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第7章 余興と奇貨の建国祭
第434話 我らにお任せを
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「た、隊長!」
「どうした!」
森の奥から走ってきた騎士は、血相を欠きながらライド達の前に現れるとつい先程届いた報告を告げる。
「索敵に出ていた騎士から『魔物討伐前に捕縛した騎士達が突如索敵班に襲い掛かり、現在応戦している』と報告が!」
「なにっ!」
(あの時、確かに動けないよう捕縛をしたはず! なのに、どうして動けるようになっている!)
想定外の事態にライドが言葉を失っていると、傍で話を聞いていたマーザスがいつになく険しい顔で口を開く。
「恐らく、こういうこともあろうかと時限式の魔法で仕込んだのでしょう」
「そんなことが可能なのですか?」
「えぇ、出来ますよ」
(ただし、それが出来るのは改竄魔法のみで、対象者の脳に多大なる負担を強いることになるけど)
「本当、ふざけたことをしてくれる。心の底から彼らのことを自分の駒程度にしか思っていないようだね」
魔法を極める者として、ノルベルトの蛮行に怒りを覚えたマーザスが殺気を放つと、その場にいた全員の動きが止まる。
(これが、筆頭宮廷魔法師の殺気。凄まじいわね)
絶対零度のような冷たさを帯びるマーザスの殺気を間近で当てられ、顔を引き攣らせたカトレアが一歩だけ引き下がると、マーザスは険しい顔をしたままライドに鋭い視線を向ける。
「隊長殿」
「な、なんでしょう?」
「索敵班を襲っている騎士達の相手は、私に任せてもらってもよろしいでしょうか?」
「え?」
(筆頭宮廷魔法師殿が騎士達の相手になるだと?)
マーザスからの突然の申し出に、カトレアと同じく顔を引き攣らせていたライドが思わず顔を顰める。
それを見て、殺気を放つことを止めたマーザスがいつもの柔和な笑みを浮かべる。
「ここであなた方の体力を回復させておかなければ、ここから先が大変になる」
「そうかもしれませんが……ですが、あなた様1人では」
「1人ではありませんよ」
そう言うと、マーザスは笑みを浮かべたまま黒いフードの集団に目を向ける。
「ここには、我が帝国が恐れ崇める死神様がいらっしゃいます。私と彼らの力があれば、傀儡になろうとしている者達を抑える程度のこと、造作もございません」
「そ、そうですか」
戸惑いつつも納得したライドに、朗々と語っていたマーザスのオレンジ色の瞳には、静かに怒りの炎が灯っていた。
すると、マーザスの眼がカトレアに向けられる。
「カトレア君、あなたはこの人達と一緒に魔力と体力の回復に専念するように」
「か、かしこまりました」
師匠の悪友から大切な仕事を任されたカトレアは、背を正すと深く頷く。
それを見て、満足げに笑ったマーザスは血相を欠いて走ってきた騎士から場所を聞くと、黒ローブの集団と共に森の奥へと走り出す。
◇◇◇◇◇
「あれだね。《ウィンドトルネード》!」
走り始めてすぐ、遠くの方で剣戟を繰り広げているのを目の当たりにしたマーザスは、ニヤリと笑うと風属性の中級魔法で襲い掛かっていた騎士達を吹き飛ばし、索敵班の騎士達に駆け寄る。
「皆さま、お疲れ様です。後は、我々にお任せください」
「帝国の筆頭宮廷魔法師殿!?」
ニコニコと笑いながら『さっさとこの場から離れろ』と無言の威圧するマーザスに、冷や汗を掻いた騎士達が互いにアイコンタクトを交わすと一斉に森の奥へと駆けて行った。
それを見届けたマーザスは、そのまま黒いフードの集団を一瞥すると、よろよろと立ち上がる騎士達に目を向ける。
