木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい

第361話 近衛騎士としての務め

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「ですが、団長。宰相閣下はなぜ、去年まで第一部隊から第三部隊が担っていた役割を、今年は第四部隊が担うことにしたのでしょう?」


 (今まで団長が抗議しても絶対に変えることしなかったことをどうして今年になって? それも俺たちだけで?)

 真剣な表情のメストからの問いかけに、窓の外から視線を戻したフェビルが、僅かに眉を顰めて深く溜息をつくと、両手を後ろに回して背もたれに体を預けた。


「さぁな、あのバカ宰相のことだ。きっと第一部隊から第三部隊には別で動いていて欲しいことがあるのだろうよ」
「また『バカ宰相』って……ちなみに、第一部隊から第三部隊は今年、どちらを警備されるのですか?」


 上司の暴言に呆れつつも問い質したメストに対し、フェビルは小さく首を横に振った。


「分からん。そもそも、あいつらは表向き俺の部下であるが、実際は宰相閣下の手駒だ。仮に奴らが今年のことを宰相閣下から聞いていたとして、それを俺に言うか……」
「そこは王国騎士団の長なのですから、その辺りを把握することは可能では?」
「まぁ、そうだな……」


 (正直、あの方が建国祭に向けて水面下で動いているこの時期に、ノルベルトを刺激するような真似はしたくはないが……念には念を入れておいても良いだろう)

 シトリンから至極当たり前のことを聞かれ、ノルベルトにレクシャのことを知られたくないフェビルは、困ったような顔でため息をつくと視線をグレアに向けた


「グレア」
「はい」
「無理をしない範囲で、第一部隊から第三部隊が建国祭当日、どのように動くか探ってきてくれないか?」
「かしこまりました。では早速、探りを入れてきてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、くれぐれも無理だけはするなよ」
「分かっていますよ、団長」


 深々と頭を下げたグレアが笑みを浮かべると、少しでも早くノルベルトの手駒の動きを掴むため、足早に執務室を立ち去る。
 その背中を見届けたメストは、ふと去年のことを思い出した。


「そう言えば、去年は王都の門番をしていたのですが、今年はどこがやるのですか?」
「それなら第二騎士団がするそうだ」
「はいっ!?」


 (魔物討伐を主とする第二騎士団が、どうして王都の門番を!?)

 驚きのあまり開いた口が塞がらないメストの隣で、険しい顔をしたシトリンが静かに口を開く。


「それも、宰相閣下の指示ですか?」
「あぁ、昨夜、第一騎士団長と第二騎士団長と3人で話し合いをしていた時に、例の成金野郎がご丁寧に3人分の勅命書を届けに来てな、その時に知ったんだよ」
「ちなみに、第一騎士団はどちらを担当されるのですか?」
「第一騎士団は、今年も王城と式典が行われるコロッセオの警備を任されたそうだ」
「今年も、なのですね」


 王都から少し離れた場所にあるコロッセオは、王家主催の武闘大会や騎士団入団試験の最終試験の場など戦いを公に披露する場のほかに、大小様々な催し物に使われ、建国祭のメイン会場となっている。

 そのため、建国祭当日は王族が専用の馬車でコロッセオに向かい、その後を貴族や平民が馬車や徒歩で後を追い、コロッセオ近くにある大きな都市に住む人々は、王都から来た王族を盛大に迎えるのが風物詩となっていた。

 その際、近衛騎士団は第一騎士団や宮廷魔法師団と連携し、王族の護衛、王城の警備、コロッセオの警備、遊撃部隊と分かれるのだが、去年までは近衛騎士団第一部隊から第三部隊が王族の護衛、宮廷魔法師団と第一騎士団が王城とコロッセオの警備にあたっていた。

 そのコロッセオがある場所は、実は300年前に建てられていた王城の跡地であり、そのすぐ近くにある町はかつての王都であった。

 300年前、帝国との戦いが終わり、王城と王都が現在の場所に移った時、当時の国王が『300年前に起きた帝国との戦いを忘れず、『王国最大の黒歴史』として後世に伝えよう』と考え、旧王城をコロッセオに造り変えるよう命じたのだった。

 フェビルから話を来たシトリンが難しい顔をして口を閉じると、シトリンの隣で話を聞いていたメストが口を開いた。


「ということは、第一騎士団は今年も宮廷魔法師団と連携して警備にあたるということでしょうか?」
「そのつもりで動くそうだ」
「そうですか」


 (改めて思うが、去年とは明らかに異なる警備にあたる騎士団の配置。一体、今年は何があるというのだろうか?)

 フェビルからの返事に、メストもシトリンと同じく難しい顔で考え込むと、部下の顔を見たフェビルは大きく咳払いをして、2人の意識を無理矢理こちらに向けさせた。


「コホン! 安心しろ、当日は俺やグレアもお前たちのところにつくからフォローは任せておけ」
「「団長……」」


 ゆっくりと顔を上げた2人に、フェビルは団長らしい威厳溢れる表情で命じた。


「ともかく、今年はお前らが王族の命を預かる身になる! ようやく本来の役目を果たせる時が来たんだ。今まで以上に気合を入れ、近衛騎士としての務めを果たせ!!」
「「「ハッ!!!」」」


 こうして、メスト率いる第四部隊は建国祭でようやく、近衛騎士としての本来の務めである王族達の護衛をすることになったのだった。
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