木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

第430話 準備運動は終わり!

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「思ったよりもあっさり終わったね」


 魔法陣を守っている騎士達と宮廷魔法師達に対敵してすぐ、前衛として戦っていた騎士達の隙の無い洗練された連携プレーで、後衛としての仕事がほとんどなかったマーザスは、近くで伸びて動かなくなっている者達を見て思わず苦笑する。

 そんな彼の隣にライドが現れ、気を失っている者達を一瞥して小さく溜息をつく。


「聞いた話だと、ここに騎士と宮廷魔法師は基本的な鍛錬はおろか、任務すらも怠っていると。ですので、団長から『作戦を聞いた時はそう時間はかからないと思う』とおっしゃっていました」
「ほう、同じ騎士でもそんなに差が出るのかい?」
「同じ魔法師でも、鍛錬を続けている者と怠っている者では実力差がつきますでしょう?」
「確かにそうだね」


 帝国の宮廷魔法師を率いる者として思い当たるところがあったのか、ライドの説明を聞いたマーザスは腑に落ちた表情で頷く。
 そんな彼を横目で見たライドは、視線を寝ている騎士達に向けると再び小さく溜息をつく。


「私もモリス団長……第二騎士団の団長で、今回の作戦で東と西の魔法陣奪還の総指揮を任されている方なのですが、その団長から聞いた時は信じられませんでした」
「その言い方だと、君たちは騎士同士での交流はしないのかい?」


 (帝国では戦力強化と情報共有のために頻繁に交流しているみたいだけど)


「まぁ、役割が異なりますからあまり……特にここ数年は、なぜか風当たりが強くて全くと言っていいほど交流していませんね」


 ノルベルトの改竄魔法の影響が少なく、魔物討伐を主としている第二騎士団は、ノルベルトのせいで王都を守る第一騎士団や王族を守る近衛騎士団と絶縁状態だった。

 故に、第二騎士団所属の騎士達は、第一騎士団は自分達と同じように日頃から鍛錬をしていると思っていた。

 だが、それは単なる妄想でしかなかったと、先程の戦いを通して痛感したのだ。


「個人の戦力もさることながら、連携も呆れるくらいなっていませんでした。全く、よくもこれで騎士を名乗れたものです」


 起き上がる気配が一切しない騎士に、ライドが心底溜息をついていると、第二騎士団の騎士達と共に戦いの後処理をしていたカトレアが、護衛役であるラピスと共にマーザスのもとに戻ってきた。


「マーザス様、ライド様、周辺に騎士の気配はありませんでした。それと、拘束魔法でここにいる騎士以外の騎士を捕縛し、安全な場所に移動させて結界魔法を張りました」
「ありがとう。それじゃあ、僕も魔法師らしく仕事しないとね。《リストレイン》。そして、《サーチ》《テレポート》《バリア》」


 右手首に嵌めていた腕輪型の魔道具に魔力を流したマーザスは、目の前にいる騎士達をあっという間に一網打尽にして。


「これが、帝国産の魔道具。すごいですね」
「フフン! でしょでしょ! この魔道具はね僕の弟弟子が使っている杖を基にした魔道具で……!」
「マーザス様、時は一刻を争います。急ぎますよ」
「仕方なぁ……分かったよ」


 カトレアに止められて少々不満げなマーザスに、ライドは少しだけ笑みを零すとカトレアとマーザスに向かって深々と頭を下げる。


「ティブリー子爵令嬢、そして帝国の筆頭宮廷魔法師殿。魔法での的確な後方支援、本当にありがとうございます」


 (鍛錬を怠っているとはいえ、騎士の中に魔法師らしき人物もいたから、こちら側にも魔法師がいて本当に良かった)


「いえ、私たちはただ後ろから皆様が動きやすいように魔法で調整していただけですわ」
「そうそう、それに君たちが騎士として日頃から鍛錬しているから、僕たちも安心して魔法が打てる。だから、お礼を言うのはこちらも同じ。それに……」


 柔和な笑みを浮かべたマーザスは、後方で集団になって固まっている黒いフードの一団に目をやる。


「帝国の悪魔の力を使わずに無力化出来るなんて素晴らしいことだよ。誇っていい」
「は、はぁ……ですが、あの方達の仕事は騎士を無力化することではありませんから」
「そうだね」


 (大方魔力切れを心配しているんだろうけど……王族や皇族以上の魔力を持っている彼らからすれば、この程度のことで魔力切れは起こさないよ)

 帝国騎士団がどこかと戦う場合、必ずとサザランス侯爵一族の誰かが皇帝からの命令を受けて従事している。

 それは、あらゆる魔法を無効化する無効化魔法が、戦いにおいて敵の隙を作るにはうってつけの魔法だからで、膨大な魔力を持ち武芸にも秀でている彼らが長期戦の戦いに耐えられるからである。

 故に、戦いの際は無効化魔法が使える彼らを前提とした戦術が練られる。

 (王国でも、無効化魔法が頻繫に使われるかなと思ったんだけど)


「今の彼らが無効化魔法を良く知らないから使わなかったのかな」
「筆頭宮廷魔法師殿?」


 (まぁ、帝国の悪魔達の魔力の温存をしてくれるのは、こちらとしてはありがたいかな)

 首を傾げるライド達を見て、笑みを深くしたマーザスは小さく首を横に振る。


「何でも無いよ。それよりも、ここからが本番だよ。気合を入れないと」
「そうですね!」
「「はい!」」


 マーザスの言葉を聞いて、その場にいた3人が気合を入れる。
 そして、ライドは既に隊列を整えている騎士達の士気を上げる。


「みんな! 先程の戦いで準備運動は終わったな! ここからが俺たち騎士の本領発揮だ! 気合を入れていくぞ!!」
「「「「「ハッ!!!!!!!」」」」」


 そうして、一行は漆黒に光る魔法陣と帝国の悪魔達を守るために陣形を作って構えた。
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