(やっぱりあの程度では寝てくれないね。となると、久しぶりに本気が出そうかな)
背筋が凍るような蔑む笑みを浮かべたマーザスは、杖を構えるといつの間にか前に出てきた黒いフードの集団に声をかける。
「では、帝国式の戦い方をしましょうか?」
「良いのか? ここは王国だぞ?」
そう言いながらも、マーザスに声をかけた黒いフードの集団を率いていた男は、『久しぶりに骨のある奴が出てきた』と興奮が収まらないような恍惚とした笑みを浮かべている。
「まぁ、死なない程度なら?」
「そう言うことなら」
視線を前に戻した男に、マーザスは改めて黒いフードの集団を見やる。
(どうして、彼らが『死神』なんて物騒な二つ名がついているのか? それは、彼らが単に魔法師に対して天敵だからというわけではない)
生まれた瞬間から無効化魔法しか使えないサザランス侯爵家の一族は、他の魔法が使えないこそあらゆる武芸や戦闘技術を極めていった。
その結果、彼らは『あらゆる魔法を瞬時に無効化して刹那に敵を屠る』という彼らにしか出来ない戦闘スタイルを確立した。
そうして、帝国所属の魔法師の盾としての守りつつも、容赦なく敵を倒していく姿から、いつしか彼らは『帝国の悪魔』と呼ばれるようになった。
「王国の人達は彼らを貴賓のように扱っているけど、戦場においての彼らは守られる立場ではないんだよね」
戦場で何度か帝国の悪魔と共闘していたマーザスは、身をもって彼らの本津の実力を知っていた。
だから、ライドに『傀儡に成り下がりつつある騎士達を倒してくる』と申し出た。
『容赦なく敵を屠れる彼らなら、傀儡を再び寝かせるくらい造作もないから』と。
笑みを深めたマーザスは、黒いフードの集団達に戦いの始まりを告げる。
「さて皆様、準備運動の時間です。くれぐれも魔力切れを起こさないようにしてくださいね」
「フン、膨大な魔力を持つ我らがそんなしょうもないことを起こさないくらい知っているくせに」
「フフッ、そうですね」
胡散臭そうに笑うマーザスを見て、不快そうに眉を顰めた帝国の悪魔達は、小さく溜息をつくと迫りくる騎士達に向かって各々得物を構える。
そこには、魔法文字が刻まれていた。
「では、行きますよ!」
愉しそうに嗤うマーザスの合図で、フィアンツ帝国民による血も涙もない戦いが始まった。
「どうした!」
森の奥から走ってきた騎士は、血相を欠きながらライド達の前に現れるとつい先程届いた報告を告げる。
「索敵に出ていた騎士から『魔物討伐前に捕縛した騎士達が突如索敵班に襲い掛かり、現在応戦している』と報告が!」
「なにっ!」
(あの時、確かに動けないよう捕縛をしたはず! なのに、どうして動けるようになっている!)
想定外の事態にライドが言葉を失っていると、傍で話を聞いていたマーザスがいつになく険しい顔で口を開く。
「恐らく、こういうこともあろうかと時限式の魔法で仕込んだのでしょう」
「そんなことが可能なのですか?」
「えぇ、出来ますよ」
(ただし、それが出来るのは改竄魔法のみで、対象者の脳に多大なる負担を強いることになるけど)
「本当、ふざけたことをしてくれる。心の底から彼らのことを自分の駒程度にしか思っていないようだね」
魔法を極める者として、ノルベルトの蛮行に怒りを覚えたマーザスが殺気を放つと、その場にいた全員の動きが止まる。
(これが、筆頭宮廷魔法師の殺気。凄まじいわね)
絶対零度のような冷たさを帯びるマーザスの殺気を間近で当てられ、顔を引き攣らせたカトレアが一歩だけ引き下がると、マーザスは険しい顔をしたままライドに鋭い視線を向ける。
「隊長殿」
「な、なんでしょう?」
「索敵班を襲っている騎士達の相手は、私に任せてもらってもよろしいでしょうか?」
「え?」
(筆頭宮廷魔法師殿が騎士達の相手になるだと?)
