木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

閑話 2人の未来は??

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 それは、まだフリージアがメストの婚約者になる少し前の事。

 サザランス公爵家の屋敷で、シトリンから消毒済みの木剣をフリージアに渡したメストが、フリージアと仲良く鍛錬をしていた時のこと。

 2人が真剣な表情で鍛錬しているのをシトリンが少し遠くの方で見ていると、屋敷から少し疲れた顔をしたリュシアンが出てきた。


「お疲れ、シトリン。すまないな、『鍛錬しよう!』と言っておきながら、結局出来なくなってしまって」
「構わないよ。次期当主として色々と仕事を任せられているのでしょ?」
「まぁ、そんなところだ」


 メストやシトリンと同い年であるリュシアンは、学園に通う前から次期当主として勉学に励みつつ、父レクシャから当主としての仕事を教えてもらっていた。

 そのため、フリージアと鍛錬する時間が一気に減ってしまった。

 それでも、リュシアンは『王国の盾』を賜っている家の者として、一日の終わりに真っ暗な庭に出て自己鍛錬を欠かさずしている。

 父から仕事を教わり、休憩がてら庭に出たリュシアンは、シトリンの言葉に苦笑しつつ、庭で木剣を交えている妹ともう1人の友人に視線を向ける。


「今、あの二人が手合わせしているのか?」
「うん、君の妹に笑顔で挨拶したら、メストが嫉妬しちゃって」
「なるほど。それにしても、あの2人を見ていると、無性に婚約者に会いたくなる」
「僕も。今度の休みの日にマヤに会ってこようかな」


 侯爵家の次女で幼馴染であるリュシアンの婚約者と、家同士の仲が良くて成り行きで年下の幼馴染と婚約したシトリンの婚約者。


 楽しそうに打ち合いをするフリージアとメストを見て、リュシアンとシトリンは互いに愛してやまない婚約者のことを思い出して笑みを零す。

 すると、両手を頭の後ろで組んだリュシアンが徐に疑問を零す。


「あの2人、いつになったらくっつくのだろうな? そろそろ出会って3年だろ?」


 サザランス公爵家とヴィルマン侯爵家が話し合いの末、『フリージアとの婚約は、全てメストに任せる』と合意してから3年。

 木剣を交えて鍛錬に励むほどにフリージアと距離を縮めていたメストだが、未だにフリージアに婚約を申し出ていない。

 (あいつがまさかヘタレだとは思わなかった)

 婚約者と顔合わせをした瞬間、『俺と婚約して欲しい』と申し出たリュシアンは、3年経っても尚、実の妹に婚約を申し出ないメストにヤキモキしていた。

 そしてそれは、シトリンも友人として中々踏み出せないメストの態度に、リュシアンと同じようにヤキモキしていた。

 呆れたように呟くリュシアンに、小さく溜息をついたシトリンはにこやかに笑みを浮かべる。


「さぁ? でも僕は、そう遠くない未来じゃないと思うよ」
「どうしてだ?」
「だって、僕もメストももうすぐすれば騎士学校に入学するから……今みたいに頻繫に会えなくなる前に婚約するじゃないかなって。次期侯爵家当主としてのメンツにもかけて身を固めるじゃないかなって」
「それはありえそうだな」


 (なにせ、騎士学校は休日以外の外出は基本的に厳禁とされているみたいだから)

 シトリンの話に納得したリュシアンは、視線をフリージアとメストに戻す。


「まぁ、俺としてはいつまでも俺の妹として、ずっとこの屋敷にいて欲しいけどな」


 (あわよくば、いずれ生まれてくる子に家庭教師になって欲しい)


「それ、ロスペルも言っていました」
「うげっ、マジかよ」


 嫌そうな顔をするリュシアンに、楽しそうに笑ったシトリンは視線を2人に戻す。

 (頑張れ、メスト。そうじゃないと、君のお姫様はあっという間に誰かに攫われてしまうよ)

 ヘタレで中々行動に起こせないメストに心の中でエールを送るシトリン。

 だがまさか、2人の会話を断片的に聞いていたフリージアが焦って、メストに婚約を申し出たなんて思いも寄らなかっただろう。
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