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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第338話 逃亡準備(前編)
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「だが父さん、俺たちはこれからどうすればいいのですか?」
レクシャ以外の家族全員がソファーに座ると、執務用の椅子に座っていたレクシャが小さく頷いた。
「それに関しては既に準備は済ませてある。その前に……」
家族に向けられたレクシャの視線が、突然レクシャの背後に控えていたインホルトに向けられる。
「インホルト。お前は自室に戻り荷物を纏めた後、屋敷の使用人達に、荷物を纏めさせ、大広間に来るように指示を出してくれ」
「かしこまりました」
深々と頭を下げたインホルトは、スタスタと扉の前に立ち、フリージア達にもう一度頭を下げると音も立てずに部屋を出た。
「お父様、荷造りをさせた使用人達はどうなるのですか?」
「私から事情を話した上で、彼ら全員を帝国にいる親戚たちのところに転移させる」
「「「っ!!」」」
(お父様、そこまで考えていたのですか!)
「父さん、だったらどうしてティアーヌとロスペルも一緒に行かせなかったのですか? 無効化魔法の影響で転移魔法が使えない俺やフリージアならまだしも」
「それをティアーヌとロスペルが許すと思うかい?」
「そうよ、私があなた達を置いて帝国に行くわけがないでしょ」
「その通りです」
「それはそうだったな……悪かった」
自分と同じく家族想いの2人が、王国に3人を置いて行くわけがないと悟ったリュシアンは静かに口を噤んだ。
それを真横で見ていたフリージアが悲しそうに眉を潜ませると、険しい顔をしたレクシャが小さく咳払いをして注目を自分に集めた。
「コホン。それではこれから、皆に逃亡先を伝える」
「逃亡先?」
(逃亡先って一体どういうことなの?)
益々訳が分からなくなり、困惑するフリージア達に、レクシャは机の上で両手を組んだ。
「そうだ。さっきも言ったが、ノルベルトの改竄魔法によって我がサザランス公爵家は無くなる。そして、この場所はインベック公爵領になる」
「「「「っ!?」」」」
(この場所が、ノルベルトの物になるの!?)
家族や使用達と過ごした屋敷や、領民達を駆け回った穏やかで温かな領地を思い出し、これが全てノルベルトの物になると思い至ったフリージアやティアーヌ、ロスペルは言葉を失った。
だが、次期領主であるリュシアンはその事実を黙って受け入れることが出来なかった。
「父さん、それは本当なのですか?」
「あぁ、ノルベルトが言っていたから間違いない」
[
「そこまでして……そこまでして、俺たちから何もかも奪いたいというのですか!」
ノルベルトが過去の因縁からサザランス公爵家を憎んでいるのは分かっていた。
だが、自分たちだけでは飽き足らず、300年前からずっと大切にしていたものまで奪うのだ。
まるで、それさえも宰相から自分の物だったと言わんばかりに。
「……そういうことだ」
「くっ!」
「兄さん!」
レクシャに殴りかかろうとするリュシアンを慌てて止めたロスペル。
「分かっている! だが……!!」
「兄さん」
「リュシアン兄様」
悔しそうに拳をテーブルに叩きつけたリュシアンを見て、ロスペルとフリージアはこの場所を誰よりも奪われることを嫌だったのは兄だったかもしれないと思い至った。
その後、レクシャは家族に逃亡先を伝える。
レクシャは王城の下級文官に、ティアーヌはシュタール辺境伯家の見習い侍女に、リュシアンはヴィルマン侯爵家の見習い騎士に、ロスペルは王城の見習い宮廷魔法師に、そしてフリージアは……エドガスのいる村に平民として匿われることになった。
「俺が、ヴィルマン侯爵家に……」
「リュシアン兄様……」
愕然とするリュシアンの肩をフリージアが慰めるように優しくさするっていると、憔悴しきっているレクシャが指示を出す。
「早速、皆には荷造りをして欲しいのだが……フリージアとリュシアン」
「はい」
「何でしょうか?」
