木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい

第336話 最後の家族会議

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「父さん、おかえりなさい。珍しく早く出られたかと思いきや、えらい早いご帰宅ですな」


 次期当主としてレクシャに代わって、領地運営を任されていたリュシアンは、父の早いに帰宅に内心驚きながら、いつも通り茶化した言い方で出迎える。
 すると、僅かに眉を顰めたレクシャが静かに口を開いた。


「リュシアン、申し訳ないが今日はお前の冗談に付き合いきれない。それと、そこのソファーに移動してくれないか? フリージアはリュシアンの隣に座ってくれ」
「あ、あぁ……すまない、父さん」
「分かりましたわ、お父様」


 いつもの柔和な雰囲気とも、真剣な雰囲気とも明らかに違う雰囲気に、思わず肩を震わせたリュシアンは、椅子から離れるとそのまま応接用の二人掛けソファーに座った。
 そして、隣に座ったフリージアにリュシアンは小声で話しかける。


「なぁ、フリージア。父さんどうしたんだよ?」
「分からないわ。お父様、珍しく自ら馬車を引いて来ましたわよ」
「はぁ!? 御者はどうした!?」
「何でも、怪我をされたらしくて……」


 その時、インホルトに連れられたティアーヌとロスペルが執務室に入ってきた。


「あなた、遅くなってごめんなさい」
「構わない。それよりも、2人は空いているソファーに座ってくれ。インホルト、お前がここにいてくれ」
「分かったよ、父上」
「かしこまりました」


 険しい顔をしているレクシャに2人は内心驚きつつ、リュシアンとフリージアが座っている反対側のソファーに座った。
 そして、皆が集まったのを見たレクシャが、深いため息をつくと話を始める。


「皆、朝早くから集まってもらってすまない」
「良いのよ、あなた。それより、何があったか教えてくれないかしら? 普段は冷静沈着なインホルトが珍しく血相を欠いていたわよ」


 珍しくピリピリしている旦那に、ティアーヌは優しく微笑みかけて彼を気遣うように声をかける。
 そんな妻の優しさに小さく笑みを零したレクシャは、すぐさま笑みを潜めるとズボンのポケットに乱暴に入れていた手紙を出す。


「あなた、それは?」
「昨夜、インベック前伯爵から私宛に速達で届いた手紙だ」
「「「「「っ!?」」」」」


 『インベック』という言葉を聞いて、ノルベルトが300年前の悲願を果たすため、その足掛かりとしてこの国を乗っ取り、因縁深いサザランス家を消そうとしていると知っていた者全員の表情が固まった。


「……手紙には、何て?」
「『近々、息子が本当に愚かなことをしでかすかもしれない。その前に、あなたに伝えておきたい』と」


 レクシャが淡々と手紙に書いてあった一文を口にすると、その場にいた全員が嫌な胸騒ぎを覚えた。


「手紙を読んで嫌な予感がした私は、急いで王城に向かった。そこで私は、ノルベルトの手に堕ちた騎士達にマーティスと共に捕らえられた」
「隙を作らないことで有名な父さんが、隙を突かれたというのですか?」
「あぁ、先に捕らえられたマーティスに気を取られた隙を突かれてしまった」
「そんな……」


 話を聞いたリュシアンが言葉を失い、机の上で両手を組んでいたレクシャが再びため息をつくと、ロスペルが遠慮がちに手を上げて問い質す。


「ですが、父上はこうして戻ってきた。ということは、騎士達に解放されたということですよね?」
「……あぁ、そうだな。その場に悠々と現れ、騎士を使ってマーティスを甚振って喜んでいたノルベルトにある条件を飲まされたから、こうして戻ってきた」
「その条件って何かしら?」


 ティアーヌの静かな問いかけに、僅かに肩を震わせるレクシャ。
 そんな彼から殺気が放たれ、組んだ両手が怒りで震えているのを見て、この場にいた全員が察した。

 ノルベルトはこの国の宰相であるレクシャの逆鱗に触れた。

 だが、レクシャは伯爵家であるノルベルトに屈してしまった。

 そして自分たちは、これから先、この国で今まで通り生きていくことは不可能だろうと。

 この先にある過酷な運命に、全員が覚悟した時、レクシャが重々しく口を開いた。


「『最も愛する家族を御者のような酷い目に遭いたくなければ宰相の座を寄こせ』と」
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