木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

文字の大きさ
464 / 606
第7章 余興と奇貨の建国祭

第433話 奪還された魔法陣

しおりを挟む
「本当に、現れなくなった」
「でしょ? 本当、無効化魔法ってすごいよね~」


 魔物討伐からしばらく、後方でマーザス達を守りながら指揮をしていたライドは、部下から『魔法陣から魔物が出なくなった』と報告を聞いて驚いたように呟き、それを聞いていたマーザスが得意げに笑う。

 すると、一仕事を終えた黒いフードの集団がマーザスのところに来て、黒いフードの集団を率いていた男がぶっきらぼうにマーザスに仕事の報告をする。


「マーザス殿、言われた通りの魔法陣の中にあった黒い魔力の無効化は終わったぞ」
「そうみたいですね。お疲れ様でした。では、確認しますね」
「あぁ、よろしく頼む」


 魔物達が掃討され、騎士達が魔石の回収をしている中、にこやかな笑みを浮かべたマーザスは、啞然としたままのライドに『魔法陣の確認をしてきます』と言うと、黒いフードの集団と共に魔法陣のある森の奥へと踏み入れる。

 すると、目の前に真っ白い魔法陣が現れ、自然と笑みが零れたマーザスは、足早に魔法陣に向かうと、その場にしゃがみ込んで魔法陣に触れて目を閉じ、魔法陣の中の状態を確かめる。


「うん、黒い魔力が完全に消去されていますね。さすが、無効化魔法の使い手です」


 目を開けたマーザスが満足げな笑顔で褒めると、黒いフードの集団を率いていた男が不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「フン、当然だ。なにせ、俺たちサザランス侯爵一族は、魔力を打ち消すことに特化した一族なのだから」
「そうですね」


 生まれた瞬間からたった1つの魔法しか使えないと一族。
 だが、その一族が使う魔法は、数多の魔法を一瞬にして無効化する凄まじい力を秘めていた。

 (結界魔法を維持するための魔法陣とは言え、巨大で強力な魔法陣だからもっと時間がかかると思った。けれど、一時間足らずで魔法陣の中にあった魔力を無効化した。それも、たった10人で。さすが、帝国の死神)


「改めて、あなた方を敵に回したくありませんね」
「何を言っている?」
「フフフ、さぁ、自分でも何を言っているのか分かりません」
「フン、相変わらずふざけた奴だ」
「お褒めに預かり光栄です」


 おちゃらけたように笑うマーザスを見て、黒いフードの集団を率いていた男が不審そうに眉を顰めと、マーザスが視線を魔法陣に戻す。
 そして、腰に携えているマジックバックから小箱型の魔道具を取り出すと、そのまま魔法陣に置く。


「何をしている?」
「思った以上に魔法陣に綻びがありましたので補強をしようかと」


 そう言うと、魔道具に手を翳したマーザスは再び目を閉じる。


「《サークルリペア》」


 詠唱と共に魔道具に魔力を流した瞬間、魔法陣が淡く白く光った。


「何も変わっていないが?」
「まぁ、応急処置程度ですので」
「そうなのか?」
「えぇ」


 (けどまぁ、このまま放置していても問題ないくらい補強はしておいたから大丈夫だと思うけど)

 不審そうな目を向ける黒いフードの集団を率いていた男に、魔道具を回収したマーザスが微笑みかけると、遠くから金属音が擦る音が聞えてきた。


「筆頭宮廷魔法師殿!」
「おや、隊長さん。立ち直ったんだね」


 森の奥から現れたライドに、驚いたマーザスが立ち上がると、黒いフードの集団がマーザスから離れる。


「一応、仲間なんですけどね」
「まぁ、彼らは極力人とは関わらないようにしているから大目に見て頂けると」
「そ、そうですか」


 マーザスの言葉に無理矢理納得したライドは、視界の端に真っ白になった魔法陣に目を見開く


「これは……!」
「えぇ、これが彼らの……『帝国の死神』の実力だよ」


 ライド達がこの場に来た時、魔法陣は真っ黒に染まり、魔法陣から黒い魔力が溢れ出ていた。
 だが今は、元の姿を取り戻した純白な魔法陣が役目を全うしようと今か今かと待っていた。


「今の魔法陣を見ると、ついさっきまでここから本当に魔物が現れたとは到底思えません」
「そうだね。でもまぁ、この魔法陣は元々、結界魔法を維持するための補助装置で、魔力を放出する役目しかないから本来、魔物なんて現れないんだけど」
「そ、そうでしたか」


 マーザスの言葉で黒い魔法陣が頭を過ったライドは、真っ白に戻った魔法陣を見て言葉を失っていると、森の奥からライドの部下の騎士が現れ、真剣な表情のままライドに駆け寄る。


「隊長。魔石の回収、全て終わりました」
「お、おう、そうか」
「それと先程、他のエリアから魔法陣の1つの正常化に成功したと報告がありました」
「……そうか」


 (ということは、他のエリアも同じように第一騎士団をはねのけ、魔物討伐に時間を要したのだろうな)

 部下からの報告を聞いて、険しい顔をしたライドは魔法陣を一瞥すると部下に視線を戻して指示を出す。


「では、索敵班が戻り次第、次の場所に行くぞ。ここがこの状態なら、他のところはもっとひどいだろうから」
「ハッ!」


 すると、部下の騎士が魔法陣を見てひどく驚いた表情をした。


「隊長、これは……!」
「あぁ、これが、我々が魔物を討伐しながら彼らを守ってきた結果だ」
「綺麗ですね」


 真っ白な魔法陣に部下の騎士が見惚れていたその時、森の奥から索敵をしていた騎士が血相を欠いた表情でライドに駆け寄ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~

ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。 騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。 母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。 そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。 望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。 ※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。 ※表紙画像はAIで作成したものです

追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!

六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。 家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能! 「ここなら、自由に生きられるかもしれない」 活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。 「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

処理中です...