「2人は、荷造りが終わったらこの部屋に戻ってきて欲しい。2人に、無効化魔法の魔道具を作って欲しい」
「魔道具? それをどうするんだ?」
虚ろな目を向けるリュシアンを見て、傷ついたような顔をしたレクシャは、己を律するように小さく息を吐くと、宰相家当主らしい威厳ある顔に戻す。
「私の信頼する人達に渡す。この人達がいつか我らがノルベルトから取り返す時の協力者になる」
「それ、本当に信頼出来るんですよね?」
「あぁ、私の全てにかけて誓おう」
家族の前では柔和な笑みを浮かべる父が、ここぞという時は宰相家当主らしい真剣な表情になる。
それを知っていた二人は、父のいつになく真剣な顔に、それが噓偽りのないものであると察した。
「そういうことでしたら……なぁ、フリージア?」
「えぇ、協力しましょう」
「ありがとう2人とも」
フッといつもの笑みを浮かべたレクシャは、笑みを潜めると今度はティアーヌとロスペルに視線を向けた。
「ティアーヌとロスペルは、荷造りを終えた後、屋敷に全ての物を換金し、皆に分配する準備をしてくれ」
「分かったわ。ロスペル、通信魔法でアポを取って、転移魔法で彼を呼んで頂戴」
「了解」
なぜだかワクワクしている母を見て、ロスペルは呆れたような溜息をついた。
そんな2人に再び笑みを浮かべたレクシャは、改めて目の前にいる家族に声をかける。
「では、各自荷物を纏めた後、各々割振られた仕事をこなしてくれ。その間、私は使用人達に事情を話し、全員を屋敷に逃がす」
「あら、旦那様は荷造りをしなくて良いのかしら?」
「それなら、既に終わっているから大丈夫だ」
「そう」
安心したような笑みを浮かべるティアーヌに、少しだけ唇を引き締めたレクシャは、部屋を出ていく家族にどうしても伝えたいことを口にする。
「皆、忘れないで欲しい。ノルベルトの改竄魔法によって変えられたこの国には、お前たちを知っている者は誰一人としていない」
部屋に重苦しい沈黙が降りる中、レクシャは家族と約束をする。
「だから、約束して欲しい。再会するその日まで自分たちの正体を明かしてはならない。例え辛くても、それが私たちや私たちにとって大切な人達を……果てはこの国全体を奴から守ることに繋がるから」
「えぇ」
「分かっているよ」
「分かっています」
「分かっていますわ。お父様」
レクシャ以外の家族全員がソファーに座ると、執務用の椅子に座っていたレクシャが小さく頷いた。
「それに関しては既に準備は済ませてある。その前に……」
家族に向けられたレクシャの視線が、突然レクシャの背後に控えていたインホルトに向けられる。
「インホルト。お前は自室に戻り荷物を纏めた後、屋敷の使用人達に、荷物を纏めさせ、大広間に来るように指示を出してくれ」
「かしこまりました」
深々と頭を下げたインホルトは、スタスタと扉の前に立ち、フリージア達にもう一度頭を下げると音も立てずに部屋を出た。
「お父様、荷造りをさせた使用人達はどうなるのですか?」
「私から事情を話した上で、彼ら全員を帝国にいる親戚たちのところに転移させる」
「「「っ!!」」」
(お父様、そこまで考えていたのですか!)
「父さん、だったらどうしてティアーヌとロスペルも一緒に行かせなかったのですか? 無効化魔法の影響で転移魔法が使えない俺やフリージアならまだしも」
「それをティアーヌとロスペルが許すと思うかい?」
「そうよ、私があなた達を置いて帝国に行くわけがないでしょ」
「その通りです」
「それはそうだったな……悪かった」
自分と同じく家族想いの2人が、王国に3人を置いて行くわけがないと悟ったリュシアンは静かに口を噤んだ。
それを真横で見ていたフリージアが悲しそうに眉を潜ませると、険しい顔をしたレクシャが小さく咳払いをして注目を自分に集めた。
「コホン。それではこれから、皆に逃亡先を伝える」
「逃亡先?」
(逃亡先って一体どういうことなの?)
益々訳が分からなくなり、困惑するフリージア達に、レクシャは机の上で両手を組んだ。
「そうだ。さっきも言ったが、ノルベルトの改竄魔法によって我がサザランス公爵家は無くなる。そして、この場所はインベック公爵領になる」
「「「「っ!?」」」」
(この場所が、ノルベルトの物になるの!?)
