駆け寄った。
「ラピス。お前、知り合いに冒険者なんていたのか?」
すると、座り込んでいたラピスが立ち上がり、フェビルの耳元で囁いた。
「団長。実はこの方、メスト隊長なのです」
「はぁ!?」
フェビルの驚いた声に、作業をしていた部下達が何事かと手を止めて上司を見る。
そんな彼らに気づいたフェビルは、『何でも無いから続けろ』と指示を飛ばすと、倒れているメストの傍にしゃがみ込み凝視した。
すると、鎧の襟元にヴィルマン侯爵家の家紋を見つけ、眉を顰めたフェビルはゆっくり立ち上がるとラピスに説明を求めた。
「ラピス。どうしてここに奴がいる? それも正体を隠すような恰好をして」
「実は、メスト隊長もこちらの騒ぎに気づき、こちらに来て早々、ダリア嬢の味方ではなく、私と一緒に操り人形達を無力化させていたのです」
「つまり、メストはダリア嬢と敵対していたということか?」
「そういうことになります」
神妙そうな顔で返事をしたラピスに、フェビルは口を閉ざすと考え込んだ。
(前々からメストが平民の家に通うようになったと聞いていたが……それでも、メストはダリア嬢を婚約者だと勘違いして彼女のことを大切にしていたはず。しかし、ここにきて彼女と敵対する行動をとった。もしかして、記憶が戻った……いや、ラピスの表情からしてそれは無いか)
足元で倒れているメストの行動に疑問を覚えつつ、フェビルはラピスに視線を戻す。
「それで、ダリア嬢の敵になった結果、彼女の魅了魔法にかかって操られていたというわけか」
「……そうです」
悔しそうに拳を握ったラピスを見て、フェビルは誰がメストを気絶させたのか察しがついた。
「ラピス、一応聞くがお前がメストを無力化したのか?」
「はい。彼女にはダリアの横やりが入らないよう、魔法の無効化を頼みましたので、自分が隊長を無力化しました」
「そうか」
仕方なかったとはいえ、尊敬する上司を八つ当たり同然で倒してしまったラピスは、複雑な気持ちで倒れている上司に目を向ける。
そんな彼の心境など知る由もないフェビルは、後ろでレイピアを持ったまま辺りを見回しているカミルを見た。
「ラピス、フリージア嬢はどうだった?」
「分かりません。ただ……」
脳裏に蘇ったカミルの顔を思い出し、ラピスは気まずそうにメストから視線を逸らした。
「私が隊長を無力化した後、彼女は泣いていました」
「っ!」
ラピスの言葉を聞いたフェビルは、小さく拳を握ると深く息を吐いた。
(やはり、気分の良いものではないよな。例え、自分のことを忘れていると分かっていても)
フェビルの視線に気づき、無表情でフェビルの方を見たカミル。
そんな平民を見て、僅かに目を伏せたフェビルは、そのままラピスの方を見ると彼の肩に手を置いた。
「ラピス、お前には酷なことをやらせたな」
「いえ、いずれこうなると分かっていましたから」
「そうだな」
(建国祭の前日と当日、俺はあの方のために部下を相手に戦わなければならない。分かっている。分かっているが……)
肩に置いた手に少しだけ力を入れると、労うように部下の肩をポンポンと叩く。
「一先ず、よくやった。後始末はこいつらにやらせるから、お前は帰って体を休めろ」
「いえ、自分はまだ動けますから一緒に……」
「お前、それは自分の恰好を見て言っているんだよな?」
「っ!」
少しだけ肩を震わせたラピスに、フェビルは追い打ちをかけるように囁いた。
「今のペトロート王国が冒険者に対して快く思っていないことはお前だって分かっているよな?」
「……失礼します」
大人しく頭を下げたラピスは、倒れているメストを回収するとその場を後にした。
その背中を見送ったフェビルは、いつの間にかいなくなっていたカミルを追いかけた。
ご機嫌にその場を後にしたダリアを見送ったフェビルは、深いため息をついて額に手を添える。
(暇つぶし程度で、こんな騒ぎを起されてはたまったものではないのだが)
「これで我が国の宰相家令嬢とは……本当、そこにいる平民を見習って欲しいものだ」
再び深く溜息をついたフェビルは、倒れている騎士達や宮廷魔法師達を確認すると、後ろで控えていた部下達に見やった。
「お前達は、ここで伸びている騎士や宮廷魔法師どもを近くに止めている荷馬車に乗せ……」
「団長、その前にお願いがあります」
