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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第341話 サザランス公爵家が滅亡した日
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「父さん」
「父上」
「あなた」
家族との別れを拒み、無理矢理荷台に乗せられた娘の泣いている姿を見送ったレクシャは、傍で心配そうな顔をする家族を安心させるように笑みを零した。
「これで良い。あの子は、私に似て頑固なところがあるから。こちらが無理矢理にでも行かせないと」
痛々しい笑みを浮かべるレクシャに、泣きそうな顔で微笑んだティアーヌが震える夫の手を優しく包んだ。
「えぇ、そうね。私とあなたの子……そして、あなた達2人の大切な妹なのだから」
「あぁ」
「そう、だね」
ティアーヌの言葉を聞いて、悔しそうに眉を顰めた2人が小さく頷くと4人の間に沈黙が流れた。
この時、空気を察したフリージアが率先して家族の誰かに話を振るのだが、その彼女は先程、泣きながら住み慣れた我が家を去った。
この場に彼女がいないことがなぜだかおかしくて、でも泣きたくなるほど悔やんだ4人は、揃って小さく笑みを浮かべると静かに屋敷の方に視線を向けた。
そして、笑みを潜めたレクシャがロスペルの肩に手を置く。
「ロスペル。先程、打ち合わせした通りやってくれ」
「分かっているよ、父上」
ティアーヌが使用人達にお金を分配している間に、レクシャと打ち合わせをしていたロスペルは、腰に携えていたマジックバックから銀色の杖を取り出す。
「……それじゃあ、始めるよ」
インホルトが放った刺客達が、着実に屋敷に向かっている中、目を閉じて深く息を吐いたロスペルは、愛用の杖を両手で強く握るとすぐさま魔力を練る。
すると、ロスペルの足元に白色の魔力の渦となって彼の体を包んだか思いきや、その魔力が瞬く間に杖を先に集積する。
(ノルベルト、お前の思い通りになると思うなよ)
ノルベルトへの恨みを胸に、目を開けたロスペルは白色の魔力が集まった杖を屋敷に向ける。
「行くよ、《ファンタジアヴィジョン》」
無属性魔法の名前をロスペルが唱えた瞬間、白色の魔力が結界のように屋敷全体を覆い、誰も住んでいない真っ暗な屋敷に明かりが灯ると、屋敷から聞こえてくるはずもないサザランス公爵家の明るい笑い声が聞こえてきた。
「これで良い?」
「あぁ、上出来だ。ここまで完成度が高ければ、幻だなんて思わないだろう」
屋敷にかけられた幻想魔法に、満足げな笑みを浮かべたレクシャは、閉じられた門の扉を優しく掴んだ。
術者が思い描いた幻を体現する幻想魔法は、術者の魔力が洗練されていればいるほど、他者から幻だと見破られる可能性が低くなる。
欠点としては、見破られる見破られない関係なく、他の魔法を撃ちこまれたらあっという間に効力が消えること。
だが、ロスペルが唱えた幻想魔法は、よほどの魔法使い……彼の兄弟子や師匠でもない限り見破ることは不可能な程に精度の高い幻だった。
(さすが『稀代の天才魔法師』と呼ばれている我が息子。ここまでの魔法が使えるようになったなんて)
後ろにいる息子を誇らしげに思いつつ、扉から手を離したレクシャが家族に向き直る。
「それでは、我々も行こう。もうじき奴の手下が現れる」
「あぁ、そうだな」
「えぇ、そうね」
レクシャの言葉でティアーヌはロスペルの傍に、リュシアンはヴィルマン侯爵家の馬車に近づいた時、杖を握ったままのロスペルが口を開く。
「父上、母上、そしてリュシアン兄さん」
ロスペルに呼ばれて彼の方を見た3人。
そんな彼らに、ロスペルは遠慮がちに問う。
「また会えるよね?」
(また、この場所に家族全員で)
銀色の瞳を不安げに揺らすロスペルを見て、レクシャが微笑みかける。
「当然だ。そのために私たちはしばらく間、離れ離れになるのだから」
「そ、そうだよね」
レクシャの言葉にロスペルが笑みを零した時、隣にいたティアーヌがロスペルの肩を叩いた。
「そうよ! 私たちはまたこの場所に……家族全員で戻ってくるのよ!」
「家族、全員で」
(つまり、ここに戻ってくる時はフリージアも一緒ってことだよね?)
