結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

文字の大きさ
9 / 187

行方不明の婚約者

しおりを挟む
「婚約者をいつまでこんな別邸こんなところに閉じ込めておくつもりなんだろうな…」

邸まで荷物を届けに行く騎士2人のうち1人が言った。

「ああ、さすがに酷いな。」
「まぁ、お偉方の考えなんて、庶民出の俺達にはわからない。ていうか、わかりたくない。」

裏口まで行き何度か呼び鈴を鳴らす。

いつもならすぐに出てくるはずの女中が出てこない。

「…なんか様子がおかしくないか?」
「ああ。」

1人が窓を覗いて驚いた。

「…何も置いてないぞ」
「置いていない?」
「見える範囲でだが、邸の中に何もない…っていうか、カーテンがかかってないのもおかしいだろ…」

ドンドンドンドンッ
「おいっ!開けろ!!」

ドンドンとドアを激しく叩くが誰も出てこない。

「おい、窓から入るぞ!」

ガシャーーン
勢いよく窓をわり、2人は邸の中に入った。人気がない。

「…っおい!ニーナ様を探せっっ!!」
「よし、俺はこっちを探してくる!」

 二手にわかれて、騎士は邸中探し回った。
「ニーナ様っ!」と何度も大きな声で名前を呼びながら。

「いたか…」
「いや…だがどの部屋を見ても何もない。物取りにでも入られたようだった。」
「こっちも同じだ……」

「これは…誘拐されたんじゃないか?王子の婚約者だし。」
「いや、婚約者がここにいるなんて知ってるのって、俺達以外に殆んどいないんだぞ…。もし、婚約者だとわかってて連れさったんだったら、既に王子に伝わってるだろ。脅迫めいた事をしたり…」

「…こんなデカい邸に警備兵も女中も侍女も1人、ニーナ様をあわせて4人だ…。連れ去られて…全員殺されてる可能性もあるぞ」

「馬鹿言うなっ!」
「…けど、この状態。何か事件に巻き込まれているのは確かだぞ。」
「これ、本当に殺されてたりしたら…うちの国ってヤバいんじゃないのか?」
「いや…他国の娘でも、そこまで」
「あの子…陛下が直々に婚約をとりつけに行った娘だって聞いたぞ…」

「わざわざ足を運ばなければ、婚約者として迎えるのが難しい娘だったのか…?」

2人は青ざめた。

「とりあえず、クリフ様に報告だっ!!」
「ふざけんなよ!本当にそうなら、ご免なさいじゃすまねぇぞ!この国は!!」


ニーナの思惑通り、『何かの事件に巻き込まれている』と勘違いした2人だった。


けれど、予想よりもかなり早く気がつかれた。





「…っ何だって!?ニーナ様がいないっ!?」

そう言ったのは、王子の側近のクリフだ。

「ハイッ!邸も荒らされて荷物も何1つ残っていませんでした…」

「……っレオンを呼べ…今すぐにだ!」

「畏まりましたっ!」

「これは…王に知られたら大変な事になるぞ…。」

エドワードは1度もニーナ様に会いに行っていない。
それどころか、所有する邸の中でも1番王都から遠く、何もない所へ住まわせている。

何より問題なのは、ニーナ様は『陛下が直々に他国へ足を運んでまで王子との婚約を申し込んだ女性』…という事だ。


ニーナ様の顔を知っているのは、ほんの一握り。陛下の1番近くにいる人達。俺など簡単に話しかける事の出来る相手ではない。

1度も会いにいかなかったなどと知られてしまえば…王太子と言えど大問題だぞ。いや、逆にそうだからこそ大問題だ。
陛下が病にふせっている事を理由にして、正式な顔合わせは後日…となってはいるが、それまで放置しておいていい…という事にはならない。

俺は馬鹿だ。

無理にでも引っ張っていけば、こんな事にはならなかったし、住む場所ももっときちんと用意していたなら、ほんの少しだけでも言い訳は出来たはずだ。結果云々。
今さら後悔しても仕方がない。

……水面下で事を進めなければ。下手をすれば国をゆるがすような問題にもなりかねない!

だいたいあのクソ王子が『俺には好きな人がいるから、その人と以外結婚するつもりはない!』っとかほざきやがるからこんな事にっっ!!

…エドワードが好きだと言っている女は、性格も態度も悪い。それで徐々に国の印象も悪くなり始めている。

「……」

ニーナ様を探すにしても、誰も顔をしらない。万が一『私は婚約者です』っと名乗りでられても、本物かどうかもわからない。

何か手がかりを…
それすらない……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい

神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。  嘘でしょう。  その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。  そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。 「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」  もう誰かが護ってくれるなんて思わない。  ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。  だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。 「ぜひ辺境へ来て欲しい」  ※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m  総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ  ありがとうございます<(_ _)>

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」  信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。  私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。 「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」 「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」 「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」  妹と両親が、好き勝手に私を責める。  昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。  まるで、妹の召使のような半生だった。  ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。  彼を愛して、支え続けてきたのに…… 「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」  夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。  もう、いいです。 「それなら、私が出て行きます」  …… 「「「……え?」」」  予想をしていなかったのか、皆が固まっている。  でも、もう私の考えは変わらない。  撤回はしない、決意は固めた。  私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。  だから皆さん、もう関わらないでくださいね。    ◇◇◇◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...