部下に指示を飛ばしていたフェビルを遮ったラピスに、フェビルが面倒くさそうな顔で視線を移す。
「何だ、言ってみろ」
「ダリア嬢の近くで倒れていた者は、私の方で引き取ってももらえませんでしょうか?」
「ダリアの近く……あぁ、そこでのびている冒険者のことなら別に構わないぞ」
「ありがとうございます」
足早に冒険者のもとに向かったラピスを不思議に思い、フェビルは部下に倒れている騎士や宮廷魔法師やメイド達を回収するよう指示を飛ばすと、そのままラピスのもとに駆け寄った。
「ラピス。お前、知り合いに冒険者なんていたのか?」
すると、座り込んでいたラピスが立ち上がり、フェビルの耳元で囁いた。
「団長。実はこの方、メスト隊長なのです」
「はぁ!?」
フェビルの驚いた声に、作業をしていた部下達が何事かと手を止めて上司を見る。
そんな彼らに気づいたフェビルは、『何でも無いから続けろ』と指示を飛ばすと、倒れているメストの傍にしゃがみ込み凝視した。
すると、鎧の襟元にヴィルマン侯爵家の家紋を見つけ、眉を顰めたフェビルはゆっくり立ち上がるとラピスに説明を求めた。
「ラピス。どうしてここに奴がいる? それも正体を隠すような恰好をして」
「実は、メスト隊長もこちらの騒ぎに気づき、こちらに来て早々、ダリア嬢の味方ではなく、私と一緒に操り人形達を無力化させていたのです」
「つまり、メストはダリア嬢と敵対していたということか?」
「そういうことになります」
神妙そうな顔で返事をしたラピスに、フェビルは口を閉ざすと考え込んだ。
(前々からメストが平民の家に通うようになったと聞いていたが……それでも、メストはダリア嬢を婚約者だと勘違いして彼女のことを大切にしていたはず。しかし、ここにきて彼女と敵対する行動をとった。もしかして、記憶が戻った……いや、ラピスの表情からしてそれは無いか)
足元で倒れているメストの行動に疑問を覚えつつ、フェビルはラピスに視線を戻す。
「それで、ダリア嬢の敵になった結果、彼女の魅了魔法にかかって操られていたというわけか」
「……そうです」
悔しそうに拳を握ったラピスを見て、フェビルは誰がメストを気絶させたのか察しがついた。
「ラピス、一応聞くがお前がメストを無力化したのか?」
「はい。彼女にはダリアの横やりが入らないよう、魔法の無効化を頼みましたので、自分が隊長を無力化しました」
「そうか」
仕方なかったとはいえ、尊敬する上司を八つ当たり同然で倒してしまったラピスは、複雑な気持ちで倒れている上司に目を向ける。
そんな彼の心境など知る由もないフェビルは、後ろでレイピアを持ったまま辺りを見回しているカミルを見た。
「ラピス、フリージア嬢はどうだった?」
「分かりません。ただ……」
脳裏に蘇ったカミルの顔を思い出し、ラピスは気まずそうにメストから視線を逸らした。
「私が隊長を無力化した後、彼女は泣いていました」
「っ!」
ラピスの言葉を聞いたフェビルは、小さく拳を握ると深く息を吐いた。
(やはり、気分の良いものではないよな。例え、自分のことを忘れていると分かっていても)
フェビルの視線に気づき、無表情でフェビルの方を見たカミル。
そんな平民を見て、僅かに目を伏せたフェビルは、そのままラピスの方を見ると彼の肩に手を置いた。
「ラピス、お前には酷なことをやらせたな」
「いえ、いずれこうなると分かっていましたから」
「そうだな」
(建国祭の前日と当日、俺はあの方のために部下を相手に戦わなければならない。分かっている。分かっているが……)
肩に置いた手に少しだけ力を入れると、労うように部下の肩をポンポンと叩く。
「一先ず、よくやった。後始末はこいつらにやらせるから、お前は帰って体を休めろ」
「いえ、自分はまだ動けますから一緒に……」
「お前、それは自分の恰好を見て言っているんだよな?」
「っ!」
少しだけ肩を震わせたラピスに、フェビルは追い打ちをかけるように囁いた。
「今のペトロート王国が冒険者に対して快く思っていないことはお前だって分かっているよな?」
「……失礼します」
大人しく頭を下げたラピスは、倒れているメストを回収するとその場を後にした。
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