木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

文字の大きさ
448 / 606
第7章 余興と奇貨の建国祭

第418話 想定外の再会

しおりを挟む
「はぁ、ようやくコロッセオに行けるわね」


 森で騎士達や村人達を打ち負され、フリージアの有無を言わせない態度に気おされた騎士達は、隊長の指示に従い、持ってきたボロ馬車にフリージアを押し込めると、コロッセオに向かって走らせていた。

 ちなみに、リアスタ村からコロッセオまでは馬車で約30分かかる。

 (なぜか、私の監視役として村長や村人の何人かが一緒に来たけど……今の建国祭って確か、平民は外出禁止のはずだけど)

 騎士の隣で堂々と歩いている村人達を一瞥し、小さく溜息をついたフリージアは、騎士に連れられて森を出る前の時のことを思い出す。


「そう言えば、あの森に残った村人達が村長に何かを吹き込まれて、我が家や馬小屋を見てニヤニヤしていたわね」


 (大方、家の物を盗った後、丸ごと焼くのでしょうけど。でも、そこは血術で守りを固めているし、あの2人がどうにかしてくれるでしょ)


「頼んだわよ、カトレア。そして、ラピスさん」


 2人の友人の顔が頭に浮かび、思わず目を細めたフリージアは、窓に顔を近づけると空を見上げる。

 家の外に出た時は真っ暗だった空が、森を出た時は今では徐々に明るくなり始めていた。

 (いよいよ、なのね)

 夜が明けきり、この国の建国を祝う音が鳴れば、この国の……ひいては、この世界の存亡をかけた戦いが始まる。
 迫りくる決戦の時に、フリージアは馬車の中で1人、険しい顔をしながら空を睨む。

 すると、馬車が突然、コロッセオ近くの街……旧都に入る門の前で急に止まった。
 そして、フリージアを護衛していた騎士達と門を守護していた騎士達の間で言い争いが始まった。


「お前、ここから先に入ることを許されているのは、俺たちのような高貴な騎士と女王様が『捕らえて来い!』命じられた下賤な平民だけだと言われただろうが!」
「しかし、この者達は我らが女神様を信奉する同志達であり、あの下民の捕縛を協力してくれた者達! だから、王都に入っていいはずだ!」
「貴様、自分が何を言っているのか分かっているのか! 建国祭の間は『平民は外出禁止!』とこの国の統治者であるノルベルト様が命じられていたであろうが!」
「だが、この者達は同志であるから、あの方たちのもとに連れて行くにはどうしても必要で……」


 (あらあら、まさかの内輪もめですか。でもまぁ、強欲なノルベルトが改竄魔法を使っているのだから、遅かれ早かれこうなるとは思っていたけど)


「それにしても、ダリアのことを『女神』と呼んだり『女王様』と呼んだり……段々と、改竄魔法の影響が取り返しのつかないところまで来ているわね」


 (それにノルベルトのことも、『創造神』や『統治者』と呼んで……一応、この国の統治者は他でもない国王陛下なのだけど)

 対象者に改竄魔法をかけ続ける、または対象者の改竄する記憶が膨大だった場合、対象者の人格に大きく影響してくる。
 だが、更に酷くなると支離滅裂なことを話し始めたり、思い込みが激しくなったりする。
 これは、廃人化になる前兆になると言われている。

 (でも、ここで時間を取られたら、お父様達の動きをノルベルトに感づかれる可能性がある。そうなる前に、ダリアやノルベルトがいるコロッセオに到着しないと!)

 諍いを起こす騎士達に焦りを覚えたフリージアが馬車を出ようとした。
 その時、門の奥から棘のある女の声が響いた。


「何しているの、あんた達! 建国祭の邪魔だからさっさとどきなさい!」
「っ!」


 (この声って、まさか……!)

 耳をつんざくような甲高い女の声に、フリージアは思わず肩を震わせる。

 その女は、貴族としての品性の欠片もない女だった。

 フリージアがまだ宰相家令嬢だった頃、フリージアが母と共にお茶会に出席する度に、母であるティアーヌに対して嫌味を言ったり罵ったりしていた。
 また、常に露出の多いドレスを身に纏い、見目麗しい殿方に向かって豊満な胸を押し付けて誘惑していた。

 そして、その女が生んだ子どもは、母を見習って気に入った殿方に色目を使って誘惑していることから、陰で『淫乱令嬢』と呼ばれて同性から白い目を向けられていた。


「どうして、あなたがいるのよ。カルミア・インベック」


 門の奥から現れたのは、ノルベルトの妻でダリアの母であるカルミア・インベック。
 今のペトロート王国で宰相家夫人として贅を尽くし、自分が気に入った容姿の整った殿方と淫らな悪戯(あそび)に日夜興じている女である。

 (念願の宰相家夫人になっても、相変わらず魔法で若作りをして殿方を魅了しているみたいね)

 オレンジ色の髪にルビーのような真っ赤な瞳、誰を魅了する容姿を強調するような露出度の高い真っ赤なドレスに身を包んだカルミアの登場に、その場にいた騎士達が全員鼻の下を伸ばす。
 そんな様子を窓越しに見ていたフリージアは、思わず眉を顰めるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~

ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。 騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。 母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。 そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。 望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。 ※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。 ※表紙画像はAIで作成したものです

追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!

六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。 家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能! 「ここなら、自由に生きられるかもしれない」 活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。 「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

処理中です...