木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい

第355話 また会おう!!!

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「フリージア、あんたは急いでアイマスクとベレー帽を付けなさい。その間、私がどうにかするわ」
「『どうにか』って、どうするのよ!」
「フフン、任せなさい。これでも一応『稀代の天才魔法師』の弟子。ここに来る前に、師匠から万が一に備えての魔道具をいくつか借りているのよ」
「っ!」


 (ロスペル兄様!)

 得意げな笑みを浮かべるカトレアの言葉に驚きつつ、アイマスクとベレー帽を受け取ったフリージアは、いつものようにベレー帽に短くなった髪を全て入れる。
 それを見たカトレアは、懐から指輪型の魔道具を取り出すと、そのまま右手小指に嵌めた。

 (大丈夫。私は師匠の弟子。意識を集中させれば私にだって使える)

 小さく深呼吸して心を落ち着けたカトレアは、ドアに向かって言葉を発する。


「すみません、少し立て込んでいまして……」
「「っ!?」」


 カトレアの口から出た声に、フリージアとラピスが揃って目を見開く。

 (これって、もしかしなくても私の声? ということは、これは無属性の変声魔法!?)

 驚いて手が止まったフリージアを見て、再び得意げな笑みを浮かべたカトレアは、右手小指につけている魔道具を見せる。
 それは、カトレアがフリージアのところに行くと知ったロスペルが、万が一に備えて弟子に渡した変声魔法が付与された魔道具だった。

 (カトレア、あなたって人は……)

 カトレアの奇策にフリージアが思わず苦笑すると、扉越しからメストの非難の声が聞こえてきた。


「おい、誰だお前! カミルは俺に対してそんな言い方はしないぞ!」
「「っ!?」」


 (言い方ひとつで見破られるなんて、一体どういうことよ!)

 一瞬動きが固まったラピスをよそに、指輪を外したカトレアがベレー帽に髪を入れているフリージアに詰め寄る。


「ちょっとあんた! 普段からメスト様にどんな風に話しかけているのよ!」
「『どんな風に』って、今カトレアが話しかけたような感じよ!」
「だったら、どうしてバレるの!?」
「そ、それは……」


 ベレー帽を被り終えたフリージアが、困ったように淡い緑色の瞳を忙しなく泳がせる。
 それを見てカトレアが呆れたような溜息をつこうとした時、険しい顔をしたラピスが2人に声をかける。


「おい、このままだと強硬突破されかねないぞ。どうするんだ?」


 冷静沈着なラピスの焦り顔を見て、冷静になったフリージアがアイマスクを付けると静かに立ち上がった。


「フリージア?」
「カトレア、ロスペル兄様から転移魔法が付与された魔道具を預かっているわよね?」
「えっ、えぇ、もちろんよ。というか、どうして分かったの?」
「ロスペル兄様なら、そうするかなと思って」


 一瞬だけおどけた顔をしたフリージアは、いつもの無表情に戻すと扉の前まで歩いて立ち止まった。


「すみません、部屋の掃除をしていたもので……あと少しで終わりますから待っていてもらえないでしょうか?」


 ついさっきまで聞いていたフリージアのソプラノ声とは違う、男装をしている時のカミルのアルト声。
 すると、ようやく聞けたフリージアの声に安心したのか、扉の前で殺気をまき散らせていたメストの気配が、一気に柔らかいものに変わった。


「そうか。それなら、一緒に……」
「いえ、あと少しなので待っていただけると幸いです」
「……分かった。ここで待つ」
「ありがとうございます」


 メストの返事を聞いて小さく溜息をついたフリージアが、そっと後ろにいる2人に振り返った。


「2人とも、今日は来てくれてありがとう。後はどうにかするから」
「っ!」


 フリージアの言葉にカトレアが思わず息を呑む。


『2人とも、今日は来てくれてありがとう。また遊びに来てね』


 それは、フリージアがまだ貴族令嬢だった頃、フリージアの住む屋敷に遊び来た2人が帰る時、よくフリージアが2人にかけていた言葉だった。
 それを思い出し、小さく笑みを零したカトレアは、いつの間にか双剣を収めているラピスの腕を取った。


「分かったわ。それじゃあ、最後にとっておきの魔法をかけるわね」
「えっ?」


 首を傾げるフリージアに、優しく微笑んだカトレアが左手の小指につけている魔道具に魔力を流す。


「《クリーン》」


 カトレアが小声で唱えた瞬間、少しだけ散らかっていた部屋が一気に綺麗になった。


「カトレア、これって……」
「じゃあ、また会いに来るわね」
「う、うん! 待っているわ!」


 (本当、カトレアって泣き虫なくせにお転婆なんだから)

 一瞬だけ見せてくれたフリージアの優しい笑みに、満足げに笑ったカトレアはラピスと共に2人が転移魔法で王都に帰った。
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