すると今度は、リュシアンが後ろからロスペルの肩を掴んだ。
「そうだ! それでいつものように俺との鍛錬に付き合ってもらう!」
「ハハッ、兄さんとの鍛錬は案外面白いから付き合ってあげてもいいよ」
「『案外』ってなんだよ! というか、どうして上から目線なんだよ! 俺は一応、お前の兄なんだからな!」
「はいはい」
「お前なぁ~!」
「「アハハッ!!」」
いつもようにリュシアンを弄り、それを見て笑っている両親を見て、胸のつかえが取れたロスペルは
「それじゃあ、また会おうね」
「あぁ! また会おう!」
「えぇ、また会いましょ」
「そうだな……また会おう。ティアーヌ、リュシアン、ロスペル」
(そして、フリージア)
大切な家族を見送ったレクシャは、収納魔法が付与された大きなカバンから黒いローブを出して身に纏うと、そのまま夜闇に紛れて屋敷を後にした。
その約30分後、到着したノルベルトの刺客たちによって屋敷は燃え盛り、その様子をフリージアとレクシャとリュシアンは遠くから見ていた。
――この日が、300年前から続いてきた宰相家、サザランス公爵家が滅亡した日であった。
「父上」
「あなた」
家族との別れを拒み、無理矢理荷台に乗せられた娘の泣いている姿を見送ったレクシャは、傍で心配そうな顔をする家族を安心させるように笑みを零した。
「これで良い。あの子は、私に似て頑固なところがあるから。こちらが無理矢理にでも行かせないと」
痛々しい笑みを浮かべるレクシャに、泣きそうな顔で微笑んだティアーヌが震える夫の手を優しく包んだ。
「えぇ、そうね。私とあなたの子……そして、あなた達2人の大切な妹なのだから」
「あぁ」
「そう、だね」
ティアーヌの言葉を聞いて、悔しそうに眉を顰めた2人が小さく頷くと4人の間に沈黙が流れた。
この時、空気を察したフリージアが率先して家族の誰かに話を振るのだが、その彼女は先程、泣きながら住み慣れた我が家を去った。
この場に彼女がいないことがなぜだかおかしくて、でも泣きたくなるほど悔やんだ4人は、揃って小さく笑みを浮かべると静かに屋敷の方に視線を向けた。
そして、笑みを潜めたレクシャがロスペルの肩に手を置く。
「ロスペル。先程、打ち合わせした通りやってくれ」
「分かっているよ、父上」
ティアーヌが使用人達にお金を分配している間に、レクシャと打ち合わせをしていたロスペルは、腰に携えていたマジックバックから銀色の杖を取り出す。
「……それじゃあ、始めるよ」
インホルトが放った刺客達が、着実に屋敷に向かっている中、目を閉じて深く息を吐いたロスペルは、愛用の杖を両手で強く握るとすぐさま魔力を練る。
すると、ロスペルの足元に白色の魔力の渦となって彼の体を包んだか思いきや、その魔力が瞬く間に杖を先に集積する。
(ノルベルト、お前の思い通りになると思うなよ)
ノルベルトへの恨みを胸に、目を開けたロスペルは白色の魔力が集まった杖を屋敷に向ける。
「行くよ、《ファンタジアヴィジョン》」
無属性魔法の名前をロスペルが唱えた瞬間、白色の魔力が結界のように屋敷全体を覆い、誰も住んでいない真っ暗な屋敷に明かりが灯ると、屋敷から聞こえてくるはずもないサザランス公爵家の明るい笑い声が聞こえてきた。
「これで良い?」
「あぁ、上出来だ。ここまで完成度が高ければ、幻だなんて思わないだろう」
屋敷にかけられた幻想魔法に、満足げな笑みを浮かべたレクシャは、閉じられた門の扉を優しく掴んだ。
術者が思い描いた幻を体現する幻想魔法は、術者の魔力が洗練されていればいるほど、他者から幻だと見破られる可能性が低くなる。
欠点としては、見破られる見破られない関係なく、他の魔法を撃ちこまれたらあっという間に効力が消えること。
だが、ロスペルが唱えた幻想魔法は、よほどの魔法使い……彼の兄弟子や師匠でもない限り見破ることは不可能な程に精度の高い幻だった。
(さすが『稀代の天才魔法師』と呼ばれている我が息子。ここまでの魔法が使えるようになったなんて)
後ろにいる息子を誇らしげに思いつつ、扉から手を離したレクシャが家族に向き直る。
「それでは、我々も行こう。もうじき奴の手下が現れる」
「あぁ、そうだな」
「えぇ、そうね」
レクシャの言葉でティアーヌはロスペルの傍に、リュシアンはヴィルマン侯爵家の馬車に近づいた時、杖を握ったままのロスペルが口を開く。
「父上、母上、そしてリュシアン兄さん」
ロスペルに呼ばれて彼の方を見た3人。
そんな彼らに、ロスペルは遠慮がちに問う。
「また会えるよね?」
(また、この場所に家族全員で)
銀色の瞳を不安げに揺らすロスペルを見て、レクシャが微笑みかける。
「当然だ。そのために私たちはしばらく間、離れ離れになるのだから」
「そ、そうだよね」
レクシャの言葉にロスペルが笑みを零した時、隣にいたティアーヌがロスペルの肩を叩いた。
「そうよ! 私たちはまたこの場所に……家族全員で戻ってくるのよ!」
「家族、全員で」
(つまり、ここに戻ってくる時はフリージアも一緒ってことだよね?)
すると今度は、リュシアンが後ろからロスペルの肩を掴んだ。
「そうだ! それでいつものように俺との鍛錬に付き合ってもらう!」
「ハハッ、兄さんとの鍛錬は案外面白いから付き合ってあげてもいいよ」
「『案外』ってなんだよ! というか、どうして上から目線なんだよ! 俺は一応、お前の兄なんだからな!」
「はいはい」
「お前なぁ~!」
「「アハハッ!!」」
いつもようにリュシアンを弄り、それを見て笑っている両親を見て、胸のつかえが取れたロスペルは
「それじゃあ、また会おうね」
「あぁ! また会おう!」
「えぇ、また会いましょ」
「そうだな……また会おう。ティアーヌ、リュシアン、ロスペル」
(そして、フリージア)
大切な家族を見送ったレクシャは、収納魔法が付与された大きなカバンから黒いローブを出して身に纏うと、そのまま夜闇に紛れて屋敷を後にした。
その約30分後、到着したノルベルトの刺客たちによって屋敷は燃え盛り、その様子をフリージアとレクシャとリュシアンは遠くから見ていた。
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