木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第460話 真打登場!

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「っ!」


 (無効化魔法が破られた!? そして、この声って……!)

 無効化魔法の結界があっさり打ち破られ、男の声に驚いたフリージアが振り向いた瞬間、コロッセオに歓声が轟く。


「うぉぉぉぉぉ!!! 我が王の登場だ!」
「偉大なる我が王! 我らが光!」
「まさか、この国の至高がこのような余興の場に来られるとは!」


 大歓声に迎えられ、男が王族専用の出入り口から現れた瞬間、フリージアは顔を歪ませ、追い詰められて顔を真っ青にしていたダリアが満面の笑みを浮かべる。


「フフッ、お前程度の無効化魔法など、我が改竄魔法で支配した最強の駒達で簡単に打ち破られる!」
「パパ!」


 黄金のローブを纏った宮廷魔法師達を従え、金色の生地にこれでもかと宝石が装飾された服に身を包んで得意げな笑みを浮かべながら男の名前を、フリージアは苦々しい顔で口にする。


「……ノルベルト・インベック!」


 (私から家族や友人、婚約者……何もかもを奪ってこの国で好き勝手している男!!!!)

 脳裏に全て奪われた日のことが走馬灯のように蘇り、レイピアを強く握り締めたフリージアは、湧き上がる激情と共にノルベルトの刎ねようと動こうとした。
 ノルベルトの後ろにいるエリート宮廷魔法師達と、コロッセオを取り囲む黄金の鎧を身に纏った騎士達から離れる殺気を感じ、堪えるように静かに息を吐いた。

 (落ち着いて。私の役割はあくまでダリアとノルベルトの気を引くこと。彼の首を刎ねることじゃない)


「それに、この場に現れた彼らはこの国で一番の宮廷魔法師達と騎士達。私1人が立ち向かったところで何の意味もない」


 自分の役割を思い出し、今置かれた状況を冷静に分析したフリージアは、レイピアの柄を強く握りしめたままだらしなく笑いながらノルベルトを鋭く睨みつける。

 すると、フリージアの視線に気づいたノルベルトは、フリージアを蔑んだ視線を向けると、駒の1人である騎士が届けてくれた銀色のナイフを手にとり、そのままフリージアに見せつけた。


「フン、このような玩具でダリアとここにいる貴族共の動きを止めるとは……まぁ、にしてはよくやった方ではないか」
「っ!」


 (その侮蔑を含んだ2つ名を知っているってことは……!)

 自身の駒である騎士達にフリージアが放ったナイフを回収させたノルベルトの言葉で、確信を得たフリージアは静かに問い質す。


「やはり、知っていたのですね?」


 (私の正体を)


「当たり前だ。とはいえ、貴様を知ったのは貴様が王都でダリアが襲撃された後だったが」


 (つまり、それまでは私の存在を知らなかったと。本当、相変わらず視野の狭く、自分にとって都合の良い頭をしているわね。お陰で、今日まで生きてこれたんだけど)

 眉を吊り上げるノルベルトの戯言を、フリージアは鼻で笑った。


「笑わせないでくださいよ。私はただ、あなたの娘がバカな真似をしていたから、それを止めていただけです」
「フン、やはり平民貴族には、本物の貴族の考えは持ち合わせていないか」
「あなたのような考えが、本物の貴族の考え方なら、この国の貴族はたかが知れていますね」
「黙れ!!」


 フリージアの挑発にあっさり乗ったノルベルトは、深く息を吐くと、騎士の手にナイフを戻し、そのまま騎士に黒い魔力をかける。
 すると、黒い魔力を受け取った騎士は、銀色のナイフを真っ2つにした。


「っ!」


 (あのナイフ、私が持っているレイピアと同じミスリル製だからそれなりに固いはずなのに、いとも簡単に折るなんて。さすが王族警護につくエリート騎士様……ってわけでもなさそうね)


「あ~あ、こんなに血を流しおって……それも我の目の前で」


 フリージアの持っていたナイフを折った騎士から手から大量の血が噴き出す。

 だが、改竄魔法で傀儡されている騎士は悲鳴すら上げない。

 明らかに痛いはずなのに。

 そんな騎士を酷く呆れたよう目で見たノルベルトは、すぐ後ろにいるエリート宮廷魔法師の1人に黒い魔力をかける。
 すると、黒い魔力をかけられた宮廷魔法師が騎士の方の前に立ち、すぐさま治癒魔法をかけて出血を止めた。
 ついでに、ナイフを折った際に壊れた鎧も時魔法が付与された魔道具で元に戻した。


「うんうん、偉大なる我の駒とは言え、やはり身綺麗でいては困る!」
「……本当に駒程度にしか思っていないのね」


 満足そうに笑うノルベルトを見て、フリージアは血が流れているにもかかわらず何も言わない騎士と、その騎士を無言で治癒魔法をかけた宮廷魔法師に不快感を覚えた。

 (それにしても、あれが改竄魔法。本当に厄介な魔法ね)

 改竄魔法で全てを奪われたフリージアがそんなことを思っていると、ノルベルトの興味がフリージアに向けられた


「さてさて、そこの平民貴族」


 ナイフを折った騎士と治癒魔法をかけた宮廷魔法師を下がらせたノルベルトは、蔑みの笑みを浮かべながらフリージアに問う。


「なぜ生きている?」
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