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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第360話 王族の護衛
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――時は、カトレアとラピスが森を訪れる前まで遡る。
「我々、第四部隊が王族の護衛ですか?」
騎士団本部に出勤して早々、フェビルに呼ばれたメストとシトリンは、彼がいる執務室を訪れる。
そこで、フェビルから今年の建国祭の王族護衛をメスト率いる第四部隊がつくことが伝えられた。
「あぁ、昨夜、宰相閣下の使者らしき成金貴族野郎が、恩着せがましく勅命書を持ってきた。その中に『建国祭当日は、近衛騎士団第四部隊が王族の護衛役をせよ』と書かれていた」
いつものノルベルトの一方的な命令にげんなりしていフェビルに、険しい顔をしたメストが問い質す。
「それは、『近衛騎士団全体で』ではなく『第四部隊だけ』が王族の皆様の護衛をせよということでしょうか?」
「そう受け取ってもらって構わない。なぁ、グレア?」
「そうですね」
「そう、ですか……」
(去年までは第一部隊から第三部隊が王族の護衛を任され、俺たちの第四部隊は王都の門番を任されたのに、どうして今年は第四部隊だけが王族護衛を任された?)
本来、近衛騎士王族の護衛を任されており、建国祭当日は近衛騎士団全員で王族の護衛に就いていた。
だが、第四部隊の護衛対象であるはずの第一王子の存在を改竄魔法で国民の記憶から抹消したノルベルトが、宰相としての権力をフル活用し、フェビルやルベルを無理矢理黙らせた。
その結果、王族の護衛はノルベルトの飼い犬に成り下がった第一部隊から第三部隊が王族の護衛を任され、俺たちの第四部隊は王都の門番を任されたのだ。
そんなノルベルトが突然、王族護衛を飼い犬からメスト達に任せた。
(宰相閣下は一体何を考えていらっしゃるんだ?)
ノルベルトの思惑が掴めないメストが静かに口を閉じると、それを横目で見たシトリンが、僅かに眉を顰めてフェビルに視線を戻した。
「ちなみに、勅命書は国王陛下の名前で書かれたものでしょうか?」
「いや、宰相閣下の名前で書かれたものだ。だが、今回も陛下しか使えないはずの御璽が押されている」
「『御璽』って、あの玉璽ですか?」
御璽とは、新国王の即位や国同士の条約締結など、王国にとって最重要とされる決定事項に使われる印鑑であり、謂わば、国の総意を現すこの国で最も大事な物。
そのため、ペトロート王国で御璽を使うことを許されているのは、国の長である国王ただ1人だけである。
「あぁ、信じられないかもしれんが、この通り使われているぞ」
そう言って、フェビルは机の上に乗っていた手紙をシトリンに差し向けた。
「拝見しても?」
「構わん」
「ありがとうございます」
フェビルから手紙を受け取ったシトリンは、隣で黙っているメストと一緒に勅命書に目を通す。
そこには、フェビルが話した内容が記載されており、手紙の最後にはノルベルトの名前の横に御璽が押されていた。
「本当に、玉璽が使われていますね。それも宰相閣下の名前の隣に」
「ですが、陛下以外の者が御璽を使った場合、いかなる理由でも王族や国民の意志を蔑ろにしたとして不敬罪で即刻処刑されますよね?」
「そんなのは俺が知るとこではない! だが、奴が不敬罪で処刑される時が来たら、俺自らがあのクソ宰相の首を刎ねてやる!」
「団長、ご本人がいないことと部下の前だからと言って『クソ宰相』はダメですよ。それと、少しは預り知らぬなんて言わないでください。一応、騎士団の団長なのですから」
「フン!」
フェビルの傍に立っているグレアから淡々と諫められ、不機嫌になったフェビルは頬杖を突くと小さく鼻を鳴らしてそっぽ向いた。
その様子を目の当たりにした、シトリンは小さく溜息をつくとグレアに視線を移す。
「副団長。このような場合、こちらは陛下からの勅命として受け取ってよろしいのでしょうか?」
「そうですね。一応、昨夜のうちに宰相閣下宛に確認のお手紙を出したところ、今朝返事が返ってきて『玉璽が押されているのだから、陛下の勅命に決まっているだろうが!』と」
「だとしたら、陛下の名前が記載されているはずなのですけどね」
「宰相閣下曰く『陛下は今、お体が優れないため、私が陛下に代わって勅命を出し、玉璽を押した』と」
「代理が使っていい代物ではないのですが」
苦笑を漏らしたシトリンは、手紙に視線を落とした。
(でもまぁ、万が一逆らった場合、国家反逆罪として処刑されるんだよね)
ノルベルトの身勝手に振り回されていると知ったシトリンは、呆れたように深い溜息をつくと、その隣で静かに話を聞いていたメストも深い溜息をついた。
「それにしても、建国祭の警備にまで口出しするとは……近衛騎士団に着任してから思っていましたが、宰相閣下は建国祭に対しての力の入れようが凄まじいですね」
「そうですね。騎士団長が口を挟むことを許さないくらいには」
「うぐっ!」
本来、建国祭の警備は王国騎士団長と宮廷魔法師団長が話し合って建国祭当日の警備計画を立てて決め、それを宰相や他の大臣、国王に見てもらい、全員の了承を貰ったところで実行に移す。
そのため、宰相が口を出して良いのは、2人の団長が話し合って決めたことに対してだけであり、警備を決める段階で口出しすることは暗黙の了解で禁じられているのだが……
「まぁ、それだけ我が国の未来と繁栄を願っているということでしょう」
「『未来と繁栄』ねぇ……」
(それが、この国にとって最悪な未来になる可能性があるかもしれないというのに)
グレアの言葉を聞いたフェビルは、深い溜息をつくと物憂げな顔で窓から見える空を見上げた。
「我々、第四部隊が王族の護衛ですか?」
騎士団本部に出勤して早々、フェビルに呼ばれたメストとシトリンは、彼がいる執務室を訪れる。
そこで、フェビルから今年の建国祭の王族護衛をメスト率いる第四部隊がつくことが伝えられた。
「あぁ、昨夜、宰相閣下の使者らしき成金貴族野郎が、恩着せがましく勅命書を持ってきた。その中に『建国祭当日は、近衛騎士団第四部隊が王族の護衛役をせよ』と書かれていた」
いつものノルベルトの一方的な命令にげんなりしていフェビルに、険しい顔をしたメストが問い質す。
「それは、『近衛騎士団全体で』ではなく『第四部隊だけ』が王族の皆様の護衛をせよということでしょうか?」
「そう受け取ってもらって構わない。なぁ、グレア?」
「そうですね」
「そう、ですか……」
(去年までは第一部隊から第三部隊が王族の護衛を任され、俺たちの第四部隊は王都の門番を任されたのに、どうして今年は第四部隊だけが王族護衛を任された?)
