木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

第428話 団長が決めたのなら!

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 ラピスからルベルとロスペルの話を聞いて、カトレアにフリージア救出により一層気合が入る。
 すると、何かを思い出したカトレアが不意にラピスに視線を向ける。


「ラピス」
「何だ?」


 真剣な表情のラピスの横顔に、胸が締め付けられたカトレアは少しだけ口を噤むと、勇気を出して口を開いた。


「ルベル団長がノルベルトの傀儡になったってことはグレア副団長も……」
「あぁ、ノルベルトの傀儡になった」


 真剣な表情のまま素っ気なく返事をしたラピスを見て、カトレアは悔しさで眉を顰める。

 (何でもないように言っているけど、ラピスだってきっと、尊敬する人達が敵に回って悔しいはず)


「ラピス、大丈夫?」


 心配そうな目で見つめるカトレアに、ラピスはそっと微笑みかける。


「大丈夫だ」


 そう返事をすると、ラピスは視線を前に戻す。


「分かっていたこととはいえ、新人の頃から何かと気にかけてくれているグレア副団長が、ノルベルトの傀儡になったと聞いた時は正直、かなり堪えた」


『ラピス・フォルダン。第二騎士団にようこそ』
『ラピス。今の動きは危険ですので止めてください』
『ラピス・フォルダン。今度からあなたは、近衛騎士として王都に従事することになります。メストやシトリン達と一緒に務めを果たしてください』


 二属性が使えるラピスが騎士を目指して騎士団に入った時から、何かと気にかけ、時には厳しく、時には優しくラピスを立派な騎士に育て上げたグレア。

 そんな彼を、ラピスはフェビルやメスト、シトリンと同じくらい尊敬していた。

 だからこそ、レクシャからグレアがノルベルトの傀儡になるかもしれないと知った時はショックを受け、グレアが本当にノルベルトの傀儡になってしまったと聞いて思わず言葉を失った。

 (副団長がノルベルトの傀儡になったと聞いた時、公爵様が俺のことを気遣ってくださった。けれど……)


『……了解』


 レクシャからグレアの相手をして欲しいと頼まれた時のフェビルの声を思い出し、ラピスは笑みを潜める。


「けれど、団長が副団長の相手をすると了承した時、俺は俺の……俺たちの目的を果たそうと覚悟を決めた」


 (団長だって、本当は副団長が敵に回ったことを悔やんでいるに違いない。だって、団長は副団長のことを『自分の右腕だ!』って事あるごとに自慢していたのだから)


『グレア、今度の魔物討伐はこの作戦で行きたいのだが……』
『団長、それは地形的に無理があると思いますが?』
『いや、この場所をこうして使えば魔物を討伐することが出来る!』
『まぁ、そうかもしれませんが……ちなみに、指揮は誰が?』
『もちろん、俺自らが執るぞ! 安心しろ、誰一人死なせないから!』
『そういうところは安心できるのですが……』


 無茶無謀を嬉々として言い出すフェビルに、呆れたように溜息をつきながらもフェビルの無茶無謀に付き合うグレア。

 何だかかんだで互いに信頼している2人が相対することを一番望んでいなかったのは、他でもないフェビルであることはラピスも分かっていた。

 なにせ、グレアを『頼りがいのある右腕だ!』と自慢し、彼を一番信頼していたのは彼の上司であるフェビルなのだから。


 (その団長が副団長の相手をすると決めたんだ。だったら、俺は俺の……俺とカトレアの目的を果たす。それが、騎士として……副団長に育ててもらった俺が出来ることだから)


「それなら、やるしかないわね!」
「あぁ!」


 ラピスのいつになく真剣な顔を見て、心の中で安堵したカトレアは険しい表情で前を向く。

 (ラピスも私と同じ思いなら、後は私たちの目的を果たすだけ!)

 フリージア救出に向けて、2人が改めて覚悟を決めた瞬間、前を歩いていた騎士達の足が止まる。

 (ついに、始まるのね)

 張り詰めた緊張感の中、カトレア達の前を歩いていたライドが、部下からの報告を受けると前の方に歩いて行く。
 そして、敵の前に現れた彼の口から戦闘開始の合図が告げられた。
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