マーザスからの突然の申し出に、カトレアと同じく顔を引き攣らせていたライドが思わず顔を顰める。
それを見て、殺気を放つことを止めたマーザスがいつもの柔和な笑みを浮かべる。
「ここであなた方の体力を回復させておかなければ、ここから先が大変になる」
「そうかもしれませんが……ですが、あなた様1人では」
「1人ではありませんよ」
そう言うと、マーザスは笑みを浮かべたまま黒いフードの集団に目を向ける。
「ここには、我が帝国が恐れ崇める死神様がいらっしゃいます。私と彼らの力があれば、傀儡になろうとしている者達を抑える程度のこと、造作もございません」
「そ、そうですか」
戸惑いつつも納得したライドに、朗々と語っていたマーザスのオレンジ色の瞳には、静かに怒りの炎が灯っていた。
すると、マーザスの眼がカトレアに向けられる。
「カトレア君、あなたはこの人達と一緒に魔力と体力の回復に専念するように」
「か、かしこまりました」
師匠の悪友から大切な仕事を任されたカトレアは、背を正すと深く頷く。
それを見て、満足げに笑ったマーザスは血相を欠いて走ってきた騎士から場所を聞くと、黒ローブの集団と共に森の奥へと走り出す。
◇◇◇◇◇
「あれだね。《ウィンドトルネード》!」
走り始めてすぐ、遠くの方で剣戟を繰り広げているのを目の当たりにしたマーザスは、ニヤリと笑うと風属性の中級魔法で襲い掛かっていた騎士達を吹き飛ばし、索敵班の騎士達に駆け寄る。
「皆さま、お疲れ様です。後は、我々にお任せください」
「帝国の筆頭宮廷魔法師殿!?」
ニコニコと笑いながら『さっさとこの場から離れろ』と無言の威圧するマーザスに、冷や汗を掻いた騎士達が互いにアイコンタクトを交わすと一斉に森の奥へと駆けて行った。
それを見届けたマーザスは、そのまま黒いフードの集団を一瞥すると、よろよろと立ち上がる騎士達に目を向ける。
(やっぱりあの程度では寝てくれないね。となると、久しぶりに本気が出そうかな)
背筋が凍るような蔑む笑みを浮かべたマーザスは、杖を構えるといつの間にか前に出てきた黒いフードの集団に声をかける。
「では、帝国式の戦い方をしましょうか?」
「良いのか? ここは王国だぞ?」
そう言いながらも、マーザスに声をかけた黒いフードの集団を率いていた男は、『久しぶりに骨のある奴が出てきた』と興奮が収まらないような恍惚とした笑みを浮かべている。
「まぁ、死なない程度なら?」
「そう言うことなら」
視線を前に戻した男に、マーザスは改めて黒いフードの集団を見やる。
(どうして、彼らが『死神』なんて物騒な二つ名がついているのか? それは、彼らが単に魔法師に対して天敵だからというわけではない)
生まれた瞬間から無効化魔法しか使えないサザランス侯爵家の一族は、他の魔法が使えないこそあらゆる武芸や戦闘技術を極めていった。
その結果、彼らは『あらゆる魔法を瞬時に無効化して刹那に敵を屠る』という彼らにしか出来ない戦闘スタイルを確立した。
そうして、帝国所属の魔法師の盾としての守りつつも、容赦なく敵を倒していく姿から、いつしか彼らは『帝国の悪魔』と呼ばれるようになった。
「王国の人達は彼らを貴賓のように扱っているけど、戦場においての彼らは守られる立場ではないんだよね」
戦場で何度か帝国の悪魔と共闘していたマーザスは、身をもって彼らの本津の実力を知っていた。
だから、ライドに『傀儡に成り下がりつつある騎士達を倒してくる』と申し出た。
『容赦なく敵を屠れる彼らなら、傀儡を再び寝かせるくらい造作もないから』と。
笑みを深めたマーザスは、黒いフードの集団達に戦いの始まりを告げる。
「さて皆様、準備運動の時間です。くれぐれも魔力切れを起こさないようにしてくださいね」
「フン、膨大な魔力を持つ我らがそんなしょうもないことを起こさないくらい知っているくせに」
「フフッ、そうですね」
胡散臭そうに笑うマーザスを見て、不快そうに眉を顰めた帝国の悪魔達は、小さく溜息をつくと迫りくる騎士達に向かって各々得物を構える。
そこには、魔法文字が刻まれていた。
「では、行きますよ!」
愉しそうに嗤うマーザスの合図で、フィアンツ帝国民による血も涙もない戦いが始まった。
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