本来、近衛騎士王族の護衛を任されており、建国祭当日は近衛騎士団全員で王族の護衛に就いていた。
だが、第四部隊の護衛対象であるはずの第一王子の存在を改竄魔法で国民の記憶から抹消したノルベルトが、宰相としての権力をフル活用し、フェビルやルベルを無理矢理黙らせた。
その結果、王族の護衛はノルベルトの飼い犬に成り下がった第一部隊から第三部隊が王族の護衛を任され、俺たちの第四部隊は王都の門番を任されたのだ。
そんなノルベルトが突然、王族護衛を飼い犬からメスト達に任せた。
(宰相閣下は一体何を考えていらっしゃるんだ?)
ノルベルトの思惑が掴めないメストが静かに口を閉じると、それを横目で見たシトリンが、僅かに眉を顰めてフェビルに視線を戻した。
「ちなみに、勅命書は国王陛下の名前で書かれたものでしょうか?」
「いや、宰相閣下の名前で書かれたものだ。だが、今回も陛下しか使えないはずの御璽が押されている」
「『御璽』って、あの玉璽ですか?」
御璽とは、新国王の即位や国同士の条約締結など、王国にとって最重要とされる決定事項に使われる印鑑であり、謂わば、国の総意を現すこの国で最も大事な物。
そのため、ペトロート王国で御璽を使うことを許されているのは、国の長である国王ただ1人だけである。
「あぁ、信じられないかもしれんが、この通り使われているぞ」
そう言って、フェビルは机の上に乗っていた手紙をシトリンに差し向けた。
「拝見しても?」
「構わん」
「ありがとうございます」
フェビルから手紙を受け取ったシトリンは、隣で黙っているメストと一緒に勅命書に目を通す。
そこには、フェビルが話した内容が記載されており、手紙の最後にはノルベルトの名前の横に御璽が押されていた。
「本当に、玉璽が使われていますね。それも宰相閣下の名前の隣に」
「ですが、陛下以外の者が御璽を使った場合、いかなる理由でも王族や国民の意志を蔑ろにしたとして不敬罪で即刻処刑されますよね?」
「そんなのは俺が知るとこではない! だが、奴が不敬罪で処刑される時が来たら、俺自らがあのクソ宰相の首を刎ねてやる!」
「団長、ご本人がいないことと部下の前だからと言って『クソ宰相』はダメですよ。それと、少しは預り知らぬなんて言わないでください。一応、騎士団の団長なのですから」
「フン!」
フェビルの傍に立っているグレアから淡々と諫められ、不機嫌になったフェビルは頬杖を突くと小さく鼻を鳴らしてそっぽ向いた。
その様子を目の当たりにした、シトリンは小さく溜息をつくとグレアに視線を移す。
「副団長。このような場合、こちらは陛下からの勅命として受け取ってよろしいのでしょうか?」
「そうですね。一応、昨夜のうちに宰相閣下宛に確認のお手紙を出したところ、今朝返事が返ってきて『玉璽が押されているのだから、陛下の勅命に決まっているだろうが!』と」
「だとしたら、陛下の名前が記載されているはずなのですけどね」
「宰相閣下曰く『陛下は今、お体が優れないため、私が陛下に代わって勅命を出し、玉璽を押した』と」
「代理が使っていい代物ではないのですが」
苦笑を漏らしたシトリンは、手紙に視線を落とした。
(でもまぁ、万が一逆らった場合、国家反逆罪として処刑されるんだよね)
ノルベルトの身勝手に振り回されていると知ったシトリンは、呆れたように深い溜息をつくと、その隣で静かに話を聞いていたメストも深い溜息をついた。
「それにしても、建国祭の警備にまで口出しするとは……近衛騎士団に着任してから思っていましたが、宰相閣下は建国祭に対しての力の入れようが凄まじいですね」
「そうですね。騎士団長が口を挟むことを許さないくらいには」
「うぐっ!」
本来、建国祭の警備は王国騎士団長と宮廷魔法師団長が話し合って建国祭当日の警備計画を立てて決め、それを宰相や他の大臣、国王に見てもらい、全員の了承を貰ったところで実行に移す。
そのため、宰相が口を出して良いのは、2人の団長が話し合って決めたことに対してだけであり、警備を決める段階で口出しすることは暗黙の了解で禁じられているのだが……
「まぁ、それだけ我が国の未来と繁栄を願っているということでしょう」
「『未来と繁栄』ねぇ……」
(それが、この国にとって最悪な未来になる可能性があるかもしれないというのに)
グレアの言葉を聞いたフェビルは、深い溜息をつくと物憂げな顔で窓から見える空を見上げた。
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