家族や使用達と過ごした屋敷や、領民達を駆け回った穏やかで温かな領地を思い出し、これが全てノルベルトの物になると思い至ったフリージアやティアーヌ、ロスペルは言葉を失った。
だが、次期領主であるリュシアンはその事実を黙って受け入れることが出来なかった。
「父さん、それは本当なのですか?」
「あぁ、ノルベルトが言っていたから間違いない」
[
「そこまでして……そこまでして、俺たちから何もかも奪いたいというのですか!」
ノルベルトが過去の因縁からサザランス公爵家を憎んでいるのは分かっていた。
だが、自分たちだけでは飽き足らず、300年前からずっと大切にしていたものまで奪うのだ。
まるで、それさえも宰相から自分の物だったと言わんばかりに。
「……そういうことだ」
「くっ!」
「兄さん!」
レクシャに殴りかかろうとするリュシアンを慌てて止めたロスペル。
「分かっている! だが……!!」
「兄さん」
「リュシアン兄様」
悔しそうに拳をテーブルに叩きつけたリュシアンを見て、ロスペルとフリージアはこの場所を誰よりも奪われることを嫌だったのは兄だったかもしれないと思い至った。
その後、レクシャは家族に逃亡先を伝える。
レクシャは王城の下級文官に、ティアーヌはシュタール辺境伯家の見習い侍女に、リュシアンはヴィルマン侯爵家の見習い騎士に、ロスペルは王城の見習い宮廷魔法師に、そしてフリージアは……エドガスのいる村に平民として匿われることになった。
「俺が、ヴィルマン侯爵家に……」
「リュシアン兄様……」
愕然とするリュシアンの肩をフリージアが慰めるように優しくさするっていると、憔悴しきっているレクシャが指示を出す。
「早速、皆には荷造りをして欲しいのだが……フリージアとリュシアン」
「はい」
「何でしょうか?」
「2人は、荷造りが終わったらこの部屋に戻ってきて欲しい。2人に、無効化魔法の魔道具を作って欲しい」
「魔道具? それをどうするんだ?」
虚ろな目を向けるリュシアンを見て、傷ついたような顔をしたレクシャは、己を律するように小さく息を吐くと、宰相家当主らしい威厳ある顔に戻す。
「私の信頼する人達に渡す。この人達がいつか我らがノルベルトから取り返す時の協力者になる」
「それ、本当に信頼出来るんですよね?」
「あぁ、私の全てにかけて誓おう」
家族の前では柔和な笑みを浮かべる父が、ここぞという時は宰相家当主らしい真剣な表情になる。
それを知っていた二人は、父のいつになく真剣な顔に、それが噓偽りのないものであると察した。
「そういうことでしたら……なぁ、フリージア?」
「えぇ、協力しましょう」
「ありがとう2人とも」
フッといつもの笑みを浮かべたレクシャは、笑みを潜めると今度はティアーヌとロスペルに視線を向けた。
「ティアーヌとロスペルは、荷造りを終えた後、屋敷に全ての物を換金し、皆に分配する準備をしてくれ」
「分かったわ。ロスペル、通信魔法でアポを取って、転移魔法で彼を呼んで頂戴」
「了解」
なぜだかワクワクしている母を見て、ロスペルは呆れたような溜息をついた。
そんな2人に再び笑みを浮かべたレクシャは、改めて目の前にいる家族に声をかける。
「では、各自荷物を纏めた後、各々割振られた仕事をこなしてくれ。その間、私は使用人達に事情を話し、全員を屋敷に逃がす」
「あら、旦那様は荷造りをしなくて良いのかしら?」
「それなら、既に終わっているから大丈夫だ」
「そう」
安心したような笑みを浮かべるティアーヌに、少しだけ唇を引き締めたレクシャは、部屋を出ていく家族にどうしても伝えたいことを口にする。
「皆、忘れないで欲しい。ノルベルトの改竄魔法によって変えられたこの国には、お前たちを知っている者は誰一人としていない」
部屋に重苦しい沈黙が降りる中、レクシャは家族と約束をする。
「だから、約束して欲しい。再会するその日まで自分たちの正体を明かしてはならない。例え辛くても、それが私たちや私たちにとって大切な人達を……果てはこの国全体を奴から守ることに繋がるから」
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「分かっています」
「分かっていますわ。お父様」
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