結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

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ボナースのニーナ

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 馬車は伯爵邸に向かってるけど、私はそこへ着くまでにボナースへいかないと駄目なのよね。

でも護衛がついてるし。
護衛というか、ただの見張りだよね。私が逃げ出さないように。まさに今、それを考えているわけだしね。

『吐きそうだ』とか言ったら馬車からおろすんじゃないかしら。汚しちゃまずいって思うはずだもの。こんな綺麗な馬車。

知ってる道に出て来た。やるなら今しかないわ。
「…っうう」
演技スタートよ。
「どうした?」
「…気分…が…吐きそう…ぅぷ」
「ちょっ…ちょっと待てっ!!ここは駄目だっ!おい!馬車を止めろ」
「ぅ…もぅ」

「出ろ!外で吐け!」

…こんなにも上手くいくなんて。

フラフラと演技をして外に出る。普通なら側にいるべき護衛は私から距離をとっている。予想通りではあるけど、人としてどうなの?


私はその隙をついて、馬車で追う事の出来ない細道へ逃げ込んだ。

「おいっ!待てっ!!」

待ちません!

辻馬車がひろえる場所への近道。地元の人しか通らない入り組んだ道よ。職探しで街を歩き回ってた私に勝てるわけないわ。

近くにいた馬車にのって行き先をつげる。
「おじさん!!ミエルへお願いっ!」
「なんだお嬢ちゃん、急ぎかい?」
「ええ、とっても!」
「了解。」

うん、追い付かれていないわ。場所すらわからないはずよ。

ボナースとここで言ってしまえば、何かあった時に見つかりやすい。私は1つ手前の町を指定した。

「ありがとう、これ代金ね。お釣りはいいわ。」
「あんがとよ。じゃ、気を付けてな。」
「ええ、おじさんも気をつけて。」

ここからボナースまで5分くらいだわ。
気合いを入れるのはここからよ!

もう外は暗い。ここで失敗したら終わりよ。

「すみませーん!院長をお願いします!!」

「………」

やっぱり返事はないよね。ミラノさんはもう帰ったのかしら。彼女がいれば支援金の話という事で入れてもらえたんだけど。

お願い誰か出て来て!!
いくらなんでも野宿は無理よ…。

放置、孤独、裏切り、誘拐犯扱い、牢……
既にここまで経験済みよ。

追われて、野宿して、捕まって、監禁(多分)、結婚…そのうち跡継ぎ…。

次待ってるとしたらこれだよね。

私の楽しい未来の全てを奪われるじゃない!いくらなんでも悲しすぎるよね!

ドンドンドンっ
「どなたかいらっしゃいませんかー!」
「うちに何かご用ですか?」
「…っっうわ!?」
「あの、どうしました?」

そろりと振り返ると30代後半くらいの男性がいる。

「…すみません、驚いてしまって。」

開けてもらう事にばかり気をとられて、全く気がつかなかったわ。
この時間に院に来るという事は…

「貴方はボナースの院長?」
「ええ。そうですが…」

やったわ!
今1番会いたかった人に会えた!
「お願いしますっ!数日間、私をここに泊めて頂けませんか?宿泊代ならしっかり払います。」

「…え…と。とりあえず、中へどうぞ。」
「ありがとうございます!!」

とりあえず、ボナースに入れてもらえたわ。

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