木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい

第324話 知っていた

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「あの、ロスペル様」
「何ですか、ラピス君」


 ガゼボを出たロスペルを引き留めたラピスは、僅かに眉を潜ませた。


「……ご存知だったのですか? フリージア嬢が平民として生きていることを」


 (王都で再会した後、ロスペル様はフリージア嬢のことを一言も言わなかった。だから、ロスペル様はフリージア嬢の現状を知らないと思っていた。しかし……)

 王都でのことを聞いて全く動揺しなかったロスペルを見てから、違和感を覚えていたラピスが問い質す。
 すると、振り返ったロスペル様が小さく頷いた。


「えぇ、一応、父上から諜報役を担っていますからそれなりに」
「っ!」


 さも当然かのように答えるロスペルに、王都での出来事が走馬灯のように蘇ったラピスは、堪らずロスペルに詰め寄った。


「でしたら、フリージアが木こりの恰好をして自ら平民の盾になっていたこともご存じだったと?」
「もちろんです」
「だったら、どうし……」
「それが、私たちに残された生きる手段だったからです」
「っ!」


 中世的な顔立ちを少しだけ歪ませたロスペルは、ラピスに詰め寄ると鍛錬で鍛えられた彼の腕を掴んだ。


「あなただって父上から聞いたはずです。私たち家族が生き残るには、私たちがバラバラでいる必要があると」


 (私だって……僕だって、本当は孤軍奮闘で戦っているフリージアのもとに行って助けたい! けれど、僕の身勝手な行動でノルベルトにバレて、家族を危険に晒すわけにはいかない! 王城で諜報活動をしている身なら尚更!)

 ロスペルの銀色の瞳の奥にある憤怒の炎。
 そして、掴んだ腕から伝わるもどかしい葛藤。

『稀代の天才魔法師』と謳われるロスペルの普段なら決して見せない感情的な姿に、ラピスは思わず息を呑む。
 すると、鍛錬の準備をしていたはずのカトレアが、何かを思いついたような顔で戻ってきた。


「ラピス!……って、どうされたのですか師匠? ラピスの腕を掴むなんて」


 ガゼボに入ってきたカトレアが不思議そうに小首を傾げると、ラピスが口を開くより先に、ロスペルが掴んでいた手を離して淡々と答えた。


「いえ、何でもありませんよ」
「本当ですか?」


 (何だか、2人の間に剣吞な雰囲気が漂っていた気がするけど……)


「それよりも、ラピス君に用事があったのでは? 真面目な君が鍛錬の準備を途中で放り出すくらい大事な」
「うぐっ!」


 ロスペルから目が笑っていない笑みを向けられ、苦い顔をしたカトレアは気を取り直してラピスに話を振る。


「ラピス、確か今、フリージアはリアスタ村にいるのよね?」
「あっ、あぁ……正確には、あの村の近くの森に張られた結界魔法の中で住んでいるようだが」
「結界魔法?」


 (1年くらい前に起きた魔物討伐で、あの場所の近くの森には行ったけど、結界魔法が張られているような痕跡は無かったはず……)

 ラピスの言葉にカトレアが眉を顰めると、ロスペルが森に張られた結界の正体を口にする。


「もしかして、で張られた結界なのでは?」
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